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先輩介護者に聞こう 認知症在宅介護 お悩み相談

認知症の人の入院について教えてください

【質問】
認知症の検査のとき、他の病気も見つかりました。入院して手術が必要かもしれません。治療はどのように行ったらよいでしょうか。
【回答】
認知症の検査で、他の病気まで見つけてくれたとは、よかったですね。どこの病院もこうあってほしいですね。ただ、認知症の人の入院・手術は、初期であっても本人・家族にとって楽ではありません。いや、医師や看護師など専門職にとっても容易ではないようです。認知症が進行してからは、もっと苦労します。認知症の人が安心して治療を受けられる病院は今でも少ないのです。

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 妻がアルツハイマー病と告知されたとき、他に2つの病気があると言われ、専門病院受診を勧められました。1つは脳の萎縮が視神経を司る部分にも及んでいるので視野狭窄があるかも、もう1つは全身のレントゲン写真を撮ったら腎結石が3つある、ということでした。最初の病院では脳の写真撮影だけでした。家族は検査範囲の希望を予め伝えた方がいいかもしれません。
 腎結石は、地元の総合病院の泌尿器科に21日間入院し、摘出手術を受けました。入院時にアルツハイマー病と伝えると、婦長は一瞬「えっ」という顔をしました。しかし、すぐに前例があるからと、徘徊してもナースセンターの前を必ず通る病室を選び、同室者の目が届く4人部屋の一番奥のベッドを用意してくれました。ありがたい配慮でしたが、妻はその部屋の位置さえなかなか覚えられず、隣の男性部屋にたびたび入っていました。
 家と勝手が違いますから、混乱します。洗面所の蛇口が、多様な入院患者に応じて多様な形なので、妻はどれも操作が覚えられません。トイレも困りました。排泄自体がひとりではできなくなっていたので、昼間のトイレは私が同行し、夜間は看護師が時間を決めて誘導し介助してくれる約束でしたが、尿意は時間通りには来てくれません。ある夜、うろうろする妻を同室の方がトイレに連れて行ってくれたのですが、1人では始末ができないことは話せないでいたので入口までの案内で終わり。妻は、多分、ボックス入れず、外で下着を下ろさずにしゃがみ込み排尿したのでしょう。濡らしたパンツをベッド下に置き、何もはかずに寝ていました。かわいそうでした。
 同室者の中には、うまく会話ができない妻を軽侮する人もいて、口惜しい思いをしました。ナースステーションの入院患者掲示板の妻の名前に「痴呆」と書き添えてあるのに気付いたときは、仕方ないとは思いつつも悲しかったものです。
 手術そのものは2時間弱で無事に終了しましたが、妻は手術室からなかなか出てきません。1時間半後にやっと現れた妻は、酸素マスクをつけ、両手はベッドに拘束され、私を見て泣きました。麻酔医は「麻酔が効きすぎた。意識は戻ったが舌根が垂れたままで、自力呼吸ができない。痴呆ではよくあるのです。集中治療室に一晩入ってもらいます」と言います。麻酔医でも認知症の人の麻酔は、難事のようです。認知症の人への入院手術対応は麻酔医まで含めての総合的研修が望まれます。認知症になって初めての入院でしたが、とてもつらい体験でした。
 認知症がさらに進行して徘徊が盛んになったとき、妻の子宮留膿腫の検査を相談したら、検査はできるが、昼も夜もベッドに拘束すると言われ検査を諦めたことがあります。認知症の人が他の病気にかかったとき、安心して検査や治療を受けられる病院が今でもないのが残念です。かかりつけ医や家族会と相談し、いまできる最善策を選ぶことにしましょう。

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プロフィール
長谷川正
(はせがわ ただし)
東京都立高校の英語教員時代に、8歳年上のマリ子さんと出会い結婚。4人の子どもに恵まれる。 平成6年、マリ子さんが68歳のときに記憶障害が現れはじめ、2年後にアルツハイマー病と診断される。それから11年間、精一杯認知症と戦い、平成18年1月に自宅で看取る。 現在は、「認知症家族の会・青梅ネット」代表および認知症キャラバンメイトとして、東京を中心に各地で講演するとともに、家族会を開催し相談にのっている。
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