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どうなる? 介護保険

介護報酬改定(12)検証・検討委員会の設置

 第5期(2012~2014年度)介護報酬についてチェックしてきましたが、第88回社会保障審議会介護給付費分科会(2012年1月15日。以下、分科会)では、今回の改定について「介護報酬改定検証・研究委員会(仮称)」を設置することが了承されました。
委員会の目的は、(1)2015年度の介護報酬改定に向けて、2012年度の介護報酬改定の効果を検証する、(2)「2012年度介護報酬改定に関する審議報告」において検討が必要とされた事項に関する実態調査等を行うとされています。2月28日に開かれた第89回分科会では、「公益委員(分科会委員)及び学識経験者数名で構成」される「介護報酬改定検証・研究委員会(仮称)」委員7人の氏名が公表されました(資料5)。

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「医療と介護」の議論の違い
 介護報酬は3年ごとに社会保障審議会で見直しが行われていますが、医療保険では診療報酬が2年ごとに中央社会保険医療協議会(以下、中医協)で見直されています。6年ごとに同時改定となる介護報酬と診療報酬ですが、2012年度改定では「医療と介護の連携」がテーマとなり、分科会と中医協それぞれに議論が行われました。ただし、議論の流れには表1にあるように差がみられます。
大きな違いは、医療保険(診療報酬)の場合、厚生労働大臣から中医協が諮問(「これでいいですか」という質問)を受けると同日、パブリックコメントの募集が開始され、公聴会が開かれていることです。診療報酬のパブリックコメントは募集期間こそ1週間と短いですが、2月1日に中医協に報告(受付1314件、項目別2291件)が行われ、同月10日に答申が行われています。
介護保険(介護報酬)の場合、第88回分科会で諮問と答申が同時に行われ、厚生労働大臣に「いいですよ」という返事をした後で、国民の意見を聞くパブリックコメント「2012(平成24)年度介護報酬改定に伴う関係省令の一部改正等に係る意見募集」が開始されました。現時点でも結果は公表されていませんし、公聴会の実施もありませんから、国民が介護報酬改定の議論に参画する機会は、医療保険に比べて少ないと言えます。


表1 介護報酬と診療報酬の審議スケジュール
日程介護報酬診療報酬
社会保障審議会介護給付費分科会中央社会保険医療協議会(総会)
2010.12.15第184回医療と介護の連携(その1)
2011.01.21第185回医療と介護の連携(その2)
2011.02.02第186回医療と介護の連携(その3)
2012.02.07第71回改定に向けて
2011.02.16第187回医療と介護の連携(その4)
2011.05.30第75回医療と介護の連携について
2011.08.10第78回これまでの議論の整理
2011.10.07第81回介護事業経営実態調査報告
2011.11.02第86回審議報告(案)第203回医療経済実態調査報告
2011.11.24
2011.12.21第213回改定への意見書
2012.01.13第214回これまでの議論の整理
2012.01.18第215回厚生労働大臣からの諮問
パブリックコメント募集
2012.01.20第216回公聴会
2012.01.25第88回2012年度改定の概要
厚生労働大臣の諮問
厚生労働大臣への答申
2012.01.26パブリックコメント募集
2012.02.01第220回パブリックコメントの報告
2012.02.10第221回厚生労働大臣への答申
2012.02.28第89回検証・研究委員会(仮称)の設置
2012.03.28第223回改定結果検証特別調査の進め方
厚生労働省ホームページ「政策について 審議会・研究会等」より


委員の「代表区分」の有無
 また、中医協の委員名簿には「代表区分」があり、(1)健康保険、船員保険及び国民健康保険の保険者並びに被保険者、事業主及び船舶所有者を代表する委員(7人)、(2)医師、歯科医師及び薬剤師を代表する委員(7人)、(3)公益を代表する委員(5人)、(4)専門委員(10人)と分かれていますが、分科会や社会保障審議会本体にも「代表区分」はありません。

「検証・研究」のゆくえ
 2012年介護報酬改定を検証するとされている「介護報酬改定検証・研究委員会(仮称)」は、「公益委員」(分科会のなかで介護事業者の利益と関係がない分野の委員)と「学識経験者」で構成される予定です(表2参照)。
 改定の「効果の検証及び分析」は、(1)サービス付き高齢者向け住宅、定期巡回・随時対応サービスや複合型サービスの実施状況、(2) 集合住宅における訪問系、通所系サービスの提供状況、(3) その他、新たに創設した加算の算定状況の3項目について、実態調査にもとづく議論が予定されています。「調査研究」では、(1)認知症に対して現在実施されているサービスの実態、(2)介護事業所、介護施設における医師、看護師、ケアマネジャー等が担っている役割、(3)生活期において実施されているリハビリテーションの実態、(4)介護予防サービスにおいて、効果が高いサービス提供の現状、(5)介護サービスの利用実態と区分支給限度基準額との関係の5項目がテーマに挙げられています。
 3月22日、参議院厚生労働委員会では福島みずほ委員の質問に、小宮山洋子・厚生労働大臣は「介護報酬改定検証・検討委員会の調査や検証結果については、介護現場の関係者もメンバーとなっている社会保障審議会介護給付費分科会に報告をされ、ここで議論をすることになっています。また、パブリックコメントやヒアリング、意見交換会など様々な手段で現場の状況や現場の声を聴取し、次期改定につなげていきたいと考えています」と答弁しています。
介護報酬の議論だけでも平成24年度は2300万円あまりの予算が計上されています(「平成24年度歳出概算要求額明細表」より)。幅広く意見を聴く「検証・研究」を望みたいものです。


表2 介護報酬改定検証・研究委員会(仮称)委員
公益委員(社会保障審議会介護給付費分科会委員)
大島伸一(独)長寿医療研究センター総長
池田省三地域ケア政策ネットワーク研究主幹
田中滋慶應義塾大学大学院教授
村川浩一日本社会事業大学教授
学識経験者
椿原彰夫川崎医療福祉大学教授
松田晋哉産業医科大学教授
松原由美明治安田生活福祉研究所主席研究員
第89回分科会資料5「介護報酬改定検証・研究委員会(仮称)の設置について(案)」より


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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