第84回 いままでの100年、これからの100年
私は昭和12(1937)年に内科の医師になってからこれまで70余年にわたり臨床医として数多くの患者さんの診療に当たってきました。その患者さんたちとともに私も齢を重ねてきましたので、私の患者さんには80歳や90歳を超す方々が少なくありません。
昭和29(1954)年、聖路加国際病院は国立東京第一病院(現・国立国際医療センター)とともに、日本で最初に「人間ドック」を始めました。聖路加国際病院では私がそれを担当したのですが、その時から毎年ドックに入られる方たちの身体的・生理的な老化について経過観察を行ってきました。それとともに、自分にはどのように老化が現れてくるかについても強い関心をもち、自己観察に努めるようになりました。
人間ドックは、見かけ上はこれという身体不調の訴えがなく普通に生活している人が定期的に健康をチェックして、病気が発症する前に異常を発見するものです。毎年受診する人々の年ごとのデータを経年的にフォローしていくことにより、この人は将来、成人病(1996年に生活習慣病と名称が変更された)を発症するという傾向を発見し、それをもとに注意します。
しかしそのほかにも、私はいわゆる成人の老化現象を観察していくことができるということに気がついたのです。そこで昭和36(1961)年3月の第3回日本老年医学会において、各臓器の働きの衰えや人間の外見的な老化を点数で表現し、人間の老化度を経年的に調べた成績を発表しました。
さて、自分の老化を意識し始めた70代初めの頃から私は、老いと死のプロセスを生物学的立場だけでなく、人間としてどのように捉えるかについても考えるようになりました。ところで、私が自分の老いを自覚したのは70歳を過ぎた頃、2本の指先で持っていた一枚の原稿用紙が指から離れて床に滑り落ちた時のことでした。
ソクラテスのいうように「ただ生きるのではなく、よりよく生きてこられた」私の何人もの患者さんは、老いることや死ぬことについて、私に率直にいろいろのことを語ってくださいました。私が主治医をつとめた禅の大家である鈴木大拙先生は95歳で亡くなられたのですが、診察の機会のたびごとに「齢をとってみなければわからないことがたくさんある」などと、含蓄のあるお話をたくさん伺うことができました。
私が接してきた大勢の患者さん一人ひとりの顔が異なるように、一人ひとり違った老いの姿をみせてくださいます。そのような患者さんや家族の方々との触れあいから、私は老いのもつ実像を深く学ぶことができました。そして、老いることの意義を積極的に捉えることにより、人間としての「有終の美」を飾りたいという思いから2000年9月の「新老人の会」を発足させることになりました。「新老人の会」はみなさんの支持を得て、はや11年の歴史をもち、1万2,000人近い会員と全国に39の支部をもつまでに発展しました。
人間としてよく老いそしてよく死ぬために、そしてそこから翻ってよく生きるために、これからもいろいろなことを学んでいきたいと思います。21世紀を担っていく若者たちや子どもたちにいのちの大切さと平和な社会の実現の夢を託して、子どもたちには私たちの経験や思いを積極的に伝えていきましょう。
昭和29(1954)年、聖路加国際病院は国立東京第一病院(現・国立国際医療センター)とともに、日本で最初に「人間ドック」を始めました。聖路加国際病院では私がそれを担当したのですが、その時から毎年ドックに入られる方たちの身体的・生理的な老化について経過観察を行ってきました。それとともに、自分にはどのように老化が現れてくるかについても強い関心をもち、自己観察に努めるようになりました。
人間ドックは、見かけ上はこれという身体不調の訴えがなく普通に生活している人が定期的に健康をチェックして、病気が発症する前に異常を発見するものです。毎年受診する人々の年ごとのデータを経年的にフォローしていくことにより、この人は将来、成人病(1996年に生活習慣病と名称が変更された)を発症するという傾向を発見し、それをもとに注意します。
しかしそのほかにも、私はいわゆる成人の老化現象を観察していくことができるということに気がついたのです。そこで昭和36(1961)年3月の第3回日本老年医学会において、各臓器の働きの衰えや人間の外見的な老化を点数で表現し、人間の老化度を経年的に調べた成績を発表しました。
さて、自分の老化を意識し始めた70代初めの頃から私は、老いと死のプロセスを生物学的立場だけでなく、人間としてどのように捉えるかについても考えるようになりました。ところで、私が自分の老いを自覚したのは70歳を過ぎた頃、2本の指先で持っていた一枚の原稿用紙が指から離れて床に滑り落ちた時のことでした。
ソクラテスのいうように「ただ生きるのではなく、よりよく生きてこられた」私の何人もの患者さんは、老いることや死ぬことについて、私に率直にいろいろのことを語ってくださいました。私が主治医をつとめた禅の大家である鈴木大拙先生は95歳で亡くなられたのですが、診察の機会のたびごとに「齢をとってみなければわからないことがたくさんある」などと、含蓄のあるお話をたくさん伺うことができました。
私が接してきた大勢の患者さん一人ひとりの顔が異なるように、一人ひとり違った老いの姿をみせてくださいます。そのような患者さんや家族の方々との触れあいから、私は老いのもつ実像を深く学ぶことができました。そして、老いることの意義を積極的に捉えることにより、人間としての「有終の美」を飾りたいという思いから2000年9月の「新老人の会」を発足させることになりました。「新老人の会」はみなさんの支持を得て、はや11年の歴史をもち、1万2,000人近い会員と全国に39の支部をもつまでに発展しました。
