ページの先頭です。

ホーム >> 家庭介護サポーターズ >> 長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ
長谷川和夫先生に聞こう! 認知症のエトセトラ

夕焼けのはなしをしよう

 先週の続きで、「マーガレット歌の会」のコンサートの話をします。前回のブログとあわせてお読みください。
 井川愛子さんは中学3年のときに、合唱曲作曲の課題のため、詩人・名木田恵子さんの詩に曲をつけました。その合唱曲は優秀作に選ばれ、井川さんの指揮で同級生が合唱しました。そのときから、まりの大好きな曲になったのです。
 井川さんはたいへん才能あふれる方で、その後、音大に進みました。しかし、大学1年の春、交通事故で亡くなったのです。
 それから数十年が経った2年前、まりは井川さんの両親を訪ねて、井川さんが亡くなったことの無念さを伝え、前向きに生きることを願う曲を多くの人に知ってもらいたい。この曲を私のコンサートで演奏させてくれないかと願い出ました。そして、会で歌うことの快諾を得たのです。
 この曲は、高音域でメロディーもむずかしいところがありましたが、会員たちは練習を重ねました。その歌詞を次に記します。

続きを読む

~夕焼けのはなしをしよう~
    井川愛子  曲
    名木田恵子 詩
 悲しいはなしを
 するのは やめよう
 それよりは
 海のはなしをしよう
 佐渡の関崎から ながめた
 海の色が
 どんなに青かったか を

 すすきの原を走った
 浜辺で貝がらを 拾った
 美しいいちにちが
 私の中に たくさん生きている

 つらかったことを
 思い出すのは やめよう
 やさしかったひとのことだけ
 くり返し 思おう
 やさしいひとは
 かぎりなくいた―
 そう
 悲しいはなしを
 ひとにするのは やめよう
 それよりは
 夕焼けのはなしをしよう
 語りたくて 語れなかった
 ことばを包みこんで
 静かに赤く もえていた
 夕焼けのはなしを―

 曲が歌われたとき、大きな感動の渦が会場に広がりました。万雷の拍手が続きました。30年前に中学生が作曲したとは思えないほど新鮮で心をうつものがありました。詩にも曲にも心をひきつける魅力がありました。
 終わりに井川さんのお母様と作詞された名木田さんのごあいさつがありました。

 悲しいはなしを ひとにするのはやめよう
 それよりは 夕焼けのはなしをしよう

 何という力強い言葉でしょう。そしてやさしさが溢れています。私はこみあげてくる感慨に涙しました。連休の一日のこのイベントにより、忘れられない思い出と癒しをいただきました。


コメント


こんにちは!初めてコメントをさせていただきます。長谷川先生のブログを、毎週拝読しています。あの長谷川先生ということもあり、専門的なお話が多いのかな?と思っていたら、今回のようなブログもあり、びっくりしました。先生のお人柄が伝わる優しい文章で、じかにお話しいただいてるような気がします。ぜひ「夕焼けのはなしをしよう」という曲を聴いてみたくなりました。
これからも、更新を楽しみにしております。


投稿者: オクトーバー | 2007年06月21日 13:49

歌は心と心を繋ぐ、不思議な温かい魔法の様ですね。
今のストレス社会には、心が荒れ果て誰かをターゲットにしては「苛め」の様なストレス解消をする可哀想な人もいます。なんて、情けない人達が存在するのかと溜息をつきます。
悲しい話も暗い話も口から出すと、自分や周囲まで暗くなりそうで飲み込んでしまう事もありますが、人の性格は十人十色なので、人によっては吐き出してもらい一緒に考え前を歩きだせる様にして差し上げたいというのが私の考えです。
最近、野次馬の餌食になった可哀想な外国人の方のブログを拝見しました。彼らに捧げたい歌「WE ARE THE WORLD]を贈りました。心は伝わった様で嬉しかったです。


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年01月02日 08:39

『夕焼けのはなしをしよう』をインターネットで調べると、‘07年5月11日に「ちょっと素敵なコンサートの話」と題して書いておられた国立市議会議員・あべ美和子さんのブログに辿り着きました。多摩地区に配布された4月26日付けのアサヒタウンで、名木田恵子さんが作詞した詩に故・井川愛子さんが曲をつけた女性三部合唱曲を南高まりさん主催の「マーガレット教会」で披露するという記事を見つけた事が書かれておられました。そして、ブログに愛子さんとまりさんが、あべさんの教え子で、記事を読んだ直後に、まりさんと連絡をした内容や愛子さんの当時の事にも触れておられました。
まりさん…? おや?
長谷川先生が呼び捨てにしておられた事が気になり、それも知りたくてサイトに入ったのですが、まりさんは先生のお譲様だったんですね!?
あべさんのブログで知りました。とてもお優しそうな方だと思います。
私は子供の頃から習っていたピアノの発表会が年に1度夏にあったのですが、その度に母が発表会用の華やかな洋服をプレゼントしてくれた事を思い出します。母がピアノを積極的に習わせようと勧めてくれましたので、母は発表会の時は必ず仕事を休んで付いてきてくれました。父にも来てもらいたかったのですが、日曜日は休日ではなかったので寂しい思いをしたものです。ですので、先生とお譲様との素敵な親子関係にも羨ましくなりました。
名木田さんは早い時期に両親を亡くされたと知りました。この詩は、とても心がこもった素敵な詩ですね。私も悲しい話をすると、忘れてしまいたい悲しい出来事を思い出してしまうので避けたいです。でも沖縄のマリンブルーの海や、果てしなく続くスカイブルーの大空を見上げても、悲しい出来事は記憶からは完全に消え去る事はありませんので、贅沢で罰があたりそうですが、インプットされた部分だけ脳に障害があったらいいなぁ~と思う事もあります。認知症の方達に激怒されてしまいますね。世の中には、もっと不幸な人もいらっしゃいますので強くならなければいけません。

名木田さん自作の詩の中で、他にも素敵だと思ったものがあります。
『ノスタルジア』『足あと』です。
ご存知でしょうか?機会があれば御覧になってみて下さい。


投稿者: 玉本あゆみ | 2010年02月14日 21:59

※コメントはブログ管理者の承認制です。他の文献や発言などから引用する場合は、引用元を必ず明記してください。

コメントを投稿する




ページトップへ
プロフィール
長谷川和夫
(はせがわ かずお)
認知症介護研究・研修東京センター名誉センター長、聖マリアンナ医科大学名誉教授。専門は老年精神医学・認知症。1974年に「桜、猫、電車……」の長谷川式認知症スケール(HDS-R)を開発者して以来、常に認知症医療界の第一人者として時代を牽引してきた。最近では、「痴呆」から「認知症」への名称変更の立役者でもある。『認知症の知りたいことガイドブック』(中央法規出版)、『認知症を正しく理解するために』(マイライフ社)、『認知症診療のこれまでとこれから』(永井書店)など著書多数。
hasegawa-book.jpg
メニュー
バックナンバー
その他のブログ

文字の拡大
災害情報
おすすめコンテンツ
福祉資格受験サポーターズ 3福祉士・ケアマネジャー 受験対策講座・今日の一問一答 実施中
福祉専門職サポーターズ 和田行男の「婆さんとともに」
家庭介護サポーターズ 野田明宏の「俺流オトコの介護」
アクティブシニアサポーターズ 立川談慶の「談論慶発」
アクティブシニアサポーターズ 金哲彦の「50代からのジョギング入門」
誰でもできるらくらく相続シミュレーション
e-books