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どうなる? 介護保険

介護報酬改定(7)ショートステイの改定

 今回はショートステイの介護報酬改定について、第88回社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)に出された「平成24年度介護報酬改定の概要」(資料1-2 以下、概要)をみていきます。
 在宅サービス(居宅サービス)に位置づけられているショートステイは「短期入所系」とも分類され、(1)一時的に手厚いケアが必要になったとき、(2)家族などが病気や冠婚葬祭などで介護できないとき、(3)介護している人のレスパイト(息抜き)などのために提供されています。
 ショートステイは「ショート」とも略されますが、介護報酬では特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)など社会福祉法人が主に提供する福祉系ショートステイ(介護予防短期入所生活介護、介護予防短期入所療養介護)と、老人保健施設(介護老人保健施設)や介護療養病床(介護療養医療施設)など医療法人が主に提供する医療系ショートステイ(短期入所生活介護、短期入所療養介護)で基本報酬、加算報酬ともに異なります。

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「緊急時に利用できない」対策に加算を新設
 表1のように2010年度現在、ショートステイは約1万3000事業所、利用者は約83万人です。電話相談「介護保険ホットライン」(介護保険ホットライン企画委員会主催)では、(1)介護する家族などが入院しなければならない、葬儀などに参列しなければならないといった「緊急時」に利用できない、(2)利用者が帰宅したときに「前より心身の状態が悪くなった」、という2つの課題に事例が多く寄せられています。

表1
サービスの種類事業所数利用者数
介護予防サービス
介護予防入所生活介護特別養護老人ホーム7426事業所3万5800人
介護予防短期入所療養介護老人保健施設5188事業所5800人
介護療養病床など 400人
介護サービス
短期入所生活介護特別養護老人ホーム7803事業所62万6500人
短期入所療養介護老人保健施設5363事業所14万5600人
介護療養病床など 1万2000人
出典:事業者数:厚生労働省大臣官房統計情報部「平成22年介護サービス施設・事業所調査結果の概況」(事業者数)、厚生労働省大臣官房統計情報部「平成22年度介護給付費実態調査の概況」(利用者数)

空きベッド確保の加算は全利用者が対象
 概要では「緊急時の円滑な受入れを促進する」ため、一定割合の空きベッドを確保している事業所に緊急短期入所体制確保加算、ケアプランに位置づけられていない緊急利用者を受け入れた場合に緊急短期入所受入加算を新設するとされています(表4参照)。
 昨年10月17日の第82回分科会で、厚生労働省は「短期入所生活介護の基準・報酬について」(資料1-4)として、空きベッドの確保と緊急時の受け入れについて、(1)過去3か月間において一定割合(5%)の空床を確保していた介護事業所の体制を評価する加算(事業所の全利用者にかかる加算)、(2)居宅サービス計画に位置づけられていない緊急の利用者を受け入れた場合の加算(緊急の利用者のみにかかる加算)を創設すると提案しています。
 5%の空きベッドの確保については「本来得るはずであった報酬相当額が確保できる仕組みとする」とあり、そのため、空きベッド確保の加算はそのベッドを利用する者だけでなく、事業所のすべての利用者を対象にするとされています。
 同資料では、都道府県別の利用率は「全国平均では14%の空床が生じている」が、「利用率が100%を超えている都道府県も存在する」としています。緊急時の受け入れの需要が高いのは「利用率が100%を超えている」場合が多いのではないかと思われますが、「利用率が100%を超える」事業者はどのように緊急短期入所体制確保加算をとるのでしょうか。
 また、加算を取得する事業所を利用している人はすべて加算の対象となりますが、加算の1割を負担した利用者が緊急利用できるのかという疑問が残ります。
 なお分科会は、新設された加算報酬について「施行後の実態把握を行い、必要に応じて適宜見直しを行う」としています。新年度以降、ショートステイの新加算が「緊急時に利用できない」という課題の解決策になるのかどうか注目したいと思います。

表2
介護予防短期入所2009~2011年度2012~2014年度増減
介護予防短期入所生活介護 特別養護老人ホーム(施設に併設され、相部屋の場合)
要支援1514単位/日499単位/日-15単位/日(-2.92%)
要支援2633単位/日614単位/日-19単位/日(-3.00%)
介護予防短期入所療養介護 老人保健施設に併設され、相部屋の場合
要支援1631単位/日612単位/日-19単位/日(-3.01%)
要支援2785単位/日766単位/日-19単位/日(-2.42%)


表3
短期入所2009~2011年度2012~2014年度増減(単純差引計)
短期入所生活介護 特別養護老人ホーム(施設に併設され、相部屋の場合)
要介護1703単位/日682単位/日-21単位/日(-2.99%)
要介護2774単位/日751単位/日-23単位/日(-2.97%)
要介護3844単位/日822単位/日-22単位/日(-2.61%)
要介護4915単位/日891単位/日-24単位/日(-2.62%)
要介護5985単位/日959単位/日-26単位/日(-2.64%)
短期入所療養介護 老人保健施設に併設され、相部屋の場合
要介護1845単位/日826単位/日-19単位/日(-2.25%)
要介護2894単位/日874単位/日-20単位/日(-2.24%)
要介護3947単位/日937単位/日-10単位/日(-1.26%)
要介護41001単位/日990単位/日-11単位/日(-1.10%)
要介護51054単位/日1043単位/日-11単位/日(-1.04%)


表4
短期入所の主な加算短期入所生活介護短期入所療養介護
緊急短期入所ネットワーク加算廃止廃止
緊急短期入所体制確保加算[新設]40単位/日 
緊急短期入所受入加算[新設]60単位/日90単位/日
療養食加算23単位/日23単位/日
在宅中重度者受入加算413~425単位/日 
サービス提供体制強化加算6~12単位/日6~12単位/日 
機能訓練指導員配置加算12単位/日 
看護体制加算4~8単位/日 
認知症行動・心理症状緊急対応加算200単位/日200単位/日
若年性認知症利用者受入加算120単位/日120単位/日
重度療養管理加算[新設] ※要介護4・5 120単位/日
療養体制維持特別加算 27単位/日
緊急時施設療養費 500単位/日
リハビリテーション機能強化加算 30単位/日
個別リハビリテーション実施加算 240単位/日
認知症ケア加算 76単位/日
介護職員処遇改善加算[新設]所定単位×2.5%/月所定単位×1.5%/月


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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