第77回 あなたは健康ですか?
ビルを建てる土台
その後、トイスラー院長の懸命な募金活動によって1930年にようやく新病院の定礎式が執り行われることになりました。その建物は第二次世界大戦時の東京大空襲の折にも米軍の空爆を免れました。聖路加国際病院は爆撃しないというビラがB29機から撒かれたことから住民は、夜間には病院の地下室に避難してきたりしました。
私は京都大学を卒業後、1941年に東京の聖路加国際病院に赴任してきましたが、結核の後遺症があったので徴兵検査では丙種で、徴兵されないまま病院勤務をつづけていました。1945年になってからは毎日のように東京は爆撃を受け、聖路加にも大勢の怪我人ややけどをした人たちが運び込まれてきました。
戦争に負けてから2週間後に、聖路加は米国陸軍病院として接収されることになり、私たちはすぐに立ち退きを求められました。聖路加が爆撃されなかったのは、米国は、日本を占領したら聖路加を陸軍病院にしようという計画があったからです。聖路加はその後1956年までGHQの指令で摂取されていました。米国はその間、聖路加を朝鮮戦争の際の野戦病院として、アメリカ兵の治療を引き受けていました。
聖路加国際病院は占領されてから11年後にようやく返還されました。そして1982年、新病院建設計画が緒につくことになります。ところが築地はもともと埋立地であったために、高層建物を建築するにはしっかりした基礎工事が必要です。9階建ての病院と49階建てのオフィスビル、そして隣には38階建ての高級老人ホームをつくる計画です。そして、地震の際のことを考えて、オフィスビルと老人ホームは30階部分に橋をかけてつなげています。その橋は一方は固定していますが、もう一方には車輪とレールをつけておいて地震時には橋が揺れて落ちないようにしました。
埋立地を深く掘っていくと、岩盤に突き当たります。その岩に鉄骨とコンクリートを流し込んでしっかりした基礎をつくりその上に高層の建物が建てられたのです。
人が健やかであること
「健康」の“健”という文字は、聖路加の建物に似ています。つまり、「しっかりした基礎の上に建っている人間」が、「健やか」という状態を表しているということです。「健康」の“康”は、「心の平静さ、安らかさ」を表しています。思わぬアクシデントが起きても、興奮しないで、それを受け止めることを表しています。
「健康」は英語では“health”といいますが、このhealthという言葉は、もともとは“healthe”と表記していました。1600年代のアングロサクソンでは、ha lと表記していました。ha lから、全体(whole)とか、聖なる(holy)という言葉が派生しています。「健やかさ」の本来の意味は、ha lという言葉のなかにあるのです。現代では心や体、そしてスピリットの健康さを表しています。
WHOの定義では、「健康とは、完全に、身体、精神、及び社会的によい状態であることを意味し、単に病気でないとか、虚弱でないということではない」となっています。貧困であれば、健康も損なわれてしまうので、社会的によい状態であることが必要とされているのです。
ところが、10年ほど前から、そのWHOの定義にスピリチュアル(霊的)を加えるべきではないかという論議がされてきました。「霊的」というのは説明するのが難しいのですが、スピリチュアリティ(Spirituality)は人間の尊厳や、Quality of Life(生活の質)を考える上では欠くことのできない本質的なものであるとされています。私自身も「霊的」ということは、私たちが人間として存在する上では大切なものではないかと思っています。
ひとが健康であるためには、しっかりした建物のようにゆるぎない土台が必要ですが、その土台は医療技術や福祉の進歩、人権意識の変化、社会の高齢化、ストレスフルな社会化などの変化に対応していくことも大切なのです。
「健康」は英語では“health”といいますが、このhealthという言葉は、もともとは“healthe”と表記していました。1600年代のアングロサクソンでは、h
WHOの定義では、「健康とは、完全に、身体、精神、及び社会的によい状態であることを意味し、単に病気でないとか、虚弱でないということではない」となっています。貧困であれば、健康も損なわれてしまうので、社会的によい状態であることが必要とされているのです。
ところが、10年ほど前から、そのWHOの定義にスピリチュアル(霊的)を加えるべきではないかという論議がされてきました。「霊的」というのは説明するのが難しいのですが、スピリチュアリティ(Spirituality)は人間の尊厳や、Quality of Life(生活の質)を考える上では欠くことのできない本質的なものであるとされています。私自身も「霊的」ということは、私たちが人間として存在する上では大切なものではないかと思っています。
ひとが健康であるためには、しっかりした建物のようにゆるぎない土台が必要ですが、その土台は医療技術や福祉の進歩、人権意識の変化、社会の高齢化、ストレスフルな社会化などの変化に対応していくことも大切なのです。
(2011年2月24日)
■セミナーのお知らせ
【テーマ】新時代のナースに求められるフィジカルアセスメント――ナースのための看護セミナーin静岡
【プログラム】
「講演1 新時代のナースに求められるフィジカルアセスメント」日野原重明
