第64回 医師に求められる臨床能力
臨床医に求められる能力とは何か? 私は4つ挙げたいと思います。
第1は、病人を思いやる心「感性」です。病む人間を癒すには医師の感性とそれに基づいた技(アート)が不可欠です。
第2は、身体や疾患、自然の法則を科学(サイエンス)する心「知性」です。私が医師になってからの70余年間を顧みると、その間の医療技術の進歩は目覚ましいものがあります。聴診器、血圧計、心電図などから最近のペットCT 臨床に至るまで医療機器の開発はますますそのスピードをあげていますが、それらの先端医療技術に関する新しい知識を進んで身につけようとする知性は、臨床医には欠くことのできない能力の一つです。
第3は、問題を抽出して解決する能力です。病人を診るチャンスを与えられたら、まず病人の話に耳を傾け、診察して所見をとり、心身に潜む問題点を抽出します。それぞれの問題点を評価(アセスメント)し、重要度をランクづけて、上位の問題から一つずつ解決していきます。
第4は、意思疎通(コミュニケーション)と事務処理(マネジメント)の能力です。臨床の現場には、医師、患者さんと家族、看護師、臨床検査技師、放射線技師、事務など、多くの職種が集まっています。それら各種の専門職間の意思疎通を図り、スムーズな事務処理ができなければ、問題解決のレベル向上はとても達成できません。意思疎通は、医療スタッフの間ばかりでなく、患者さんやその家族とのコミュニケーションも重要であることも当然です。
第1は、病人を思いやる心「感性」です。病む人間を癒すには医師の感性とそれに基づいた技(アート)が不可欠です。
第2は、身体や疾患、自然の法則を科学(サイエンス)する心「知性」です。私が医師になってからの70余年間を顧みると、その間の医療技術の進歩は目覚ましいものがあります。聴診器、血圧計、心電図などから最近のペットCT 臨床に至るまで医療機器の開発はますますそのスピードをあげていますが、それらの先端医療技術に関する新しい知識を進んで身につけようとする知性は、臨床医には欠くことのできない能力の一つです。
第3は、問題を抽出して解決する能力です。病人を診るチャンスを与えられたら、まず病人の話に耳を傾け、診察して所見をとり、心身に潜む問題点を抽出します。それぞれの問題点を評価(アセスメント)し、重要度をランクづけて、上位の問題から一つずつ解決していきます。
第4は、意思疎通(コミュニケーション)と事務処理(マネジメント)の能力です。臨床の現場には、医師、患者さんと家族、看護師、臨床検査技師、放射線技師、事務など、多くの職種が集まっています。それら各種の専門職間の意思疎通を図り、スムーズな事務処理ができなければ、問題解決のレベル向上はとても達成できません。意思疎通は、医療スタッフの間ばかりでなく、患者さんやその家族とのコミュニケーションも重要であることも当然です。
ケア(care)とキュア(cure)
「面倒をみる」「世話をする」「手をかける」という意味のケアの対象は、病人に限らず、子どもであったり、草花であったり、自分自身であったりします。「ケア」とは、上から下を見下すような関係でなく、同じ目の高さでそばに寄り添い、相手の痛みや悲しみを分かち合うことがその出発点です。
一方、「キュア」は病気を治すことですが、現在でも完全に治すことのできる病気は一握りにすぎません。にもかかわらず、一部の医師たちは、医療技術を過信し、病気を征服した気になっているようにみえます。
そのような医師たちは、治療という名のもとに患者さんにただ痛みを辛抱させたり、延命と引きかえに患者さんの生活の質を著しく落としたり、患者さんの自尊心を傷つけたりすることすらあります。治療に専念するあまり、医師の目は患部にのみ注がれ、その病気の当事者である患者さんという人格にまで及ばないのです。
すでに述べたように、医師の感性に基づいたアート(技)・人間性こそが、病む人間を癒すことにつながります。一方、サイエンス・科学性は、疾患を治癒させること、キュアに貢献してきました。
ドイツには「ともに喜べば喜びは二倍に、ともに苦しめば苦しみは半分に」という美しいことわざがあります。これからの医療は、患者さんの心を慰めることを含めたケアを、キュアと並行して育んでいかなければなりません。
一方、「キュア」は病気を治すことですが、現在でも完全に治すことのできる病気は一握りにすぎません。にもかかわらず、一部の医師たちは、医療技術を過信し、病気を征服した気になっているようにみえます。
そのような医師たちは、治療という名のもとに患者さんにただ痛みを辛抱させたり、延命と引きかえに患者さんの生活の質を著しく落としたり、患者さんの自尊心を傷つけたりすることすらあります。治療に専念するあまり、医師の目は患部にのみ注がれ、その病気の当事者である患者さんという人格にまで及ばないのです。
すでに述べたように、医師の感性に基づいたアート(技)・人間性こそが、病む人間を癒すことにつながります。一方、サイエンス・科学性は、疾患を治癒させること、キュアに貢献してきました。
ドイツには「ともに喜べば喜びは二倍に、ともに苦しめば苦しみは半分に」という美しいことわざがあります。これからの医療は、患者さんの心を慰めることを含めたケアを、キュアと並行して育んでいかなければなりません。
(2010年5月6日)
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