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長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

認知症でもだいじょうぶな町づくり・3

 認知症についての関心は年毎に高まって、新しい流れがおこっています。8月22日と9月5日のブログで紹介した「『認知症になってもだいじょうぶ』町づくりキャンペーン」は、その大きな流れの1つです。認知症の人と家族を支えるネットワークが身近に作られつつあるのです。どうか、こうした流れのあることを知って、介護の日々をあきらめないで、明るい気持ちをもってお過ごし下さい。
 さて、私たちの生活に不可欠のものにエネルギー(電気やガス)と水があります。こうしたライフラインとよばれる設備は、個人の力で手に入れることは不可能です。そこで、私たちは公共的なインフラ整備機構に依存します。これと同じように、認知症や障害をもつ方が地域で安全に暮らしてゆくためには、個人の力だけではなく医療やケアのネットワークが地域でインフラ機構として作られること、そしてそれを活性化させる人と人の絆がどうしても必要になります。

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 先日のことです。私が勤める認知症介護研究・研修東京センターの職員が、駅で高齢の女性をお見かけしました。お中元の時期でしたが、お菓子の入った紙袋を持って階段を降りたり上がったりしています。何となく様子がおかしい感じだったので思い切って「どうなさったんですか?」と声をかけました。すると、「実はね、出かけるつもりで家を出たんですけれど、どこへ行くのかわからなくなってしまったんです」と答えがかえってきました。よく伺うと、ある駅から乗ってこの駅で降り、わからなくなって元の駅にもどり、また再び今の駅へということを何回も繰り返していたというのです。幸いにして所持品から連絡先がわかり、つきそってご自宅近くの駅まで行き、駅員に連絡してもらって無事に帰られたということでした。
 高齢社会というのは、高齢者がこのような状況におちいった時に安全を守るネットワークが地域につくられていることが大切です。これは個人が対応していくと共に、社会の中にも安全を守るネットワークというか、インフラ構造が作られていることが必要です。
 厚生労働省は今年度から「認知症地域支援体制構築等推進事業」を立ち上げ、まず各都道府県内にモデル地域を設定し、支援のネットワークを作り、地域住民の方にもお知らせして成果をあげることに努めています。
 具体的には、各都道府県のモデル地域を選定し、認知症への対応を行うマンパワーや拠点などの「資源」をネットワーク化し、相互に連携することができる体制をつくろうとしています。たとえば、地域包括支援センターと連携して地域資源マップの作成したり、認知症の専門的な相談に対して助言をすることができる体制、徘徊高齢者のSOSネットワーク等、専門知識のあるコーディネーターが中心となり構築していくことを目指します。そして、そのモデル地域の取り組みを分析・評価し、情報を提供していきます。
 次回は、こうした町づくりの潮流を具体的に紹介します。

■「認知症でもだいじょうぶ」町づくりキャンペーン2007事務局
〒168-0071 東京都杉並区高井戸西1-12-1 認知症介護研究・研修東京センター
電話:03-3334-3073(FAX兼用) 電話受付時間:月~金(祝除く)10:00~16:00
E-mail machican@dcnet.gr.jp  URL http://www.dcnet.gr.jp/campaign/



コメント


2009年「認知症でもだいじょうぶ」町づくりキャンペーンの報告の中で、一際印象的だった活動がありました。(URL http://www.dcnet.gr.jp/campaign/引用)

★認知症を受け入れるということ~若年性認知症 をかかえる夫妻と支援者との出会い~」
  佐野 光孝・明美/富士宮市サポートチーム(静岡県富士宮市)
  応募代表者:村瀬 裕美子(富士宮市保健福 祉部福祉総合相談課 主事)
<活動の概要>
  若年性アルツハイマー型認知症の夫とその妻が、地域包括支援センターへ相談に訪れたことをきっかけに、行政の支援をうけながら自分達が経験したことを伝える活動を行っている。夫は平成20年より、元営業マンとしての接客術を活かして市内の観光案内所で観光ボランティアを開始。家族の会へも参加し、自分と同じ立場の人に少しでも自分の言葉が参考になればとの思いでテレビ局や新聞社の取材を受け、地域の事業者向け講演会でも講演。サポートチームはこうした活動を支え、また講演会の様子を収めたDVDを作成し、「認知症本人と家族の思い」を伝えるべく全国へ配布。夫妻は全国各地で講演活動を行い、「普通に接してほしい」という当事者としての思いを伝えている。

以上の御活躍を拝見し、国際アルツハイマー病教会・国際認知症啓発ネットワークの支援を受け、自らの思いを語る事で、認知症を理解してもらおうと御活躍されておられるクリスティーン・ブライデンさんの事を思い出しました。彼女の勇気も、多数の人々に大きな感動やエネルギーを与えて下さると感じました。私は、彼女の書き記した言葉も宝物となっており、その中の一つ「嫌だと思っても断ろうとしても考えている内に言葉が辿り着く前に頭の中で消えてしまう…」と心からの叫びが印象的です。
介護者の心身の疲労も理解できますが、私達健常者は贅沢です。御本人達の、たどたどしくても良いから、今の内に伝えようとされる純粋さ・勇気ある心からの叫びがあるからこそ、認知症である前に「一人の同じ人」であると認識し、心に寄り添う事が出来るのだと思います。 御本人達の勇気ある言動は涙を誘う位、何の濁りもない綺麗なソウルフル・メッセージで言葉を失うほど頭が下がる思いです。
御本人方の勇気に対して、勇気を誘導されています。伝達能力が失われていく彼らの代わりに、私なりに全身で受け取り、彼らが失われた機能の代わりになって差し上げたいと切望する一人でございます。決して、逆風にあおられても大波に飲まれそうになっても「くじけない」「諦めない」原動力となりました。私には必要として下さる温かい支えもありますし、神様が見守って下さいますから。強くなれました。その内の大きな影響力を頂いたのが、長谷川先生です。有難うございます!


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年01月18日 08:05

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

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プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
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