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梶川義人の「虐待相談の現場から」

プロの民生委員・児童委員はいかが?

 厚生労働省の発表「平成25年度民生委員・児童委員の一斉改選結果について」によると、地域の要援護者支援に取り組む民生委員が、全都道府県で定数割れしているそうです。民生委員の任期は3年で、昨年12月1日に改選されたのですが、充足率が97.1%に減ってしまいました。とくに、都市部の欠員が目立ち、政令市は全て定数割れ、九州では5つの中核市も全て定数に足りていません。孤独死や虐待が社会問題化しているなか、困った事態です。

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 背景には、高齢化や核家族化の進行で高齢者や単身者といった要援護者が増え、民生委員の定数を増やす必要あるにもかかわらず、業務量の多さに比して交通費などを除いて基本的に無報酬なので、なり手に敬遠されがちなことがあります。それに、従来から若返りが必要だと言われるものの、人がいないので仕方なく再任することも多く、高齢化も進んでいます。

 民生委員の業務は多岐にわたります。たとえば、住民の生活状況の把握、要援護者への相談・助言や福祉サービスの情報提供、社会福祉事業者との連携、福祉事務所等の行政機関への協力、住民の福祉増進活動、児童福祉法の定める児童委員としての活動などです。

 冒頭の発表の参考資料「民生委員・児童委員の活動状況」によれば、一人の活動内容は、年平均、相談・支援31.2件、調査・実態把握23.7件、行事・会議等への参加26.8件、地域福祉活動38.5件、定例会・研修等24.3件、証明事務2.2件、訪問回数165.3回になります。なるほど、ハードワークです。しかも、町村部なら70~200世帯、都市部なら220~400世帯を担当するというのですから大変です。

 もちろん、問題意識のある自治体は対策をとっています。土日や夜間でも市職員に相談できる体制をとったり、問題ごとの対応マニュアルを配布したり、他のボランティアと連携して地域の見回り活動などを分担するなどです。しかし、全国的にみれば、やはり困った事態は解消されていません。

 また、こうした量的な問題だけではなく、質的なことも気がかりです。私は、研修や事例検討や対応マニュアルの作成などで、民生委員の方々にお目にかかりますが、介入拒否や個人情報保護の壁を越えて要援護者に寄り添う苦労話を沢山伺う一方、名誉職に胡座をかいているとしか思えない不適切な対応や虐待の事例をも耳にするからです。「民生委員も玉石混交か」と言ってしまえばそれまでですが、質に相当な開きがあるようなので、やはり気になります。

 私は、量と質いずれの問題も、根っこは業務にみあった報酬が払われない不自然さにあると思います。そこで、報酬を得てキチンと業務をこなすプロを養成するモデル事業を行えば良いと考えます。きっと、望ましい民生委員・児童委員のあり方が見えてくるのではないでしょうか。


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プロフィール
梶川義人
(かじかわ よしと)
(仮称)日本虐待防止研究・研修センター開設準備室長、淑徳短期大学兼任講師。
対応困難事例、家族問題担当ソーシャルワーカーとして約20年間、特別養護老人ホームの業務アドバイザーを約10年間務める。2000年から日本高齢者虐待防止センターの活動に参加し、高齢者虐待に関する研究、実践、教育に取り組む。自治体の高齢者虐待防止に関する委員会委員や対応チームのスーパーバイザーを歴任。
著書に、『高齢者虐待防止トレーニングブック-発見・援助から予防まで』(共著、中央法規出版)、『介護サービスの基礎知識』(共著、自由国民社)、『障害者虐待』(共著、中央法規出版)などがある。
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