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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

介護技術の実践 ベッドでの上体起こし(2)

 前回は、上体起こしの時の力任せにならない抱え方を行いました。今回は、実際に起こして、ベッドに端座位にまで誘導をします。
 まず起こし方ですが、手をたすきがけにすると、垂直には起こしにくくなり、自動的に被介助者の動きは、はじめから斜め横を向き、起き上がる体勢からスタートできます。
 今までの上を向いた状態から腕力によって引き付けるようなことがなくなり、負担の少ない起き方になるわけです。そこからは、被介助者を上ではなく、斜め横に誘導するように、自分自身が若干後ろにある椅子に座るような感覚で動きを引き出してきます(写真1)。 

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(写真1)

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 つまり、筋力ではなく倒れる力を引き出します。すると、上体が起きてくると同時に反対側の骨盤が上がり、両膝も曲がってきやすくなります。両膝が曲がってきた瞬間に膝に手をかけて、さらに誘導を続けると、ほとんど負担なく端座位となっています(写真2)。

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(写真2)

 ここで見過ごされがちなポイントを挙げましょう。実は普段の私たちの動きを見ると、足場を固定している方がかなり多いことに気づきます。足場が固定されたまま上体を起こそうとすると、上半身だけしか動きに参加できないこととになります。すると、腰をねじることになり、腰痛の原因にもなりかねません。足場の固定は、床での上体起こしがうまくいかなかった最大の原因でもあり、ベッドでの動きにも共通している問題です。
 上半身だけではなく、下半身の動きも引き出して起こすためには、何が必要かといえば、足場を固定せずに、被介助者の動きに沿って足を動かしていけばよいのです。それは床での上体起こしで、足場を固定せず、被介助者の動きに沿って背中に回った動きと質的に共通するものなのです。
 足を動かすポイントとしては、まずリラックスして床を踏みしめずに立つようにします。踏みしめると、それだけで足場が固定されやすくなり、足が動きにくくなります。踏ん張ると、通常、つま先が前向きになります(写真3)。

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 動きを出す場合にはつま先が被介助者の動きに合わせて自然と横方向へ動かしていきます(写真4)。このような足が自然とついていくような動きでは、腰がねじれないため、負担も少なくなります。

okada20090105-4-2.jpg
(写真4)

 ベッドと床での上体起こし、一見すると形は違っても動きの質は一緒ということが、実際の技術を通して感じられたでしょうか。まとめれば、起きる方向性を引き出し、足場を固定させず、逆に足場を動かせるようにすることで、上半身、下半身の連動が生まれ、より負担なく起こすことが可能になってきます。
 このように普段は行わないような技術であっても、動きの質を意識すれば、思わぬヒントに出会えることがあるでしょう。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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