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どうなる? 介護保険

「認定者」と「利用者」

 6月29日、厚生労働省老健局は「2010年度介護保険事業状況報告(年報)」を公表しました。介護保険制度では、表1のように6種類の調査が定期的に行なわれ、なかでも「介護保険事業状況報告」と「介護給付費実態調査」は年次報告(年報)のほか月次報告(月報)が公表されています。

 30日には「要介護認定、初の500万人突破 介護保険給付費7兆円」(朝日新聞)という記事がありました。国民健康保険中央会の「介護費等の動向」には「認定者数は2010年度平均で506万人(同4.4%増)であり、受給率は2010年度平均で81.1%であった。」という報告があります。「2010年7月サービス提供分」の認定者(全国計)は502万5,540人で、ちょうど2年前に500万人を超えたことが示されています。ちなみに、国民健康保険中央会最新データでは「2012年2月サービス提供分」の認定者は537万5,367人になります。

表1 介護保険の調査
介護保険に係る既存の調査調査時期公表時期
介護給付費実態調査毎月毎月、年報は翌年夏頃
介護保険事業状況報告毎月毎月、年報公表は翌々年夏頃
介護サービス施設・事業所調査毎年10月1日翌々年春頃
介護事業実態調査等介護事業経営概況調査介護報酬改定前々年7月1日年末頃
介護事業経営実態調査介護報酬改定前年の4月1日秋頃
介護労働実態調査毎年10月1日翌年夏頃
介護従事者処遇状況等調査2009年10月1日年度末頃
2010年7月1日年末頃
2012年秋頃
第1回社会保障審議会介護給付費分科会介護報酬改定検証・研究委員会(20112.04.26)参考資料2より

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認定者すなわち利用者ではない
 認定者数について、厚生労働省は年度末の月(毎年3月)の人数を、国民健康保険中央会は年間平均の人数を報告しています。利用者数については、厚生労働省は年間実受給者数(年間を通してサービスを利用した人数)と年間継続受給者数(1年間に1度でも利用した人数)を、国民健康保険中央会は年間平均受給者数を報告しています。どのデータも正しいわけですが、採用する数字によって、受ける印象が異なることになります。
 いずれにしても、介護保険サービスがスタートした2000年度から気になるのは、認定(要支援認定・要介護認定)を受けたけれど、実際にはサービスを利用していない「未利用者」の存在です。
 表2にあるように、「介護保険サービスを利用することができます」と認定された人が、実際にサービスを利用している割合は7~8割です。2008年度以降は利用率が80%台になりましたが、利用していない人もまた、90万人台で推移しています。都市でいえば、北九州市(約98万人)あるいは千葉市(約96万人)の人口に匹敵します。

全国実態調査はない
 介護認定は申請をしてから訪問調査を経て通知が届くまで、18~50日かかります(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社「要介護認定における事務負担の軽減に関する調査研究事業」より)。70項目を超える訪問調査を受ける必要もあります。それだけの手続きを経てなお、80~90万人が利用していない理由については、全国的な実態調査はありません。電話相談では「利用できるサービスがない」「使いづらい」といった声も寄せられています。
 国会や社会保障審議会の場では、利用者が増えると財政が圧迫されるという論調が多く、未利用者はあまり注目されませんが、「無縁社会」「孤立死」といった社会不安が広がるなか、実態調査により課題を把握することが解決に向かう道筋のひとつではないかと思います。

表2 認定者にしめる利用者の割合
 高齢者人口認定者利用者未利用者利用率
2002年度2,363万人302万人235万人67万人77.9%
2003年度2,431万人329万人256万人73万人77.5%
2004年度2,488万人372万人288万人84万人78.0%
2005年度2,560万人406万人317万人89万人78.4%
2006年度2,660万人430万人337万人93万人78.2%
2007年度2,746万人438万人361万人77万人79.4%
2008年度2,822万人469万人376万人93万人80.2%
2009年度2,901万人485万人392万人93万人80.8%
2010年度2,944万人506万人411万人95万人81.1%
国民健康保険中央会「介護費等の動向」より(認定者、利用者は年間平均数)

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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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