人間としてよく老いそしてよく死ぬために、そしてそこから翻ってよく生きるために、これからもいろいろなことを学んでいきたいと思います。21世紀を担っていく若者たちや子どもたちにいのちの大切さと平和な社会の実現の夢を託して、子どもたちには私たちの経験や思いを積極的に伝えていきましょう。
(2011年10月4日)
■セミナーのお知らせ
【テーマ】基礎から学ぶフィジカルアセスメント2011 (1)高齢者によくみられる皮膚疾患と症状・褥瘡のケア
【日時】10月29日(土)10:00〜16:00
【会場】健康教育サービスセンター
〒102-0093 千代田区平河町2-7-5砂防会館5階
【定員】50名
【対象】看護師,訪問看護師,看護教員など
【参加費】7,000円(LPC会員5,000円)
【プログラム】
10:00-12:00 高齢者によくみられる皮膚疾患と症状(講師:衛藤 光/聖路加国際病院皮膚科部長,日本皮膚科学会専門医)
13:00-16:00 褥瘡のケア(講師:南 由起子/埼玉社会保険病院看護局長,皮膚・排泄ケア認定看護師)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
【日時】10月29日(土)10:00〜16:00
【会場】健康教育サービスセンター
〒102-0093 千代田区平河町2-7-5砂防会館5階
【定員】50名
【対象】看護師,訪問看護師,看護教員など
【参加費】7,000円(LPC会員5,000円)
【プログラム】
10:00-12:00 高齢者によくみられる皮膚疾患と症状(講師:衛藤 光/聖路加国際病院皮膚科部長,日本皮膚科学会専門医)
13:00-16:00 褥瘡のケア(講師:南 由起子/埼玉社会保険病院看護局長,皮膚・排泄ケア認定看護師)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
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■セミナーのお知らせ
【テーマ】ヘルスボランティア講座――医療と福祉の現場ではたらくボランティアのための
【開催期間】2011年11月2日(水)・11月9日(水) 全2回
【会場】砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター内(地下鉄・永田町駅下車4番出口徒歩4分)
【参加費】5,000円(LPC会員3,000円)
【プログラム】
●11月2日(水)
10:00〜12:30 私は変わる、社会は変わる―ボランタリーライフの社会(講師:興梠寛/昭和女子大学人間社会学部教授,日本ボランティア学習協会代表理事,世田谷ボランティア協会理事長)
13:15〜16:00 傾聴とボランティア活動(講師:水野修次郎/日本カウンセリング学会認定カウンセラー・認定スーパーバイザー,麗澤大学教授)
●11月9日(水)
10:00〜12:30 動作障害とその援助(講師:安部能成/千葉県立保健医療大学準教授/作業療法士)
13:15〜14:00 輝いて生きる――ボランティア活動がもたらす力(講師:日野原重明/医学博士,(財)ライフ・プランニング・センター理事長)
14:00〜16:00 ボランティア活動の基本の理解とLPCのボランティア活動(講師:志村靖雄 (財)ライフ・プランニング・センターボランティアコーディネーター)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
【開催期間】2011年11月2日(水)・11月9日(水) 全2回
【会場】砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター内(地下鉄・永田町駅下車4番出口徒歩4分)
【参加費】5,000円(LPC会員3,000円)
【プログラム】
●11月2日(水)
10:00〜12:30 私は変わる、社会は変わる―ボランタリーライフの社会(講師:興梠寛/昭和女子大学人間社会学部教授,日本ボランティア学習協会代表理事,世田谷ボランティア協会理事長)
13:15〜16:00 傾聴とボランティア活動(講師:水野修次郎/日本カウンセリング学会認定カウンセラー・認定スーパーバイザー,麗澤大学教授)
●11月9日(水)
10:00〜12:30 動作障害とその援助(講師:安部能成/千葉県立保健医療大学準教授/作業療法士)
13:15〜14:00 輝いて生きる――ボランティア活動がもたらす力(講師:日野原重明/医学博士,(財)ライフ・プランニング・センター理事長)
14:00〜16:00 ボランティア活動の基本の理解とLPCのボランティア活動(講師:志村靖雄 (財)ライフ・プランニング・センターボランティアコーディネーター)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
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メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
■LPCバザーのお知らせ
【テーマ】第26回 LPCバザー
【開催日】2011年11月8日(火)
【時間帯】12:00〜15:00(時間内は出入り自由です)
【会場】砂防会館5階(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分)
【講演会】★事前予約制★
13:45〜14:45 日野原重明先生バザー講演会(詳細は下記のお知らせ参照)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
