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岩本ゆりの「病気との付き合い方~医療コーディネーターからの手紙~」

Letter11 「納得できる医療を受けるにはどうしたら良いですか? その2・失敗例編」

 前回は、納得医療を受ける方法をご紹介しました。今日のお便りでは、納得できずに医療を受けるとどのようなことが起こるのか、とある「失敗例」をご紹介致します。

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 以下は60代の女性のがん患者さんの体験談で、医療コーディネーターが相談を受けた実際に起こった話です。

 「ここのところ体調が悪く、1年前より大学病院を受診していましたが、なかなか病名がつきませんでした。とはいえ、日々体調は悪化する一方でした。

 ある日、首のリンパ節が腫れていたので、風邪ではないかと思い、大学病院の定期受診の際に主治医へ報告しました。するとすぐに精密検査が始まり、悪性リンパ腫であると診断されました。受診より一年以上経って、ついに病名が確定したのです。その時の私の思いは

 「なぜすぐに病名がわからなかったのか」
 「症状がでるまで発見できないとは何事か」

 など、怒りや不信感で一杯でした。しかし、これから治療をしてもらう身としては、この不満を主治医には伝えることはできませんでした。

 その後に始まった抗がん剤治療は、想像以上に辛いものでした。
 「高齢で身体の小さな女性と、若くて体力のある大柄な男性と同じ薬の量を使っているのではないか?」と思うほど 副作用はひどく、医師への不信感と相まって「このまま治療を続けたら、生きて家に帰れないのではないか」との思いになりました。
 最後には「高齢者は死んでほしいと思ってわざとやっているのかもしれない」とまで思いつめました。

 大学病院は、一人ひとりの患者をみないで定型の治療をしているように思います。人によって抗がん剤の種類を減らすなど、もっと副作用がでないように工夫をして治療をして欲しいです。これでは病気は治っても、私の身体は死んでしまうでしょう。
 「抗がん剤以外の治療法はないのか」と主治医に聞いても、「今の治療が一番効果のある治療法だから」と言って、答えてくれません。諦めずに何度も繰り返し訴えたところ「退院してもらって構わない」と言われてしまいました。

 ついに私は病院も西洋医学も信じられなくなり、治療を途中で中断することを決意しました」

(体験談終わり)

 この方は、医師が行うがん治療に対して不満をもっていました。抗がん剤の副作用に耐えることができなくなり、病院側とコミュニケーションがとれず、ついには退院してしまいました。しかし、病院への怒りは収まらず、「大学病院に謝罪して欲しいのだけれど、どうしたら良いのか」と医療コーディネーターへ相談したのです。このように失敗してしまうのは何故なのでしょうか。
 次回は、その反対に納得医療を受けることが出来た「有効例」をご紹介致します。


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プロフィール
岩本ゆり
(いわもと ゆり)
看護師・医療コーディネーター、NPO法人楽患ねっと副理事長。楽患ナース株式会社取締役。1995年東京医科大学病院産科病棟、1999年東京大学病院婦人科病棟、特別室・緩和ケア病室を経て、2002年NPO法人楽患ねっと開設、2003年医療コーディネーター開業、現在に至る。
2008年フジサンケイ・大和証券グループ Woman Power Project 第7回ビジネスプランコンテスト優秀賞2003年日本看護協会広報委員就任。
主な著書は『あなたの家にかえろう』(共著、2006年)、『患者と作る医学の教科書』(共著、日総研出版2009年)など。

私は看護師として、患者さんが落ち込んだ時も、前向きな時も、患者さんの人生の傍らに寄り添い、その力となる存在であり続けたいと思います。読者の方々のご相談もお待ちしています。
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