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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

技術以前の身体の使い方(3)力の伝達を良くする

 今回は手の平を返す、返さないという少しの動きの差により、出る力が大きく変わっていく身体の使い方をしてみましょう。
 まず、手の平からものを持つようにします(写真1)。その時にはほとんどの方が腕の力で持ってしまうでしょう。軽いものならまだしも、重いものになればなるほど、腕の力に頼ってしまうと、肩や腰を痛めることにもつながりかねません。通常ならここで、腕力そのものを鍛える、という発想にいくところですが、部分的な筋力に頼らないということが、この連載の核ですので、違う発想をしてみましょう。
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(写真1)

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 そこで、一気に手の平から持つのではなく、まず、手の甲から腕を回し、手首だけ返してからものを持つようにしてみます(写真2・3)。
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(写真2)
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(写真3)

 写真3を見て、掲載ミスと思った方もいるでしょうが、そんなことはありません。大事な動きほど、実は表面には現われにくいのです。だからこそ、中身の動きを解説していきましょう。
 全身がリラックスした状態で手の甲から腕を回していくと、背中に適度な張りを感じてきます。その背中の張りこそが最大のキーポイントになります。通常、手の平から持つ時には背中の張りはありません。そして、その状態では腕だけの力に頼った持ち方になります。ところが、背中に張りがあると、背中の力が腕まで伝わっている状態となり、腕だけでなく、背中全体で持つことが可能になってきます。
 ちょうど、背中の張りがある状態を綱引きで例えれば、綱がピーンと張り、力が伝わりやすい状態。逆に手の平からは背中に張りがないため綱が緩み、力が伝わりにくい状態です。つまり、力の伝達効率をいかに高めることができるかという工夫が手の平を返すという小さな動きの中にあるのです。
 ただ、このまま手の甲から持つことは困難です。だからといって手の平から持とうとすると、背中の張りが緩んでしまいます。
 そこで、背中の張りを保ちながら、手の平だけを返してみます。すると、見た目は手のひらから持っているにもかかわらず、腕力で持っているのではなく、背中全体で持っている感覚に明らかに切り替わっていきます。
 実際の介護にこの動きを活用する場面は、かなり多くあります。その意味では一番応用が効く身体の使い方と言えるかもしれません。また、今回のように介護以外にも、荷物を持つ時になどに活用できます。介護だけに限定せず、日常の中でも身体の使い方を工夫していくことのきっかけにしてもらえればと思います。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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