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岡田慎一郎の「古武術介護のトリセツ」

新しい発想を生む環境

 講習会で、ある施設に勤務する方から相談をされました。
 「施設では、先輩職員に見られながら、基本技術をしっかりやるようにと指導を受けています。例えば、立ち上がり介助では相手の腰をしっかりと握るというのが基本です。でも、その通りに行うと力まかせになって非常にきついのです。そこで、古武術介護の「手のひらを返す動き」を活用してみました。すると先輩から『違うことをしている!』と言われ、仕方なく基本の動きをしてるんです……」
 「手のひら返し」とは通常、手のひらから抱える動きを、あえて手の甲から抱え、そこから再び手のひらを戻し、力の伝達を良くする動きです。最終的には手のひらから抱える状態になるため、見た目も問題がないと思うのですが、少しでも基本から外れた動きをしたため、注意をされてしまったそうです。
 しかし、そんな中でも、見た目をまったく変えずに動きの質を変えるコツをその場で考え、行ったところ、良い感覚が芽生えたようで、明日から試してみるとのことでした。そんな制約の中での工夫もまた、技術向上には思わぬ成果があるなと実感しました。

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 それにしても、施設側としては全員が統一された動きをすることにより、介助の質を高めようというのが狙いでしょうが、本末転倒な感じがしてなりません。それは、技術に人を当てはめようとしてしまっているからです。本来ならば、介助を受ける人に合わせて基本技術の要素を工夫しながら、うまく応用することが望まれるのではないでしょうか。ところが、このような極端とも思われる例は意外に少なくないと思われます。
 それから考えれば、私が勤務していた施設の風通しはつくづく本当に良かったと感じます。何より職員、利用者それぞれが議論を重ねて新しい施設を作っていこうという雰囲気に満ちていました。その当時、中にいると気がつきませんでしたが、外に出て、全国を回るようになって実感していることです。
 技術に関して、かなり変わったアプローチをしていた自分に、普通ならば圧力がかかるところを、「利用者の方が楽だと感じているならばそれでいい」というように、利用者中心の考え方があったので、潰されずにすんだのです。
 もし、上記のように「基本技術」の型に何が何でも当てはめようとされていたら、私は耐え切れず介護の世界からいなくなっていたと思います。だからと言って、基本技術が悪いというのではありません。基本技術を活用する人の考え方が問題というわけです。
 そんなことからも、新しい発想が生まれるためには、柔軟に表現できる環境が必要です。
 その意味からすると、私はかなり恵まれた環境で育まれたことになります。そんな環境だったからこそ、武術との出会いにも拒絶感をもたず、好奇心いっぱいで飛び込んでいけたのだと思います。


コメント


はじめまして、介護初心者です。1ヵ月ほど前からテープオムツとパッドの組み合わせをベッド上に寝ている親に装着するという作業を試行錯誤でやっています。

体の方向を変えてもらうやり方として、病院で看護師さんに教わったやり方があります。
横に向いてもらう場合ですが、両足ひざをそろえて曲げてもらって、肩を軽く触れて、ころんと軽く動かすと、本人の痛みもなく容易に方向を変えることが出来ます。

これが初心者の私にはじつに不思議で、やはりこれは古武術にある技の応用なのでしょうか。他にこんな技がありましたら、介護される人、介護する人の為にもご紹介ください。

手の甲を使うやり方は試してみようと思います。ありがとうございました。


投稿者: らみぃ | 2008年05月29日 13:40

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プロフィール
岡田慎一郎
(おかだ しんいちろう)
介護支援専門員、介護福祉士。1972年生まれ、茨城県出身。身体障害者施設、高齢者施設の介護職員を経て、朝日カルチャーセンター等の講師を務める。武術家甲野善紀氏との出会いにより編み出した、古武術の身体操法に基づく介護技術(古武術介護)で注目を集める。著書に、『親子で身体いきいき古武術あそび』(日本放送出版協会)、『古武術介護入門』(医学書院)、雑誌掲載など多数。(タイトル写真提供:人間考学研究所)
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