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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

安心して座れる椅子と不安いっぱいで座る椅子

 暮らしの中で必ず「座る」という行動があると思いますが、今日は椅子についてお話しましょう。
 私にとって安心して座れる椅子は、床屋さんの椅子です。この1~2週間、厳しい寒気に日本列島はすっぽりとくるまれていました。寒さで風邪でもひいたら困ると思って、私の好きな床屋さんにもご無沙汰していました。しかし3週間も超えると、やや長くなりすぎた頭髪が気になって、早朝7時半から始業している行きつけの床屋さんに行きました。

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 ここのマスターとは気が合って、4年前に開店して以来、お得意さんの一人となっています。週末の利用客が多いため、開店して間もなくパートを雇っていた時もありましたが、「やっぱりマスターにやってもらいたい」というお客の声もあって、今は忙しくても一人でやっています。「やっぱり仕事は心だよネ」といった彼の言葉が気に入りました。
 40代半ばの彼は、私の仕事も知っていて、いわゆる気心の知れた仲になりました。他店とちがって、サービス料金であることも利用し易さにつながっています。ハサミとかみそりを持ち、白衣を着たマスターに身をゆだねて、ゆったりとできます。私のリラックスできるひとときです。
 一方、私にとって不安でいっぱいになって、ガマンして座っていなければならない椅子、それは歯科医さんの椅子です。治療のために、半年に1回はお世話になります。あのガリガリと削られたり、細い針金でキリキリと歯の神経を抜去する治療をうけなくてはなりません。
 歯科医さんは診断のためにレントゲン撮影をして親切な説明をしてくださいます。私の気分が少しでも和むように、「痛い時は言ってくださいネ」と治療用具を手に接してくださいます。しかし、痛みは同じ。不安は極限ということであります。椅子に座って窓から見える青空をみても、「どうして空よ、そんなに青いんだ!」とつぶやきたくなるような不安感です。でも、歯医者さんのやさしい気遣いで、なんとか椅子に座っていられるのです。
 このように、椅子に座るという同じ行為でも、安心、不安の差があります。私たちが暮らしていくうえで、基本的に大切な条件はまず、安全であること、安心感がもてることです。認知症の方にとっても、生活の場に安心感を得られるように私たちは努めたいと思います。正しく状況をつかむことのできない認知症の状態はなってみないと分らないのかもしれませんが、やさしく接してくださる歯科医さんのように和やかな気分で、リラックスさせてくれる床屋さんのように身がゆだねられるよう、その人の気持ちになって支えていきたいと思います。


コメント


長谷川先生…人にも因るかと思いますが女性にとってパーマ屋さんの椅子は、自分のイメージに合ったデザイン・長さになるかどうか鏡に映る自分と睨めっこする場合もありますので落ち着く椅子ではありません。
私は髪型を縛る程度で変える事もないのですが、特に決まったお気に入りのヘアスタイリストがいないからなのかもしれません。理由は、情報誌を見てサービス料金の所を転転とするからです。

幼い頃の歯科治療や盲腸の手術でエピソードがあります。盲腸事件は機会があればお話しします。

私も(私の方が歯医者さん恐怖症かもしれません)歯医者さんが苦手で椅子に座ると死角になるので怖くて不安で心臓がバクバクします。
視覚障害者・認知症の方のお気持ちが良く分ります。何故、歯医者さんが今でも怖いのかと申しますと…。
幼稚園の頃に嫌がり逃げ回る私の手を引いて、母が仕事(自営)を抜け出して歯科クリニックへ放り込み「歯科医に宜しくお願いします」と告げて仕事へ戻り置き去りにされたのですが、それでも受付の人の目を盗んで抜け出して、こっそり逃げ友達の家に遊びに行った事も何度かあります。
スネて不安を隠せずに待合室に置いてある観葉植物の葉っぱをむしり丸坊主にした事もありました。いつも兄とくっついて遊んでいたので遊びも男の子の遊びをし勝気な性格でした。
歯科の椅子に座り下から、大きなマスクで顔が隠れ銀縁の眼鏡がライトで照らされた先生の顔を見るだけで恐怖や不安で一杯になっておりました。
先生は「大丈夫、痛い事なんてしないよ」と、言ったのですが麻酔の痛さに大泣きし、あやされながら(実際は押さえつけられた記憶があります)歯の抜歯が終了しました。先生が私を抱っこしあやそうとしたのですが、私は「もぉ~その手にはのらない!」と思ったのでしょう…先生の顔をピシャリと叩いてしまい、家に戻ってから母に叱られた記憶が鮮明に残っております。今は代が代わりましたが当時の歯科医は、とても気の長い寛大な方だと思います。今でも母に笑い話として話題に出されます。そんな事があって大人になった今でもトラウマとなり、叩く事はありませんが椅子に座ると目をつぶり両手を組んで力んでしまいます。

心落ち着く椅子は傍にいて安心出来る、和む人のいる空間にある椅子でしょうか…。
信頼出来る大切な人がいる空間にある椅子であったり、時には認知症の方とリラックスしながらコミニュケーションを図っている部屋の椅子であったり、自室の年記の入った椅子、教会の椅子、ボ~っとしたい時に腰を降ろす公園のベンチだったり様々です。

認知症の方々の生活の場に安心感を得られるように、時には自分の幼い頃からの経験も振り返り投影したり、相手の気持ちを配慮する寛容さは、とても大切な事ですね。
子供の頃にお世話になった歯科医のように…。





投稿者: 玉本あゆみ | 2010年02月10日 04:55

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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