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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

出遭い体験にめぐりあう条件とは?

 前回に引き続き、私の出遭い体験を振り返ってみました。ブログへコメントを寄せてくださった方もいましたが、出遭い体験にめぐりあう条件とはどういうものなのでしょうか。

 「気づき」というか、「発想」には、1つの特異な状況があるように思います。エッセイストの外山滋比古氏は『思考の整理学』という著書の中で、中国の欧陽修の「三上」を引用しています。
 「三上」とは(1)馬上、(2)枕上、(3)厠上です。つまり、馬に乗っている時(現代でいえば、車の中とか電車に乗っている時)、枕に頭をのせて臥床している時(特に朝方目をさまして床のなかにいる時)、トイレの中で座っている時のことです。欧陽修は、この様な状況下で良い発想があるとしています。

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 要するに、何らかのためになかば自由が拘束されていて、しかし心は自由に何かを考えることが許されている状況です。一定の安心感が頭を自由にさせてくれるのでしょうか。そして思ってもみなかった事が頭にうかんでくる。ただひたすらに机にむかってペンを握り、是が非でもと力んでいては、かえって良い発想は起こってこない。むしろぼんやりとせざるを得ない状況の時に、ふと何かが目についたり、思いもかけない出来事に遭うなど、キラリと出遭い体験が生まれるのでしょうか。
 もう1つ、私たちに感性というか、感激性をもっていることも出遭い体験を生みだす要因かもしれません。幼児がもっているような、あの瑞々しい感受性、これを失っていると貴重な体験もサーッと素通りしていってしまう、そんな気がします。認知症の人の中には、認知機能が衰えた分だけ感性が高くなっている場合もあるように思います。介護者がイライラしているとすぐにそれが伝わってしまうとは、よく言われることです。
 感性を衰退させないためには、心の中に火種をもちつづけることです。芸術家や宗教家にみられるように、自分の中に火をともしつづける。愛のともしびというか、想いやりの火種をもっていることができれば、年をとっても豊かな出遭い体験にめぐまれて、生き生きとした暮らしをつづけることができるでしょう。


コメント


そういえば私も、電車に乗っているとき、眠りに着く前のウトウトしているとき、それからトイレでなんとなくリラックスしているときに、パッと懸案事項の解決案が閃くことがあります。
私だけだと思っていましたが、ずーーっと昔から言われていることなんですね。納得しました。
長谷川先生のブログは目から鱗が落ちます。いつも楽しみにしています。
年の瀬でお忙しいとは思いますが、お体に気をつくてください。


投稿者: コロンコロン | 2007年12月13日 21:32

Yahooの人物名鑑で欧陽修さんを調べました。
人物画を拝見しましたが、誰かに似ている…誰だろう?と暫く考えておりました。忘れた頃に思い出すもので、この件の場合は昨日の夕食時に解決しました。第74代内閣総理・竹下登さんです!
似ていませんか?
私の思考の整理ができる場、インスピレーションが働く場、答えが出る場は…一杯ありました。
歩いている時や自然の中に腰を下している時、遠出をして環境の違う場に身を移した時、電車やバスの中であったり、湯船に入っている時、机上や自転車に乗っている時、考えようと心静かに瞑想している時などです。自転車に乗っている時でも自転車を止めて、必ず、私はメモに残しておきます。その小さな山積みされた独自の発想が功を成す事があります。大事な習慣だと思います。
欧陽修さんは、他にも「日本刀歌」や「三多」を残しておられました。三多は「看多(多くの本を読むこと)」「做多(多くの分を作ること)」「商量多(多く工夫し、推敲すること)」とありました。色々なジャンルの書物や、自分とは正反対の発想をする方も含めて人の言葉に触れる事も、私自身の感性を刺激してくれ、自分自身の新しい発想を生み出します。感性を汚す雑音は排除する様にも努めております。
これからも、幼児がもっている瑞々しい感受性を御手本にしながら、私の中に燃え尽きる事のない愛のともしびや、想いやりの火種をもち続けていきたいと思います。それには、自己中心的な私利私欲に流されず(排除)視野を広げて、善悪を見極め、素直に観る目と聞く耳、素直な心で感じ、言葉にする事だと実感しております。創作やイマジネーションの世界や自分自身とも素直に向き合う時間や発想を生み出す「環境」も大事にし守っていきたいと思います。認知症の方は、確かに感受性が鋭敏です。そして、相互作用というか、連鎖反応というか、影響を受け合っているのでしょうか…認知症の方も、自分なりに何かを伝えようと独自の表現方法で発信してこられます。何故、気が合うのかも分りました。愛しいです。


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年01月29日 08:55

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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