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どうなる? 介護保険

在宅介護者の“義務的活動時間”

生活援助は“単なる身の回りの世話”?」(10月24日更新)で紹介しましたが、現在、介護者(15歳以上で日常的に介護している人)は約683万人になり、そのうち「介護支援を利用している人」は約201万人(29%)になるそうです(総務省統計局「2011年社会生活基本調査」(2012.09.26)「生活時間に関する結果の概要」より)
同調査では家事関連時間(家事、介護・看護、育児、買い物に使う時間)は平均2時間10分で、男性42分、女性3時間35分になり、女性は男性に比べて5倍の時間を費やしていることが報告されています。
家事関連時間のうち、介護をしていない人の家事と介護・看護の合計時間は平均1時間29分(男性18分、女性2時間36分)、介護をしている人は平均3時間4分(男性1時間3分、女性4時間22分)になり、介護をしている人が家事と介護・看護に使う時間が2倍以上になることが示されています。

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生活時間の配分
 社会生活基本調査(以下、基本調査)は、国民の生活時間の配分や自由時間の主な活動を調べるため、5年ごとに実施され、8回目となる2011年調査は全国約8万3000世帯、10歳以上の約20万人が対象という大規模なものです。
 今回の公表は、国民が1日24時間をどう配分して生活しているかという「生活時間」の結果で、くわしい報告は12月に予定されています。
「生活時間」は、睡眠や食事など生理的に必要な活動(1次活動)、仕事や家事など社会生活を営むうえで義務的な性格の強い活動(2次活動)、その以外の自由に使える時間の活動(3次活動)にわけられています。
総平均時間でみると、私たちの1日(24時間)は、1次活動に10時間40分(44.4%)、2次活動に6時間53分(28.7%)、3次活動に6時間27分(26.9%)という配分になっています(表1参照)。

「家事関連時間」は男女、配偶者の有無で大きな差
 表1の「生活時間」はあくまでも総平均ですが、家事関連時間は配偶者の有無で大きな時間の開きが際立ちます。
配偶者のいない男性は27分、女性は1時間6分、配偶者のいる男性は47分、女性は5時間2分になり、有配偶女性は未婚男性の11倍以上の時間を費やしていることになります。
65歳以上の高齢者では、家事関連時間は男性が1時間8分、女性が3時間37分で、総数の男女差5倍に比べると約3倍で、男女差が短縮されています。
なお、基本調査は高齢者の生活時間について、過去25年間の推移のなかで「睡眠時間は、男女共に減少が続き」、身の回りの用事と家事関連時間は「男女共に増加が続いている」と報告しています。

在宅介護者は“義務的活動”に費やす時間が長い
基本調査では、「ふだん家族を介護している人」(以下、介護者)は約683万人で、15歳以上人口の6.3%を占め、男性約268万人、女性約415万人で、男性介護者が約4割になります。介護している人は男女ともに50歳以上に集中し、男性約200万人、女性約301万人になります(表2参照)。
家事関連時間のなかで、家事と介護・看護の合計時間を表3にまとめましたが、介護をしている人はしていない人に比べ、介護者は1時間35分長く、男性42分、女性1時間46分と増えています。
 介護・看護時間の7割を担っている女性でみると、介護者はそうでない人に比べて、睡眠など生理的活動(1次活動)と休息や趣味など自由活動(3次活動)を減らし、義務的活動(2次活動)を増やしている傾向がみてとれます。

「介護」と“義務的活動”時間の関係は?
2013年度予算のなかで、財務省は“軽度者介護”(要支援1~要介護2)について、特にホームヘルプ・サービスの「生活援助」が“単なる身の回りの世話”ではないかと否定的な見解を示しています(財政制度等審議会財政制度分科会〈2012.10.15〉資料1「社会保障予算(医療、介護等)」より)。厚生労働省も「生活援助」は「掃除、洗濯、料理中心である。そういう在り方であっては自立支援という目的に合わないのではないか」としています(社会保障審議会介護給付費分科会第86回〈2011.11.24〉議事録より)。
基本調査では、介護者約683万人のうち「介護支援を利用している人」は200万9000人で、介護者の約3割です。詳しい分析は12月を待つことになりますが、在宅における介護者の“義務的活動時間”について掘り下げ、介護者の負担についても有効な分析と効果的な制度の見直しを求めたいものです。

表1 1日の生活時間の配分
生活時間総数平均
1次活動(生理的活動)10時間40分
睡眠7時間42分
身の回りの用事1時間19分
食事1時間39分
2次活動(義務的活動)6時間53分
仕事等4時間43分
通勤・通学31分
仕事3時間33分
学業39分
家事関連時間2時間10分
家事1時間27分
介護・看護3分
育児14分
買い物26分
3次活動(自由活動)6時間27分
移動(通勤・通学以外)30分
休養等自由時間活動3時間58分
テレビ・ラジオ・新聞・雑誌2時間27分
休養・くつろぎ1時間31分
積極的自由時間活動1時間14分
学習・自己啓発・訓練(学業以外)12分
趣味・娯楽44分
スポーツ14分
ボランティア活動・社会参加活動4分
交際・付き合い19分
受診・療養8分
その他17分
総務省統計局「2011年社会生活基本調査」(2012.09.26)「生活時間に関する結果の概要」より
表2 介護している人は約683万人
介護者数実数割合男性女性
総数682万9,000人100.00%267万5,000人415万4,000人
30歳未満39万9,000人5.80%16万2,000人23万7,000人
30~39歳48万7,000人7.10%15万4,000人33万3,000人
40~49歳92万5,000人13.50%35万5,000人57万人
総務省統計局「2011年社会生活基本調査」(2012.09.26)「生活時間に関する結果の概要」より
表3 介護している人の家事や介護の時間は長くなる
生活時間介護をしていない人男性女性
1億134万1000人4978万9000人5155万2000人
家事1時間28分18分2時間35分
介護・看護1分0分1分
合計1時間29分18分2時間36分
生活時間介護をしている人男性女性
682万9000人267万5000人415万4000人
家事2時間24分38分3時間33分
介護・看護40分25分49分
合計3時間4分1時間3分4時間22分
総務省統計局「2011年社会生活基本調査」(2012.09.26)「生活時間に関する結果」主要統計表より

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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