「講演2 高齢者の脆弱化についてのアセスメント」道場信孝((財)ライフ・プランニング・センター教育研究部最高顧問)
「講演3 バイタルサインの異常からアセスメントできること」徳田安春(筑波大学附属病院水戸医療教育センター教授)
【開催日時】2011年3月12日(土)13:00〜16:30
【会場】アクトシティ浜松 展示イベントホール
静岡県浜松市中区板屋町111-1
【定員】500名
【対象】看護師,保健師,看護職者,看護教育者など
【参加費】5,000円
【主催・後援】主催:(財)ライフ・プランニング・センター,後援:(社)静岡県看護協会
【申し込み・問い合わせ先】(平日9〜17時)
TEL(03)3265−1907
財団法人ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
http://www.lpc.or.jp/index.htm
【プログラム】
「講演1 新時代のナースに求められるフィジカルアセスメント」日野原重明
「講演2 高齢者の脆弱化についてのアセスメント」道場信孝((財)ライフ・プランニング・センター教育研究部最高顧問)
「講演3 バイタルサインの異常からアセスメントできること」徳田安春(筑波大学附属病院水戸医療教育センター教授)
【開催日時】2011年3月12日(土)13:00〜16:30
【会場】アクトシティ浜松 展示イベントホール
静岡県浜松市中区板屋町111-1
【定員】500名
【対象】看護師,保健師,看護職者,看護教育者など
【参加費】5,000円
【主催・後援】主催:(財)ライフ・プランニング・センター,後援:(社)静岡県看護協会
【申し込み・問い合わせ先】(平日9〜17時)
TEL(03)3265−1907
財団法人ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
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■セミナーのお知らせ
【テーマ】医療と福祉の現場ではたらくボランティアのためのヘルスボランティア講座
【開催期間】2011年3月16日(水)・3月23日(水)
【会場】〒102-0093 千代田区平河町2−7−5砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
地下鉄・永田町駅下車徒歩5分
【定員】30名
【対象】一般(施設・地域でボランティアをされている方や、このテーマに関心のある方)
【参加費】5,000円(LPC会員3,000円)
【プログラム】
3月16日(水)
10:00〜12:30/13:15〜14:15 「傾聴とボランティア活動」(講師:水野修次郎・日本カウンセリング学会認定カウンセラー・認定スーパーバイザー,麗澤大学教授)
14:30〜15:30 「輝いて生きる・・・ボランティア活動がもたらす力」(講師:日野原重明・医学博士,(財)ライフ・プランニング・センター理事長)
3月23日(水)
10:00〜12:30/13:15〜14:15 「私は変わる、社会は変わる――ボランタリーライフの社会」(講師:興梠寛・昭和女子大学人間社会学部教授,日本ボランティア学習協会代表理事,世田谷ボランティア協会理事長)
14:30〜15:30 「ボランティア活動の基本の理解とLPCのボランティア活動」(講師:志村靖雄・(財)ライフ・プランニング・センターボランティアコーディネーター)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265−1907 FAX(03)3265−1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
メールアドレス: lpc_seminar@lpc.or.jp
【開催期間】2011年3月16日(水)・3月23日(水)
【会場】〒102-0093 千代田区平河町2−7−5砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
地下鉄・永田町駅下車徒歩5分
【定員】30名
【対象】一般(施設・地域でボランティアをされている方や、このテーマに関心のある方)
【参加費】5,000円(LPC会員3,000円)
【プログラム】
3月16日(水)
10:00〜12:30/13:15〜14:15 「傾聴とボランティア活動」(講師:水野修次郎・日本カウンセリング学会認定カウンセラー・認定スーパーバイザー,麗澤大学教授)
14:30〜15:30 「輝いて生きる・・・ボランティア活動がもたらす力」(講師:日野原重明・医学博士,(財)ライフ・プランニング・センター理事長)
3月23日(水)
10:00〜12:30/13:15〜14:15 「私は変わる、社会は変わる――ボランタリーライフの社会」(講師:興梠寛・昭和女子大学人間社会学部教授,日本ボランティア学習協会代表理事,世田谷ボランティア協会理事長)
14:30〜15:30 「ボランティア活動の基本の理解とLPCのボランティア活動」(講師:志村靖雄・(財)ライフ・プランニング・センターボランティアコーディネーター)
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265−1907 FAX(03)3265−1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
