第79回 福沢諭吉のいう世話の意味
英語のケアと日本語のケア
終戦直後に“ケア物資”というものがアメリカから日本に大量に送られてきましたが,これとはまったく関係ありません。これはCooperative for American Remittances to Everywhere, Inc.の頭文字をとったもので、アメリカのボランティア団体が食べものや着るものを集めて日本に送ってくれたものです。
日本語のカタカナ英語には、そのまま発音して意味が通じる言葉と、日本でしか通じない言葉があります。日本では「ナイター」という言葉があたかも英語であるかのように使われていますが、「タイガースとジャイアンツのナイターがある」といっても、英語圏の人には通じません。というのは「ナイター」は英語ではなく、日本人が作った言葉だからで、英語では「ナイトゲーム」といいます。
また同じスペルでも、発音が違うものもあります。ジョン万次郎は14歳の時、今からおよそ160年前に、漁に出ていたところを遭難し、アメリカ人のホイットフィールド船長に助けられたのですが、その後、東海岸にあるフェアヘーブンという町の船長の家にホームステイして10年間教育を受け、24歳で日本に戻ってきました。日本が鎖国をしていた時代でしたからまっすぐ日本に帰ることができずに、琉球(沖縄)に密入国をして、厳しい取り調べののちにようやく帰国がかなったのですが、万次郎は初めて和英の辞書をつくりました。
万次郎のつくった辞書はたいへんよくできています。一例をあげますと、「ウォーター」と発音しても外国人にはなかなか通じませんが、「ワタ(綿)」と言うと通じると記しています。
ケアの意味
さて、「ケア」という言葉ですが、日本語でいえば「世話をする」という意味をもっています。「ケア」を「世話をする」という言葉で表したのは、150年前に慶応義塾をつくった福沢諭吉です。福沢諭吉は、自著『学問のすすめ』の中で以下のように記しています。
世話の字に二つの意味あり、一つは保護の義なり、一つは命令の義なり。保護とは人のことに付き傍より番をして防ぎ護り、或いは之に財物を与へ或いは之がために時を費し、其人をして利益をも面目をも失はしめざる様に世話することなり。命令とは人のために考えて、其人の身に便利ならんと思ふことを差図して不便利ならんと思ふことには意見を加え、心の丈を尽して忠告することにて、是亦世話の義なり。 (『学問のすすめ』(明治8年、1875年)より、『近代日本思想体系2福沢諭吉集』(筑摩書房)収載) |
世話(ケア)には二つの意味があって、それぞれ「保護」と「命令」だというのです。
一つ目の保護というのは、人のそばにつき添って守ったり、ものを与えたりその人のために時間を使ったりすることで、面目を失わせたりすることのないように世話すること、そしてもう一つは命令することで、その人のためを思って、心を尽くして意見したり忠告したりすることだといっています。つまり、その人のために保護をしたり、その人のためにアドバイスをすることが「ケア」という言葉には含まれているということです。
これは「ケア」の素晴らしい解釈です。また、『病床六尺』で有名な正岡子規は、やはり100年も前に「ケア」を「介抱」と表現し、それには精神的介抱と形式的(技術的)介抱とがあって、両者がバランスをとって初めて満足される介抱となると述べています。
一つ目の保護というのは、人のそばにつき添って守ったり、ものを与えたりその人のために時間を使ったりすることで、面目を失わせたりすることのないように世話すること、そしてもう一つは命令することで、その人のためを思って、心を尽くして意見したり忠告したりすることだといっています。つまり、その人のために保護をしたり、その人のためにアドバイスをすることが「ケア」という言葉には含まれているということです。
これは「ケア」の素晴らしい解釈です。また、『病床六尺』で有名な正岡子規は、やはり100年も前に「ケア」を「介抱」と表現し、それには精神的介抱と形式的(技術的)介抱とがあって、両者がバランスをとって初めて満足される介抱となると述べています。
最高のケア
さて、ケアには予防的なケア、救急的なケアなどさまざまなケアがありますが、ホスピスなどで提供されるターミナルケアには、“TLC=テンダー・ラビング・ケア”という特別なケアがあります。
「tender(テンダー)」とは、愛を形容する最高の表現で、“やわらかな”“敏感な”“感じやすい”という意味をもつ言葉です。ナースは、余生がいよいよあと4、5日というようなターミナルの患者さんやあるいはその家族に対してケアを提供しますが、そのときのナースはその患者と一緒に死んであげるような気持ちをもって接します。そのようにホスピスにおける心のこもった繊細なケアをテンダー・ラビング・ケアといいます。
ケアに求められるいちばん大切なのは心(ハート)です。心がそこにこめられてなければならないのです。
「tender(テンダー)」とは、愛を形容する最高の表現で、“やわらかな”“敏感な”“感じやすい”という意味をもつ言葉です。ナースは、余生がいよいよあと4、5日というようなターミナルの患者さんやあるいはその家族に対してケアを提供しますが、そのときのナースはその患者と一緒に死んであげるような気持ちをもって接します。そのようにホスピスにおける心のこもった繊細なケアをテンダー・ラビング・ケアといいます。
ケアに求められるいちばん大切なのは心(ハート)です。心がそこにこめられてなければならないのです。
(2011年4月4日)
■セミナーのお知らせ
【テーマ】日野原重明先生のご指導によるホームヘルパー2級養成研修講座――東京都認定訪問介護員養成研修講座2級課程
【開催期間】
(1)講義:4月26日(火)〜7月21日(木)週2回火・木
(2)実習:8月1日(月)〜9月30日(金)に期間中5日間
(3)修了式:10月6日(木)
【会場】〒102-0093 千代田区平河町2−7−5砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
地下鉄・永田町駅下車徒歩5分
【定員】20名
【参加費】LPC会員:92,400円,一般:96,400円
【対象】通学可能な方
【修了証明書】全課程を修了したかたには、訪問介護員2級修了証明証を交付します。
【教科書】(財)長寿社会開発センター発行 訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修テキスト2級課程を使用 6,800円
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265−1907 FAX(03)3265−1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
メールアドレス: lpc_seminar@lpc.or.jp
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【テーマ】財団設立記念講演会 想いをつなぐ生きかた
【プログラム】
講演「再び歩みはじめる時期」垣添忠生先生((財)日本対がん協会会長)
講演「道しるべとなる生きかた」 日野原重明先生((財)ライフ・プランニング・センター理事長・聖路加国際病院理事長)
音楽と歌「いのちの再生」「葉っぱのフレディ」出演の子どもたちによるパフォーマンス
【開催日時】2011年5月21日(土) 13:30 〜16:30
【会場】笹川記念会館ホール
港区三田3-12-12(地下鉄泉岳寺駅より徒歩7分)
【定員】800名
【参加費】1000円
【申し込み・問い合わせ先】(平日9〜17時)
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 「記念講演会」B係
電話(03)3265−1907(平日9:00〜17:00)
http://www.lpc.or.jp/index.htm
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音楽と歌「いのちの再生」「葉っぱのフレディ」出演の子どもたちによるパフォーマンス
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