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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter19「高額療養費を知っていますか? その1」

 先日患者のYさんが、慌てふためいた様子で私に電話をかけてきました。そして開口一番、
「この前一緒に見学に行った○○ホスピス、あの病院はやっぱりだめよ」
 と言いました。

 ただ、先週の見学直後Yさんは私に、「○○ホスピスは個室に入院しても大部屋に入院しても、料金は同じだと言うことが魅力的だわ。経済的な側面を考えるとこのホスピスに決めたい」と言っていました。

 それなのに、なぜ急にだめだと思ったのでしょう?

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 Yさんは見学の後、○○ホスピスのパンフレットを熟読したそうです。その中に、ホスピスは1日3万7800円かかると書かれていたと言うのです。個室であってもベッドの料金はかからないのですが(一般的には個室の場合、差額ベッド代と称し数千円から数万円かかります)、何だか分からないけれど、入院すると毎日4万円近い料金がかかるなんてとても払い切れない、と愕然とし、私へ電話をかけてきたのでした。

 しかしこれはYさんの勘違いです。順を追って説明します。

 医療費の支払いは、その治療内容によって2つの種類から決められています。1つは出来高払い方式といって、実際に行った医療行為ごとに支払う通常の方式。みなさん風邪などを引いて病院にかかると、都度に費用を請求されますよね。これが出来高払いです。もう1つは包括払い方式といって、実際に行った医療行為の数とは関係なく、定額を支払う方式があります。
 そしてパンフレットには、ホスピスは包括払い方式で、1日3万7800円かかります、ということが書いてあったのです。医療者にとっては当たり前のことですが、病院の支払いでは利用明細が出ませんので、患者さんには知る由もない制度ですね。

 つまりこれは保険適用となる医療費のことだったのです。

 毎日3万7800円かかるのだとすると、1カ月110万円以上かかるとYさんは愕然としていたのですが、保険が効く対象だと分かり束の間ほっとしたのでした。

 実際の支払いには健康保険が適用されますので、1割~3割負担となります。よって約11万~33万円の支払いになります。それでも、毎月二桁以上の支払いは厳しいと思います。そこで、知っていると得をする、高額療養費という制度が活躍します。

 高額療養費の詳細は次回へ続きます。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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