メールアドレス: lpc_seminar@lpc.or.jp
■セミナーのお知らせ
【テーマ】日野原重明先生のご指導によるホームヘルパー2級養成研修講座――東京都認定訪問介護員養成研修講座2級課程
【開催期間】
(1)講義:4月26日(火)〜7月21日(木)週2回火・木
(2)実習:8月1日(月)〜9月30日(金)に期間中5日間
(3)修了式:10月6日(木)
【会場】〒102-0093 千代田区平河町2−7−5砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
地下鉄・永田町駅下車徒歩5分
【定員】20名
【参加費】LPC会員:92,400円,一般:96,400円
【対象】通学可能な方
【修了証明書】全課程を修了したかたには、訪問介護員2級修了証明証を交付します。
【教科書】(財)長寿社会開発センター発行 訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修テキスト2級課程を使用 6,800円
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265−1907 FAX(03)3265−1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
メールアドレス: lpc_seminar@lpc.or.jp
【開催期間】
(1)講義:4月26日(火)〜7月21日(木)週2回火・木
(2)実習:8月1日(月)〜9月30日(金)に期間中5日間
(3)修了式:10月6日(木)
【会場】〒102-0093 千代田区平河町2−7−5砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 健康教育サービスセンター
地下鉄・永田町駅下車徒歩5分
【定員】20名
【参加費】LPC会員:92,400円,一般:96,400円
【対象】通学可能な方
【修了証明書】全課程を修了したかたには、訪問介護員2級修了証明証を交付します。
【教科書】(財)長寿社会開発センター発行 訪問介護員(ホームヘルパー)養成研修テキスト2級課程を使用 6,800円
【申込みおよび問合せ先(平日9:00〜17:30)】
(財)ライフ・プランニング・センター
TEL(03)3265−1907 FAX(03)3265−1909
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
メールアドレス: lpc_seminar@lpc.or.jp
■セミナーのお知らせ
【テーマ】財団設立記念講演会 想いをつなぐ生きかた
【プログラム】
講演「再び歩みはじめる時期」垣添忠生先生((財)日本対がん協会会長)
講演「道しるべとなる生きかた」 日野原重明先生((財)ライフ・プランニング・センター理事長・聖路加国際病院理事長)
音楽と歌「いのちの再生」「葉っぱのフレディ」出演の子どもたちによるパフォーマンス
【開催日時】2011年5月21日(土) 13:30 〜16:30
【会場】笹川記念会館ホール
港区三田3-12-12(地下鉄泉岳寺駅より徒歩7分)
【定員】800名
【参加費】1000円
【申し込み・問い合わせ先】(平日9〜17時)
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 「記念講演会」B係
電話(03)3265−1907(平日9:00〜17:00)
http://www.lpc.or.jp/index.htm
【プログラム】
講演「再び歩みはじめる時期」垣添忠生先生((財)日本対がん協会会長)
講演「道しるべとなる生きかた」 日野原重明先生((財)ライフ・プランニング・センター理事長・聖路加国際病院理事長)
音楽と歌「いのちの再生」「葉っぱのフレディ」出演の子どもたちによるパフォーマンス
【開催日時】2011年5月21日(土) 13:30 〜16:30
【会場】笹川記念会館ホール
港区三田3-12-12(地下鉄泉岳寺駅より徒歩7分)
【定員】800名
【参加費】1000円
【申し込み・問い合わせ先】(平日9〜17時)
〒102-0093 東京都千代田区平河町2−7−5 砂防会館5階
(財)ライフ・プランニング・センター 「記念講演会」B係
電話(03)3265−1907(平日9:00〜17:00)
http://www.lpc.or.jp/index.htm
- この連載に関するお問い合わせ先
-
◆「新老人の会」に関するお問い合わせ先◆
財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5F
TEL:03-3265-1907
FAX:03-3265-1909
ホームページ:http://www.lpc.or.jp/senior_soc/ -
◆日野原重明先生が顧問をつとめている「NPO法人医療教育情報センター」に関するお問い合わせ先◆
医療教育情報センター事務所
〒151-0053 東京都渋谷区代々木2-27-16 ハイシティ代々木303
TEL:03-5333-0083
FAX:03-5333-0084
ホームページ:http://www.c-mei.jp/