第53回 平和のために―与えることで得るもの
戦争反対―医者としての思い
シュバイツァー博士の活動はそれのみにはとどまりません。ノーベル賞を受賞された6年後に、オスロ放送局からラジオで全世界に向けて核兵器放棄を訴えたのです。その遺志を受け継いで、ハーバード大学出身の医師たちが中心となって、核兵器廃絶の運動に取り組み、このグループもノーベル平和賞を受賞しています。
私も医学生時代はシュバイツァー博士のようになりたいと思ったりもしましたが、残念ながら結核のためにそれはかないませんでした。しかし、その精神は多くの人たちに広めたいと思っています。
さて、ドイツの哲学者カントには、「いかなる理由があっても戦争をしてはいけない」という論文があります。私は医師であるだけに、人間の身体の構造はみな同じであるということをよく知っています。どんな民族であっても、皮膚の色は違っていても、体の構造はみんな同じです。そういう共通ものをもつ人間同士が、命を壊すような戦争をしてはいけないのです。
平和のために私ができること
先頃、防衛庁が「防衛省」になりました。そしてまた、自衛隊が「自衛軍」になろうとしています。そうなれば空軍・陸軍・海軍という軍隊が、アメリカ軍と一緒になって、核兵器を盾に北朝鮮と向かい合います。日本の平和憲法は、国会で決議されて、国民の半分以上が賛成すると、変えられてしまうのです。せっかく軍備を廃止した日本が、また軍隊を持つことになってしまうのです。
命を奪い合うことは絶対にしてはいけません。日本は、軍隊を持たないことで、世界の模範国にならなくてはならないのです。
私は2000年9月に「新老人の会」を立ち上げました。病気があってもはつらつと生きている75歳以上の人を「新老人」と名付け、老人のイメージを一変させようという人たちの集まりです。60歳以上はジュニア会員、20歳以上をサポート会員として、それぞれ将来そのようになりたいというモデルを会員の中に見つけてもらおうというのです。会員数は現在8500人、今年中には1万人に、3〜4年後には5万人を目指しています。
このように「新老人の会」の運動を拡大して、「戦争をしない」という世論を作れば、日本の憲法を守ることができるはずです。
幸い1945年以来、日本は戦争に巻き込まれることもなく国民の生命は守られてきました。そのことに感謝するだけでなく、世界から戦争をなくすために私たちは何かできることがあるはずです。いつも国や政府に期待するのではなく、自分は日本のために世界のために何ができるかを考えて行動しようではありませんか。
命を奪い合うことは絶対にしてはいけません。日本は、軍隊を持たないことで、世界の模範国にならなくてはならないのです。
私は2000年9月に「新老人の会」を立ち上げました。病気があってもはつらつと生きている75歳以上の人を「新老人」と名付け、老人のイメージを一変させようという人たちの集まりです。60歳以上はジュニア会員、20歳以上をサポート会員として、それぞれ将来そのようになりたいというモデルを会員の中に見つけてもらおうというのです。会員数は現在8500人、今年中には1万人に、3〜4年後には5万人を目指しています。
このように「新老人の会」の運動を拡大して、「戦争をしない」という世論を作れば、日本の憲法を守ることができるはずです。
幸い1945年以来、日本は戦争に巻き込まれることもなく国民の生命は守られてきました。そのことに感謝するだけでなく、世界から戦争をなくすために私たちは何かできることがあるはずです。いつも国や政府に期待するのではなく、自分は日本のために世界のために何ができるかを考えて行動しようではありませんか。
得るより与えるは幸いなり
アウシュビッツ収容所での過酷な体験から生還したビクトール・フランクルは、ナチスの蛮行を後世の人たちに報告しました。
彼は言いました。「人に期待するのではなく、私が何を期待されているか考え、私が行動するという気持ちになっていれば、大きな苦難にも耐えられる。耐える人は、苦しんでいる人の気持ちが本当にわかって、側にいて手を貸すことができる」
私は大学2年になろうとするときに結核を患って1年間を寝たきりで過ごしました。そのために病む人の気持ちがとてもよくわかります。体験学習をしたのです。今、私が患者のつらさを敏感に察知できるのは、私が病んで苦しんだ経験があるからです。医療に従事する者は、死なない程度の病気はやったほうがいいのではないかと思います。病んでみないと、病気のつらさや病人の気持ちはわからないからです。
「ギブ・アンド・テイク」という言葉があります。しかし、先に「テイク(得る)」するのではなく、最初に「ギブ(与える)」でなければなりません。自分が先に与えることによって、得るものは自然と入ってくるのです。聖書には「得るより与えるは幸いなり」とあります。私は、これを生きる指針としています。
彼は言いました。「人に期待するのではなく、私が何を期待されているか考え、私が行動するという気持ちになっていれば、大きな苦難にも耐えられる。耐える人は、苦しんでいる人の気持ちが本当にわかって、側にいて手を貸すことができる」
私は大学2年になろうとするときに結核を患って1年間を寝たきりで過ごしました。そのために病む人の気持ちがとてもよくわかります。体験学習をしたのです。今、私が患者のつらさを敏感に察知できるのは、私が病んで苦しんだ経験があるからです。医療に従事する者は、死なない程度の病気はやったほうがいいのではないかと思います。病んでみないと、病気のつらさや病人の気持ちはわからないからです。
「ギブ・アンド・テイク」という言葉があります。しかし、先に「テイク(得る)」するのではなく、最初に「ギブ(与える)」でなければなりません。自分が先に与えることによって、得るものは自然と入ってくるのです。聖書には「得るより与えるは幸いなり」とあります。私は、これを生きる指針としています。
(2009年6月15日)
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