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どうなる? 介護保険

介護報酬改定(1)介護報酬1単位の値段が変わる

 1月25日、社会保障審議会介護給付費分科会(座長:大森彌・東京大学名誉教授 以下、分科会)の第88回に、第5期(2012~14年度)介護報酬の改定内容について小宮山洋子・厚生労働省大臣から社会保障審議会(会長:大森彌・東京大学名誉教授 以下、審議会)に出された「これでいいですか?」という諮問書(資料1-3)が提出され、分科会から「いいですよ」と了承する審議会への報告書がまとめられ、同時に審議会が厚生労働大臣に提出する答申書が配布されました。
 同日、「介護保険に24時間サービス創設 施設、生活援助は効率化」(共同通信)、「在宅サービス強化、職員の待遇改善制度化 介護報酬改定」(朝日新聞)、「介護報酬改定案、24時間訪問サービス定額制に」(読売新聞)、「『24時間巡回』定額制 生活援助、時間区分短く」(毎日新聞)などの報道があり、(1)介護職員処遇改善交付金の介護報酬化(介護職員処遇改善加算の新設)と(2)地域密着型サービスに新設された24時間サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)の月単位定額制の報酬単価が話題になっています。
 厚生労働省ホームページには、目次にあたる資料1-1「2012(平成24)年度介護報酬改定について(骨子)」(4ページ)、資料1-2「2012(平成24)年度介護報酬改定の概要」(53ページ)、具体的な算定基準と単価、指定基準の改正(概要)をまとめた「2012(平成24)年度介護報酬改定 介護報酬・指定基準等の見直し案」(別紙1~8、416ページ)がすべて掲載されていますので、具体的な内容を確認してください。

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地域とサービスによって、2割以上の値段の差
 介護報酬は「単位」で表され、1単位10円が基本です。ただし、その単位に「地域区分ごとの上乗せ割合」と「人件費割合」という係数がかけあわせられて値段(単価)が決まるため、保険者である市区町村とサービスの種類ごとに、金額に開きがあります。その理由は、「サービス提供地域ごとの人件費などの地域差を反映させるため」(第73回分科会資料1「介護報酬の地域区分の見直しについて」より)とされています。利用者からみれば、事業所が提供するサービスの種類と所在地によって介護保険サービスの料金が異なり、事業所からみれば同じサービスを同じ量だけ提供しても売上高が異なるわけです。
 第4期(2009~11年度)は1単位10円から11.05円まで1割以上の開きがありました。例えばホームヘルプ・サービス(訪問介護)の生活援助でみれば、30分以上60分未満の1回訪問で229単位なので、基本報酬だけを単純にみれば、1単位10円ならば2290円、11.05円ならば2530円の料金になり、240円の差がありました(利用者負担は1割なので24円になります)。
 今回の改定では「地域区分」が5区分から7区分に増え、1単位10円から11.26円まで2割以上開きが出ることになりました(第88回資料1-1、別紙7「厚生労働大臣が定める1単位の単価」)。

「人件費割合」は訪問看護だけアップ
 今回の改定では、「人件費割合」は訪問看護のみ、55%から70%と15%の引き上げになりました。2012年度から地域密着型サービスに新設される定期巡回・随時対応サービス(定期巡回・随時対応型訪問介護看護)と複合型サービスも70%とされ、訪問看護がかかわるサービスだけが引き上げとなりました。

表1 サービスごとの人件費割合(2012年度以降)
居宅介護支援70%
在宅サービス
ホームヘルプ・サービス70%
訪問看護70%
訪問入浴70%
訪問リハビリテーション55%
デイサービス45%
デイケア55%
ショートステイ(短期入所生活介護)45%
ショートステイ(短期入所療養介護)45%
特定施設入居者生活介護45%
地域密着型サービス
夜間対応型ホームヘルプ・サービス70%
小規模多機能型居宅介護55%
[新設]定期巡回・随時対応型訪問介護看護70%
[新設]複合型サービス70%
認知症デイサービス55%
認知症高齢者グループホーム45%
地域密着型特定施設入居者生活介護45%
地域密着型特別養護老人ホーム45%
施設サービス
特別養護老人ホーム45%
老人保健施設45%
介護療養病床45%

