夫の言動についイライラしてしまいます
【質問】
夫の言動に、ついイライラして「どうしてこんなことが分からないの!」と怒ってしまいます。どうしたら優しい気持ちをもてるのでしょうか。
【回答】
御主人に優しい気持ちでいたい、そういう思いが伝わってくる質問ですね。いいのです、イライラして。認知症の初期には、一対一で接する家族はついつい苛立って怒ってしまいます。私がそうでした。それが自然で、そしてやがて・・・。
私も、人前では一所懸命妻をかばい気遣って、ご近所や地域で暮らしてきましたが、いったん一対一で妻と向き合うと、もういけません。人前でのような抑えが効きません。日記には「2,3日置きにマリ子に腹を立てる私」とあります。
妻が「アルツハイマー病」と診断を受けた年の夏です。「夕食でマリ子にムッ。『鉄板焼の用意ができていますから、どうぞ、お風呂をお先に』と言うから、裸になるとこれが水風呂。鉄板は埃だらけ。『洗いました、お湯で』と言うが、私は洗い直す。いざ野菜となると、これが洗ってない。スライスしたじゃがいもは腐ったものも。私、不機嫌。いけないとわかっているが、抑えられない。マリ子、おどおどしてさらにドジばかり」。娘が間に入ると、妻をかばうものですから、なおいけません。私は荒れ狂ったこともあります。
しかし翌日の日記には「昨夜怒鳴ったことを後悔。病気なのだから苛立ってもどうにもならないと反省」と書き記してあります。「泣かせてごめんと詫びた」日もあります。考えてみれば夫婦の役割分担とはいえ、妻が家事をうまくできなくなったら夫が手伝えばいいだけのことです。やがていつのまにか私は“男子七十にして厨房に立つ”(朝日文庫)を購入し、「おちらしを作る。私が椎茸を刻み、卵を焼く。ふたりでご飯を混ぜる。マリ子、鼻歌でご機嫌。これがうれしい」という記述がふえてきます。それでいて、また怒ってはあやまり、仲良くしてはまた……。こうしていつのまにか軟着陸していったようです。
妻が食器棚に皿をしまうのを見て、何気なく「汚れが付いているけれど」と言うと「洗いました。そんなはずはありません!」とすごい剣幕です。ほらっと取り出すと、妻はああっと叫んでしゃがみこみ、髪を掻きむしります。ざんばら髪で錯乱状態。しまった!と私は思いました。そして、私があらかじめ食器を洗って再度水桶につけ、妻を呼んで並んで洗い、「きれいになったね」とほめ妻の笑顔を引き出せるようになるには少し時間がかかりました。
質問者は奥さんで異変はご主人。これは世間で一番多いケースでしょう。一家の柱のご主人に「異変」となれば、奥さんが戸惑い、生活のこれからを思って苦悩し、役割分担のご主人の領域に足を踏み入れる心細さもさぞかしと思います。世間体もありましょう。苛立つのは自然です。でもご主人自身が、あれこれできなくなったことを一番自覚し、一番苦悩し、身近なあなたに一番優しさを求めているのです。私はそういう妻に必ずしも一番優しい態度で応じたとはいえないのです。今でも悔やんでいます。ご参考にして下さい。
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コメント
長谷川さま
はじめまして。
自然体で、啓蒙的でもない。
興味深い連載が始まりましたね。
イライラするのは当然。
そこからが勝負ですね。
参考にさせていただきます。
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