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どうなる? 介護保険

「介護職員等」による一部「医行為」の提供

パブリックコメントに意見を出そう
 厚生労働省は現在、改正介護保険法にもとづく介護現場で働く人たちの「“医行為”解禁」と、それにともなう介護福祉士養成施設の見直しなどについて、行政手続法によるパブリックコメント(意見公募手続)を募集しています(9月9日締め切り)。
 このパブリックコメントの正式名称は「介護職員等によるたんの吸引等の実施に関する御意見募集」と「社会福祉士及び介護福祉士法施行規則等の一部を改正する省令案等に関する御意見募集」です。パブリックコメントは、行政に個人が公的に意見を出せる唯一の機会です。「意見が反映されない」という声もありますが、内容を理解し、自分の意見を整理し、伝えるチャンスでもあります。ぜひ「概要」を読み、“意見応募”にトライしてください。どちらも提出メールアドレス(shishihousoku@mhlw.go.jp)は同じです。わからないことは「問い合わせ先」(今回は厚生労働省社会・援護局福祉基盤課、TEL.03-5253-0111内線2865)に確かめましょう。
 なお、パブリックコメントは担当省庁が事後(期間の定めはありません)、「主なご意見」を公表します。皆さんのブログやホームページで「こんな意見を出したよ」と“自主公開”しておくのも方法です。
 ちなみに厚生労働省は9月2日、「社会福祉士及び介護福祉士法の一部改正」に基づく医療的ケア関係業務の施行等に関する説明会を開きます。傍聴締め切りは8月29日(月)17時です。

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「医行為」の一部合法化
 6月15日、国会で改正介護保険法が成立し、改正案提出理由のひとつ「介護福祉士等による喀痰吸引等の実施等の措置を講ずる」のために社会福祉士及び介護福祉士法も一部改正(以下、一部改正)されました。
 法律の改正で、これまで医師法歯科医師法保健師助産師看護師法で医療資格者のみに認められていた「医行為」のうち、「喀痰吸引等」(喀痰吸引、経管栄養)は「介護福祉士等」が実施してもいいと認められました。改正前から、特別養護老人ホームや在宅、特別支援学校などで「喀痰吸引等」は行われ、「違法性阻却論」(違法だけれど罪に問わない)で認められてきた行為が合法化されたことになります。

対象となるのは「介護・教育・保育の場」
 介護保険法の改正理由のひとつとされる「介護福祉士等による喀痰吸引等」ですが、厚生労働省が設置した「介護職員等によるたんの吸引等の実施のための制度の在り方に関する検討会」(以下、検討会)の事務局は、老健局(介護保険法・高齢者福祉担当)を中心に医政局(保健医療担当)、社会・援護局(社会福祉・生活保護・戦後補償担当)、社会・援護局障害保健福祉部(障害者自立支援法・障害者施策担当)の共同担当です。
 高齢・障害分野をまたがるのは、一部改正で「喀痰吸引等」を提供される利用者は、介護保険の被保険者だけでなく重度身体障害者、ALS患者、特別支援学校の生徒など「介護・教育・保育の場」を広範囲に及ぶためです。

介護福祉士と都道府県が認定した「介護職員等」による提供
 検討会では、高齢・障害を問わずたんの吸引などを必要とする利用者に対応するため、「医行為」の規制緩和を急ぎ、介護職の提供サービスとして認めることで合意し、具体的な内容を検討しました。そして、一部改正では(1)医師の指示のもとで「診療の補助」として、(2)介護福祉士、研修を受けた介護職員など(認定特定行為業務従事者)が、(3)都道府県に登録した事業者(登録事業者)に所属し、(4)たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)と経管栄養(胃ろう、腸ろう、経鼻経管栄養)を実施することができる、という内容になりました。
 (2)ではさらに(ⅰ)介護福祉士の具体的な養成カリキュラムは厚生労働省令で定める、(ⅱ)介護福祉士以外の介護職員など(1級・2級ホームヘルパー、保育士、特別支援学校教員など)は都道府県の登録研修機関による一定の研修(講義50時間と各行為の演習)を修了し、都道府県が認定した者で具体的内容は厚生労働省令で定める、とされています。募集中のふたつのパブリックコメントは、これらの「厚生労働省令で定める」内容を問うものです。

事故が起こったときの責任は?
 昨年12月13日に開かれた第6回検討会では、「たんの吸引等」の責任の所在について議論があり、「介護の業務として何か事故が起こった場合と同じように考えている」「登録でございますので、一定の基準が満たされれば、拒否することはできないわけですので、直ちに県の責任になるのかというところ」(川又竹男・振興課長)という一般論の説明があり、介護職員については「過失があれば、その過失があった行為者が責任を取るということは当然」(平林勝正構成員・國學院大學法科大学教授)、「自分のやったことに対しての責任は、やはり自分にあるというのはと、当然のことだと思います」(内田千恵子構成員・日本介護福祉士会副会長)、登録事業者については「医師法違反という、いわゆる取消しになるような重たいペナルティーは付かない」(三上裕司構成員・日本医師会常務理事)などの発言がありました(第6回議事録より)。

改善の余地のある柔軟な対応を
 なお、一部改正の成立後、6月30日に開かれた第8回検討会では、「ここで制度の在り方が充分に議論されないまま法律が成立してしまっている」(平林勝正構成員)という指摘があり、「中間まとめの骨子案にもとづきまして法律の提案をさせていただいております」「法律上はカリキュラム等の中身については何も書いてございません」(川又竹男・振興課長)という説明がありました。
 必ずしも十分とはいえない議論だけれども、利用者のニーズに対応するために一部改正を急いだ、その内容については厚生労働省令で具体化する――ということです。だからこそ、今後も変更可能、改善の余地を残した厚生労働省令の在り方がパブリックコメントにも問われていると思います。

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本連載では、介護保険制度にまつわる皆さんの質問や疑問を受け付けています。制度改正のポイントや利用者・家族、介護職員などへの影響について具体的に知りたいなど、何でも結構です。
ご質問、お待ちしています。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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