Vol.26 今から考えておきたい相続対策
加藤淳也(弁護士)
相続対策なんて必要ない?
「うちは資産家でもないから、相続対策なんて必要ないだろう」と思っている人も多いのではないでしょうか。しかし、相続をめぐる紛争は資産家に限らず、ごく一般的な家庭にも多く起こり得ます。
そこで、自分が築いた財産をめぐって子供たちが争うことにならないよう、相続対策について考えてみましょう。
財産をだれが相続するかについては民法に規定されており、これを「法定相続人」といいます。それによると、配偶者(夫、または妻)は常に相続人となります。このほか、一定の血縁関係にある者も相続人となります。
しかもこれには順位がつけられており、子が第1順位、父母が第2順位、兄弟姉妹が第3順位とされています。上の順位の者がいる場合、下の順位の者は相続人にはなれません。たとえば子がいる場合、配偶者と子だけが相続人となり、父母や兄弟姉妹は相続人にはなれません。
また、血縁関係にある相続人がすでに死亡している場合などは、その死亡している者の子が相続人となります。たとえば子がすでに亡くなっている場合でも、その子にさらに子がいる場合(本人からみた場合の孫に当たる)孫が第1順位の相続人となり、父母や兄弟姉妹は相続できません。これを「代襲相続」といいます。
また、民法では法定相続人がどれだけの財産を相続するかも規定されており、これを「法定相続分」といいます。これは、だれが相続人になるかによって異なります。
相続人が配偶者と子の場合、相続財産のうち、配偶者と子が2分の1ずつを相続することになります。子が複数いる場合、子の分である2分の1をさらに子の人数で割ったものが相続分になります。たとえば配偶者と子が3人いる場合、配偶者が2分の1、子が6分の1ずつになります。
相続人が配偶者と父母の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1になります。相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1になります。
なお、配偶者がいない場合、上順位の血縁関係にある者がすべての相続財産を相続することになります。
そこで、自分が築いた財産をめぐって子供たちが争うことにならないよう、相続対策について考えてみましょう。
財産をだれが相続するかについては民法に規定されており、これを「法定相続人」といいます。それによると、配偶者(夫、または妻)は常に相続人となります。このほか、一定の血縁関係にある者も相続人となります。
しかもこれには順位がつけられており、子が第1順位、父母が第2順位、兄弟姉妹が第3順位とされています。上の順位の者がいる場合、下の順位の者は相続人にはなれません。たとえば子がいる場合、配偶者と子だけが相続人となり、父母や兄弟姉妹は相続人にはなれません。
また、血縁関係にある相続人がすでに死亡している場合などは、その死亡している者の子が相続人となります。たとえば子がすでに亡くなっている場合でも、その子にさらに子がいる場合(本人からみた場合の孫に当たる)孫が第1順位の相続人となり、父母や兄弟姉妹は相続できません。これを「代襲相続」といいます。
また、民法では法定相続人がどれだけの財産を相続するかも規定されており、これを「法定相続分」といいます。これは、だれが相続人になるかによって異なります。
相続人が配偶者と子の場合、相続財産のうち、配偶者と子が2分の1ずつを相続することになります。子が複数いる場合、子の分である2分の1をさらに子の人数で割ったものが相続分になります。たとえば配偶者と子が3人いる場合、配偶者が2分の1、子が6分の1ずつになります。
相続人が配偶者と父母の場合、配偶者が3分の2、父母が3分の1になります。相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合、配偶者が4分の3、兄弟姉妹が4分の1になります。
なお、配偶者がいない場合、上順位の血縁関係にある者がすべての相続財産を相続することになります。
紛争を防ぐなら遺言を活用する
このように法律で相続人や相続分が定められているにもかかわらず、なぜ、相続をめぐる紛争が生じるのでしょうか。
その原因としては、「法定相続分では納得できない」という相続人がいる場合があります。たとえば自分は親の面倒をみてきたのだから、他の兄弟より多くの財産を相続したいという場合などです。
また、民法では何分の何という相続分の割合は定められていますが、具体的にどの財産をだれが相続するか、ということまで民法で決まるわけではありません。このため、どの財産を誰が相続するのかで争いになるわけです。
そこで、このような紛争を防ぐためには遺言が有効です。遺言を書くことにより、相続財産のうち、何をだれに相続させるかを決めることができるからです。たとえば、同居して面倒をみてくれた子供には家を相続させる、また、家業を継ぐ子供に会社の財産を相続させるなどです。
ただし、遺言には決まった方式や要件があるため、これを欠くと効力が認められなくなるので注意が必要です。
ここでは、実際に多く用いられる「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に触れておきます。
「自筆証書遺言」とは、遺言者が自筆で書いて作成する遺言です。いつでも費用をかけずに作成できる点で便利ですが、反面、民法で要件が厳格に定められているため、これが欠けると無効となりますし、後日、この効力をめぐって相続人間で争いになるケースも多く、不安定さは否定できません。