「地域区分ごとの上乗せ割合」は5区分から7区分に
 市区町村ごとに異なる「地域区分ごとの上乗せ割合」は、介護保険施行時から「国家公務員の調整手当」(人事院規則)に準じて(1)特別区、(2)特甲地、(3)甲地、(4)乙地、(5)その他の5区分となっていました。しかし、この区分では介護保険事業者の収支差率にばらつきがあるとの理由から、「国家公務員の地域手当」(人事院規則)に準じて1級地から6級地、その他の7区分に変更されることになりました。

1級地と2級地は値段が上がり、6級地は下がる
 表2~4に示したように、地域区分の細分化と人件費割合のかけあわせにより、特別区から1級地に変わる東京都23区は1単位0.13円~0.21円まで単価が上がります。特甲地のうち3級地になった20市(東京都12市、神奈川県横浜市、川崎市、愛知県名古屋市、大阪府吹田市、寝屋川市、兵庫県西宮市、芦屋市、宝塚市)も0.09円~0.14円まで単価が上がります。
 1単位の値上げはサービス提供事業所の売上増になりますが、同時に利用者の1割負担の料金も比例して上がります。また、乙地から6級地に変わる284市町村では、0.09円~0.14円の引き下げになります(284市町村については資料1-1の最終ページにある別紙「平成24年度から平成26年度までの間の地域区分の適用地域」を参照してください)。
 全国1742市区町村(2011年12月31日現在)のうち、2.5%の市で単価が上がり、16.3%の市町村で単価が下がることになります。

表2 新・地域区分と人件費割合70%の場合の1単価
現行見直し後差引
 地域区分人件費割合
70%のサービス
 地域区分人件費割合
70%のサービス
特別区15%11.05円 1級地18%11.26円+0.21円
2級地15%11.05円 
特甲地10%10.70円 3級地12%10.84円+0.14円
4級地10%10.70円 
甲地6%10.42円5級地6%10.42円 
乙地5%10.35円6級地3%10.21円-0.14円
その他0%10.00円その他0%10.00円 

表3 新・地域区分と人件費割合55%の場合の1単価
現行見直し後差引
 地域区分人件費割合
55%のサービス
 地域区分人件費割合
55%のサービス
特別区15%10.83円1級地18%10.99円+0.16円
2級地15%10.83円 
特甲地10%10.55円3級地12%10.66円+0.11円
4級地10%10.55円 
甲地6%10.33円5級地6%10.33円 
乙地5%10.28円6級地3%10.17円-0.11円
その他0%10.00円その他0%10.00円 

表4 新・地域区分と人件費割合45%の場合の1単価
現行見直し後差引
 地域区分人件費割合
45%のサービス
 地域区分人件費割合
45%のサービス
特別区15%10.68円1級地18%10.81円+0.13円
2級地15%10.68円 
特甲地10%10.45円3級地12%10.54円+0.09円
4級地10%10.45円 
甲地6%10.27円5級地6%10.27円 
乙地5%10.23円6級地3%10.14円-0.09円
その他0%10.00円その他0%10.00円 

第5期は経過措置を設定予定
 1単位の値段の変動は、1割負担の利用者より10割売上とする事業者のほうが影響は当然大きくなります。第88回分科会では、「報酬単価の大幅な変更を緩和する観点から、2014年度末までの経過措置等を設定する」として、事業者の売上が急激に下がらないようにするようです。資料1-1別紙の備考には、「兵庫県伊丹市及び加西市における上乗せ割合(注・5級地で6%)について、2012(平成24)年度から2014(平成26)年度までの間は、経過措置として9%とする」、「東京都東大和市及び武蔵野市、大阪府熊取町並びに兵庫県明石市における上乗せ割合(注・6級地で3%)について、平成24年度から平成26年度までの間は、経過措置として5%とする」と小さく記載されています。
 介護報酬の単価が異なるのは、サービス提供地域ごとに物価や家賃、人件費の差を考慮するためだそうですが、健康保険の診療報酬は全国どこでも1単位10円です。介護報酬にこのように複雑な係数をかけ、ひんぱんに改定されることは、事務負担も含めて課題がありそうです。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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