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どうなる? 介護保険

介護認定と選挙権

 11月16日に衆議院が解散し、衆議院議員総選挙(以下、衆院選)の第46回が12月4日公示、16日投開票と予定されています。
 2009年8月に行なわれた第45回衆院選では民主党が単独過半数を得て、政権交代しました。その2カ月前に開設した電話相談「介護保険ホットライン2009」では、介護保険制度をめぐる相談のほか、「歴史的な選挙になりそうなのに、投票所に行けない」という声がいくつか寄せられていました。
 公職選挙法では投票の方法について、(1)投票所での投票(第44条)、(2)点字投票(第47条)、(3)代理投票(第48条)、(4)期日前投票(第48条の2)、(5)不在者投票(第49条)、(6)在外投票(第49条の2)と定めています(表参照)。
 (5)の不在者投票には「身体に重度の障害がある選挙人(投票する権利を持つ有権者)のために設けられた制度」として郵送投票がありますが、対象になっているのは、わずか約4万5,000人です。

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選挙権の保障は二転三転
 「在宅投票制度の沿革 ―身体障害者等の投票権を確保する制度」(国立国会図書館『調査と情報』第419号〈2003年8月〉)によると、選挙権を保障するために初めて創設されたのは、1889(明治22)年の「代理投票」で、字が書けない有権者のために、代理人が投票用紙を記入するものです。「代理投票」はその後、いったん廃止され、1948年に復活し、“身体の故障”、“文盲”が対象になりました。
また、1925(大正14)年、仕事があるため投票所に行けない有権者(船員や鉄道員、軍人、軍属など)を対象に、「不在者投票」が創設されました。1947(昭和22)年には“疾病・負傷・妊娠・不具・産褥のため歩行が著しく困難な者”、1950(昭和25)年には“収監中”、1963(昭和38)年には“老衰”が追加されました。

65年前は「郵送投票」ができた
「不在者投票」のひとつである「在宅投票(郵便投票)」は、1947年にはじまりました。医師などの証明があれば、自宅から投票用紙を郵送することができました。しかし、同居親族による代行も可能としていたため、1951年に大量の選挙違反が発生し、廃止されました。1974年になって、“重度身体障害者及び戦傷病者”に対象を限って、親族代行を認めないという条件つきで復活しました。
そして約30年後の2003年、「与野党間の協議」により、介護保険の要介護5の認定者が“物理的に投票所に行くことができない”有権者と判断され、「在宅投票(郵便投票)」の対象に加えられました。
第22回参議院議員選挙(2010年7月)では、「在宅投票(郵便投票)」の証明書発行数は4万5,535件、投票者は3万1,592人です(2009年8月時点、総務省選挙部「目でみる投票率」より)。
ちなみに、要介護5の認定者だけでも63万5,971人になります(国民健康保険中央会「認定者・受給者の状況」「認定者の状況(2012年7月サービス分)」より)。

自宅で投票できるのは約5万人
12月の第46回衆院選で自宅から郵送投票できるのは、身体障害者手帳(1~3級)、戦傷病者手帳(特別項症~第3項症)、介護保険被保険者証(要介護5)の有権者になります。知的障害者、精神障害者、難病者、そして要介護5以外の高齢者は対象外です。
また、「不在者投票」には「指定病院等において投票する場合」がありますが、“指定病院等”には都道府県選挙管理委員会が指定した施設(特別養護老人ホーム、軽費老人ホーム、有料老人ホーム、養護老人ホームなど)が含まれますが、有権者数は明らかになっていません。

投票所もバリアフル
投票所に行くにしても、選挙管理委員会によっては車やバスで送迎をしていますが、制度としてアクセス保障はありません。バスなどによる移動投票所(巡回投票)も検討されていません。
 実際に投票所に行くことができたとして、バリアフリー対策はどうでしょうか。総務省自治行政局は各地の選挙管理委員会宛てに、投票所を1階にする、スロープを設置するといった通知を出していますが、「入口に段差のある投票所は全体の約55%にあたる3万3382ヵ所。そのうち簡易スロープなどがつけられているのは3分の1で、介助のための職員を配置しているのは6割弱。何の対応もしていない投票所は406カ所あった」(2010年7月7日毎日新聞より)という報告もあります。

不正があるから、選挙権は保障されなくていい?
日本の有権者数は約7200万人です。介護保険の認定者だけでも約550万人になり、単純計算で全有権者の約8%を占めます。
半世紀以上前に不正があったからといって、選挙の公正を確保するために、相当数の“歩行が困難”な人たちの投票する権利が失われたままでいいのでしょうか?

表 公職選挙法が定めている投票制度
1.当日投票
2.点字投票
3.代理投票
4. 期日前投票
5. 不在者投票
 (1)不在者投票管理者の管理の下に投票する一般的な不在者投票制度
  ア.所属地選管において投票する場合
  イ.所在地等選管において投票する場合
  ウ.指定病院等において投票する場合
 (2)身体に重度の障害がある選挙人が自宅等現在する場所において投票する
郵便等による不在者投票制度
 (3)国外における不在者投票制度
 (4)洋上投票制度
 (5)南極投票制度
6.在外投票
 ア.在外公館投票
 イ.郵便等投票
 ウ.国内における投票
総務省自治行政局資料(2009.09.16)より

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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