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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

介護技術の実践 長座からの立ち上がり(2)

 前回は、しゃがんだ状態で膝の内側に肘を入れ、相手を挟む力を省エネしたところまで説明しました。今回は、腕の回し方、立ち上がらせ方を、形に表われない内部の動きも踏まえて紹介したいと思います。
 まず相手の胴体に回す腕ですが、腋の下には腕をかけないようにします。なぜかといえば、ついつい力が入ったとき肋骨を締め上げてしまう危険性があるからです。また、重心が位置する骨盤から離れているため、腰が残り、動かしにくいという弱点もあります。
 では、どこに腕を回せば良いかといえば、おへその下に腕を回し組むのが良いでしょう。このことで、肋骨を締め上げる危険性が減り、また重心に近い位置を持てるようになるため、ダイレクトに動きが伝えやすくなります(写真1)。ただし、おへその下を抱えても、力を入れすぎないように注意することが必要です。
okada20081201-1.jpg
(写真1)

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 「ここから力を入れずにどうやって相手を立ち上がらせるのか」と疑問に思うかもしれません。実はここからが工夫の見せ所です。そのまま力任せに行うと、前回のように真っ直ぐ立ち上がらせようとしてしまいます。
 そこで、力任せにならない方向を探ってみると、そのまま後ろに尻餅をつくようすれば、相手を引くことが可能になります。つまり、力では動かしにくい相手でも、倒れる力を使えば、負担なく動かせるわけです。
 ただ、後ろに引くだけでは、いつまでたっても立ち上がることにはつながりません。そこで、上に立ち上がる動きと、後ろに倒れる動きを足して2で割ると、斜め後ろの動きが引き出されます(写真2)。上への動きと後ろへの動きの二つの力が合成され、斜めの力が生じた結果、相手と自分が一体となり、バランスが保たれた姿勢となるわけです。
okada20081201-2.jpg
(写真2)

 そのバランスを崩さないまま、さらに斜め後方へ倒れる力を出し続けると、最終的には相手が立ち上がった状態になります(写真3)。
okada20081201-3.jpg
(写真3)

 実際に行うと、相手とのバランスがとれず、どうしても力が入ってしまう方が多いようです。その際には無理をせず、小柄な方や、お子さんで練習することも検討してみましょう。また、人ではなく荷物を持ち上げる際に、垂直に持ち上げるのではなく、斜め後ろに倒れる力を使って持ち上げてみると、筋力に頼らない力の感覚が見つけやすいと思います。
 見た目の「出来た・出来ない」にこだわらず、どれだけ力感がなく行えたかという「味わい」を重視して技術を磨いていただけたらと思います。


コメント


岡田さま、ありがとうございました。
母が倒れて起き上がれてなくなっていて、姉とふたりでがんばってみても、全然できませんでした。検索でみつけて、書いていただいているとおり、やってみたら、ひとりで、全然力もいらず、母にも負担なく、スッと立ちあがれて、本当にびっくり!お陰さまで助かりました。ありがとうございます。古武術介護、ほんとうにすごいです。これからも、参考にさせていただきます。


投稿者: 島村 | 2012年04月20日 21:02

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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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