【開催日】2011年11月8日(火)
【時間帯】12:00〜15:00(時間内は出入り自由です)
【会場】砂防会館5階(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分)
【講演会】★事前予約制★
13:45〜14:45 日野原重明先生バザー講演会(詳細は下記のお知らせ参照)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
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■日野原重明先生「百歳記念講演会」のお知らせ
開催日】2011年11月8日(火)
【時間帯】13:45〜14:45
【会場】砂防会館5階(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分)
【参加費】500円
【定員】80名(事前申し込み制,定員になり次第締め切り)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
【時間帯】13:45〜14:45
【会場】砂防会館5階(地下鉄・永田町駅下車徒歩4分)
【参加費】500円
【定員】80名(事前申し込み制,定員になり次第締め切り)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
■セミナーのお知らせ
テーマ】基礎から学ぶフィジカルアセスメント2011 (2)高次脳機能障害の理解とリハビリテーション
【日時】11月12日(土)10:00〜16:00
【会場】健康教育サービスセンター
〒102-0093 千代田区平河町2-7-5砂防会館5階
【定員】50名
【対象】看護師,訪問看護師,看護教員など
【参加費】7,000円(LPC会員5,000円)
【プログラム】
10:00-12:00 高次脳機能障害の症状の特徴(講師:粳間 剛/東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科助教,日本リハビリテーション医学会専門医,義肢装具等適合判定医)
13:00-16:00 高次脳機能障害のリハビリテーションについて(講師:石川 篤/東京慈恵会医科大学附属青戸病院リハビリテーション科作業療法士)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
【日時】11月12日(土)10:00〜16:00
【会場】健康教育サービスセンター
〒102-0093 千代田区平河町2-7-5砂防会館5階
【定員】50名
【対象】看護師,訪問看護師,看護教員など
【参加費】7,000円(LPC会員5,000円)
【プログラム】
10:00-12:00 高次脳機能障害の症状の特徴(講師:粳間 剛/東京慈恵会医科大学附属病院リハビリテーション科助教,日本リハビリテーション医学会専門医,義肢装具等適合判定医)
13:00-16:00 高次脳機能障害のリハビリテーションについて(講師:石川 篤/東京慈恵会医科大学附属青戸病院リハビリテーション科作業療法士)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm
メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp
■セミナーのお知らせ
【テーマ】 |
ダンス・アーティストから学ぶ援助者のためのワークショップ 感性を育む・からだを感じる ケアに生かすコミュニケーション〜からだをほぐして心をしなやかに |
【講師】 |
新井英夫(ダンス・アーティスト、体奏家) 吉野さつき(舞台芸術分野のワークショップコーディネーター) |
【日時】 | 2011年12月17日(土)10:00〜16:00 |
【会場】 | 剛堂会館(地下鉄・「麹町」駅下車1番出口徒歩4分、半蔵門線・南北線「永田町」駅より徒歩6分) |
【定員】 | 40名 |
【対象】 | 対人援助に携わる方(看護職者、福祉職者、介護職者、コメディカル、ボランティアなど) |
【参加費】 | 5,000円(LPC会員3,000円) |
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】 (財)ライフ・プランニング・センター TEL(03)3265-1907 FAX(03)3265-1909 〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階 HP:http://www.lpc.or.jp/health_edu/seminer.htm メールアドレス:lpc_seminar@lpc.or.jp |
- この連載に関するお問い合わせ先
-
◆「新老人の会」に関するお問い合わせ先◆
財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5F
TEL:03-3265-1907
FAX:03-3265-1909
ホームページ:http://www.lpc.or.jp/senior_soc/ -
◆日野原重明先生が顧問をつとめている「NPO法人医療教育情報センター」に関するお問い合わせ先◆
医療教育情報センター事務所
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-27-16 ハイシティ代々木303
TEL:03-5333-0083
FAX:03-5333-0084
ホームページ:http://www.c-mei.jp/