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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

ヘルパー講座の熱心な雑談

 ホームヘルパー講座の講師として、介護技術は当然テキストの内容を忠実に教えるように言われていました。
 しかし、ただテキストをなぞるだけでは、生徒さんはついてきてくれません。生徒さんはすでに施設などで働かれていたり、福祉関係の就職を希望されていたり、家庭介護の経験があるなど、実際に使うことを想定している方がほとんどでした。だからこそ、現場の経験で培われた技術を知りたいという方が多くいました。
 ある時、ベッドで上体を起こす方法を一通り終えた休み時間に、ある一人の生徒さんから質問を受けました。
 「教科書的な方法は、ある程度動ける人に自分で起きてもらう方法じゃないですか。でも、私が介護している祖母は、手足をほとんど動かせないので、介助するときに凄く力が必要なんです。そんな状態の人を上手く起こせる方法はないんですか?」

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 テキストと違い現場では全介護状態の方が多くします。しかし全介護の方の技術は、ヘルパーのテキストだけでなく、様々な本を読んでもほとんど取り上げられていません。
 そこで、「あくまでも参考ですが」と断り、甲野師範の見せた手の平を返す動きを応用した方法をしてみました。
 通常、手の平から背中を抱えるようにしますが、あえて手の甲から差し入れて起こしていきました。すると、手の平からでは力まかせになっていた動きが、手の甲では軽く感じたのです。受けている方からも「今までとは違い緊張もせず、心地よかった」と言ってもらえました。
 実際に質問された方にも試してもらうと、いつもとまったく違う感覚をもったようで驚いていました。
 おそらく手の平からだと腕の力に頼りすぎているから重くなり、手の甲からだと全身の力が引き出せるのではと、その当時は説明していました。
 よくは分からないけれど、特に筋力を鍛えなくても、身体の使い方を工夫することで、介護する人・受ける人がお互いに負担なく技術が行えることを実感した瞬間でした。そこから、私もしてみたいという方が多く、あっという間に休み時間は過ぎてしまいました。
 実は、テキストをなぞった授業は生徒の皆さんの反応が悪く、悩んでいました。今となってはテキストに基本として載っている技術の重要性も分かってきましたが、当時はテキストの基本よりも実践に通用する技術が最上だと、少し偏った考えをしていました。
 しかし、それらを差し引いても、自ら工夫し、まずは現場でいかに通用するかを創造していく過程は、生徒の皆さんにとっては新たな可能性を提案できたのではないかと思えました。


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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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