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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

車椅子でのずれ防止

 前回は全介護状態の方の抱え上げ動作を力まかせに行わず、基本動作を最大限引き出すことで可能にする技術を紹介しました。しかし、抱え上げるまでは行えても、その後車椅子に下ろすことが難しいと感じる方は多いと思います。ついつい、下ろすというよりドスンと落とすような形になってしまったり、または座面の奥まで座らせにくいため、浅く腰掛けた状態で前方にずれてしまうことなどが、現場では多く見られています。
 今回は、これらの状況に対応するためのヒントをお伝えしたいと思います。
 まず、なぜずれてしまうかといえば、被介助者を抱え、介助者側から座面が見えないため、どうしてもしっかりと腰掛けさせることが難しいということがあげられるでしょう。
そこで、座面を見なくても、しっかりと位置を把握する工夫をしてみます。それは、介助者の膝を座面の端につけて、そこから膝を曲げて、座面の上に座るようにしていきます(写真1)。

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(写真1)

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 座面を直接見ることは無理ですが、膝を「触覚」として活用すれば、座面の位置をしっかりと確認することが可能になります。
 そこから、被介助者を膝の上を滑り台を滑らせるような感覚で背もたれに背中をつけるように座らせていきます(写真2)。

okada20090316-2.jpg
(写真2)

 一見すると、少し強引な感じかもしれませんが、実は座るときの基本動作を引き出しています。介助者の膝の上は斜めになっています。そこをすべるように腰が下りていくことで、結果として前傾が引き出され、腰が奥に落ち着くようになります。つまり、前傾して腰を下ろしていく座り方の動作、そのままなのです。
 その動きを引き出すためには、他の工夫も必要です。片手はあえて被介助者から離して、アームレストや背もたれなどを持ったほうがよいでしょう。被介助者をぎゅっと抱えてしまうと、かえってぐらついてしまいます。そこで、片手でバランスを取るため、背もたれやアームレストなどを持つとかえって安定することができます。その意味からも、膝を座面に置くときは、しっかりと座ったほうが、安定を引き出しやすく、座らせる動作が介助者、被介助者双方が安心して行えるようになります。
 今回は座面に膝をつくという単純なことから、ずれない座り方が可能になるということを行いました。もちろん、万能で活用出来るというわけではありません。しかし、ちょっとした工夫の積み重ねが、負担を大きく減らすきっかけとなることに気づくきっかけになったらと思います。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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