受験勉強も大事ですが、資格はなりたい自分に近づくための手段。合格後の「仕事のイメージ」を抱くことも大事です。このコーナーでは、資格の世界を知るのに役立った本や映画などを合格者が紹介します。
古き良き日本の姿を体感してみて
春秋山伏記
おすすめの理由
数ある藤沢作品から、この作品を選んでみました。彼の作品としては異色のものです。これは、著者の郷里である山形県庄内地方に伝わる習俗を生き生きと活写した小説です。「白装束に高下駄、髭面で好色そうな大男」が、村の子供の命を救う場面からはじまります。はじめは、その若い山伏を胡散臭いと敬遠していた村人たちが、物語が進行するにつれて、しだいに畏怖し尊敬していくようになります。登場人物は、江戸時代後期の寒村で暮らす人々です。貧しいかもしれませんが、みんなで助け合いながら力一杯生きています。
その素朴で素敵な人々を、随所で描かれている庄内の当時の大自然は、時にやさしく、時にはきびしく見守っています。堅苦しい「道徳」などに侵されていない古き良き「日本の姿」=社会がここにあると思いました。大らかに、自然に逆らわずに暮らす人々。今のギスギスした日本とどうしても較べてしまいます。
受験勉強に疲れたら、手に取ってみてください。癒されます。そして、大それたことかもしれませんが、私は思うのです。もしかすると、「福祉」がこの落ち着かない社会をいい方向に変える一つの方法になり得るのではないだろうかと。そして、それを担うのが現場の私たちではないのかと。
(特別養護老人ホーム 杜の風 齋藤俊)