「公正証書遺言」とは、公証人役場で遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公正証書として作成する遺言です。公証人の手数料として若干の費用がかかりますが、最も確実な方式ですので、何度も書き直す予定があるなどの場合を除き、おすすめできる方式です。
その原因としては、「法定相続分では納得できない」という相続人がいる場合があります。たとえば自分は親の面倒をみてきたのだから、他の兄弟より多くの財産を相続したいという場合などです。
また、民法では何分の何という相続分の割合は定められていますが、具体的にどの財産をだれが相続するか、ということまで民法で決まるわけではありません。このため、どの財産を誰が相続するのかで争いになるわけです。
そこで、このような紛争を防ぐためには遺言が有効です。遺言を書くことにより、相続財産のうち、何をだれに相続させるかを決めることができるからです。たとえば、同居して面倒をみてくれた子供には家を相続させる、また、家業を継ぐ子供に会社の財産を相続させるなどです。
ただし、遺言には決まった方式や要件があるため、これを欠くと効力が認められなくなるので注意が必要です。
ここでは、実際に多く用いられる「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」に触れておきます。
「自筆証書遺言」とは、遺言者が自筆で書いて作成する遺言です。いつでも費用をかけずに作成できる点で便利ですが、反面、民法で要件が厳格に定められているため、これが欠けると無効となりますし、後日、この効力をめぐって相続人間で争いになるケースも多く、不安定さは否定できません。
「公正証書遺言」とは、公証人役場で遺言者が遺言の内容を公証人に口頭で伝え、公正証書として作成する遺言です。公証人の手数料として若干の費用がかかりますが、最も確実な方式ですので、何度も書き直す予定があるなどの場合を除き、おすすめできる方式です。
遺言を書くときのポイント
もっとも、遺言を書いておけば争いがなくなるかというと、そうとは限りません。遺言の内容に全員が納得すればよいのですが、そうではない場合もあるからです。そうならないため、ぜひ心得ておくべきことがいくつかあります。
まず、相続に関する親の方針を日ごろから子供たちに浸透させておくことです。そうすれば、いざ相続となったとき、ごく自然に遺言に従った相続が行われるでしょう。
また、相続対策はすべての相続人にオープンにしておくことです。相続人にとって自分が知らなかった相続対策がされていることを知ると、親と他の兄弟たちが都合のよいようにやったと思う傾向にあるからです。法定相続分を意識することも重要です。法定相続分は法律で認められた権利ですので、あまりにこれを無視すると、無視された人には不満が残ります。
次に、遺言にあたっては「遺留分」にも留意した方がいいでしょう。「遺留分」とは、一定範囲の相続人(兄弟姉妹以外の法定相続人)には、相続財産のうち、遺言によっても奪うことのできない財産を保障するという制度です。相続人が子(孫などを含む)のみの場合、法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分となります。たとえば、相続人が配偶者と子3人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が6分の1ずつですが、遺留分はその2分の1ですから配偶者が4分の1、子が12分の1ずつとなります。
遺留分を侵害する内容の遺言であると、侵害された者は財産を取得した者に対し、「遺留分減殺請求」という権利を行使できますので、後日紛争に発展する可能性があります。このため、あらかじめ相続人全員が遺言の内容に納得している場合などでない限り、遺留分程度の財産は与えるよう、配慮した方がよいでしょう。
まず、相続に関する親の方針を日ごろから子供たちに浸透させておくことです。そうすれば、いざ相続となったとき、ごく自然に遺言に従った相続が行われるでしょう。
また、相続対策はすべての相続人にオープンにしておくことです。相続人にとって自分が知らなかった相続対策がされていることを知ると、親と他の兄弟たちが都合のよいようにやったと思う傾向にあるからです。法定相続分を意識することも重要です。法定相続分は法律で認められた権利ですので、あまりにこれを無視すると、無視された人には不満が残ります。
次に、遺言にあたっては「遺留分」にも留意した方がいいでしょう。「遺留分」とは、一定範囲の相続人(兄弟姉妹以外の法定相続人)には、相続財産のうち、遺言によっても奪うことのできない財産を保障するという制度です。相続人が子(孫などを含む)のみの場合、法定相続分の3分の1、それ以外の場合は法定相続分の2分の1が遺留分となります。たとえば、相続人が配偶者と子3人の場合、法定相続分は配偶者が2分の1、子が6分の1ずつですが、遺留分はその2分の1ですから配偶者が4分の1、子が12分の1ずつとなります。
遺留分を侵害する内容の遺言であると、侵害された者は財産を取得した者に対し、「遺留分減殺請求」という権利を行使できますので、後日紛争に発展する可能性があります。このため、あらかじめ相続人全員が遺言の内容に納得している場合などでない限り、遺留分程度の財産は与えるよう、配慮した方がよいでしょう。
(2008年4月28日)