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どうなる? 介護保険

改正案成立前に介護報酬改定スタート

 去る4月5日、介護保険法改正案(概要法律案要綱法律案案文・理由法律案新旧対照条文参照条文)が内閣提出法律案(閣法)として衆議院に提出されました。改正案は「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律案」という長い名前ですが、18日現在、まだ審議ははじまっていません。
 13日には、介護報酬の改定を議論する社会保障審議会介護給付費分科会(以下、分科会)の第72回が開かれました。テーマは(1)東日本大震災における介護保険制度等の対応、(2)2012年度介護報酬改定に向けてのふたつでした。
 さらに27日には早くも第73回が予定され、介護保険法改正案の国会審議や成立を待たずに、介護報酬の見直しの議論は進むという構図です。
 なお、分科会などは一般の人でも傍聴を申し込むことができます。抽選になる場合がほとんどですが、第73回の傍聴申込は21日(木)正午が締め切りです。

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東日本大震災における介護保険
 4月13日の分科会では、介護保険制度を担当する厚生労働省老健局から「東日本大震災における介護保険制度等の対応」、これまでに出した「通知・事務連絡一覧」などが説明されました。避難所などに派遣されている介護職員は約500人(派遣可能人数は約8000人)、福島原発からの避難者を含む施設の受け入れ状況は約2700人(受け入れ可能な高齢者施設は約3万6000人分)と報告されました。また、「東日本対震災を踏まえた対策等」も検討中とのことです。
 被災地の介護状況については、「岩手沿岸、在宅介護機能せず 30事業所全壊」(15日付『毎日新聞』)、「特養ホーム苦境なお 支援の手 後回しに」(15日付『河北新報』)など少しずつ報道されてきていますが、被災地の事業所やケアマネジャー、ホームヘルパーなどの被害状況や介護保険サービスの提供態勢などはまだ把握されておらず、「災害介護」の模索がはじまったばかりです。

被災地の訪問看護は1人配置でも可能に
 分科会では「東日本大震災に係る訪問看護サービスの柔軟な提供方法」として、被災地の訪問看護サービス事業所の職員(保健師、看護師または准看護師)配置が常勤1人であっても介護報酬を支払うことについて、細川律夫・厚生労働大臣から諮問され(意見を求められ)ました。訪問看護事業所の人員基準は常勤2.5人以上ですが、分科会では被災地支援のために、基準該当訪問看護サービスは常勤1人以上でかまわないという特例が認められ(答申され)ました。
 助産師やケアマネジャー、医師などが1人開業できるのに、訪問看護師には認められていないことについては、「開業看護師を育てる会」が1人でも開業できるよう求めていましたが、地域限定(東京都を除く被災地)、期間限定(2011年3月11日~2012年2月29日)ではじめて認められたことになります。

介護職員の給与のゆくえ
 分科会の後半は、「東日本対震災のなか、介護報酬を改定していいものなのか」(三上裕司・日本医師会常任理事)という疑問も出されましたが、25人の委員が次期介護報酬改定について、自由意見を語る場となりました。
 もっとも言及されたのは、介護現場で働く人たちの給与となっている介護職員処遇改善交付金を交付金(税金)のまま維持するのか、介護報酬(税金と介護保険料)に組み込むのかです。交付金は麻生政権(自民党)当時、補正予算で政治決定されたもので、交付期間は2012年3月までとなっています。
 委員からは、「維持することが必要」(小林剛・全国健康保険協会理事長)、「すでに支給されており、守るべき」(中田清・全国老人福祉施設協議会会長)、「支給継続が前提」(馬袋秀男・民間介護事業推進委員会代表委員)、「保険料が高上がりにならないよう交付金という考え方もある」(村川浩一・日本社会事業大学教授)という交付金派と、「一時金ではなく、標準に組み込む議論が必要」(田中雅子・日本介護福祉士会名誉会長)、「介護報酬に組み込むべきだ」(山田和彦・全国老人保健施設協会会長)という介護報酬派の意見が出ました。
 分科会は介護報酬のほか、運営基準や介護認定についても議論する場とされています。「立場が違えば必要性は異なるが、必要性に順番をつけなければならない」(大島伸一・国立長寿医療研究センター総長)という発言にあるように、誰にとっての“必要性”が認められ、どのような“順番”がつくのか注目したいと思います。


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プロフィール
小竹 雅子(おだけ まさこ)
市民福祉情報オフィス・ハスカップ主宰。「障害児を普通学校へ・全国連絡会」「市 民福祉サポートセンター」などを経て、2003 年から現在の活動に。著書に岩波ブックレット『介護認定介護保険サービス、利用するには』(09 年11月)、『介護保険Q&A 第2版』(09年5月)、『こう変わる!介護保険』(06年2月)などがある。
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