第50回 上手な医療の受け方(2)
無駄な検査で医療費も時間も無駄になる
日本では、医師にかかるとアメリカの2倍以上もの検査を受けることになります。しかも患者はいくつもの医療機関や診療科をはしごします。この先生に診てもらったけど心配だから今度はあの先生に、それでも心配だからまた違う先生にという具合です。こういうケースは、北海道や高知県その他の四国の各県などの人口の割に医療費が高い地域によくみられる傾向です。
アメリカでは、医師が患者に、これまで行った検査を聞いて、「これまでの検査データを持ってきてください」と言います。また、別の医師に紹介する場合にも、「この検査結果を持って行きなさい」と言います。そのデータを見て診断するわけです。それが、行った先の医療機関でいちいち血液や尿を採って検査をするのですから何倍もの費用がかかってしまうのです。
「とりあえず」検査の前によく診るのが本当の医者
「熱が38度にもなった……肺炎かしら?」それを診断するためには、まずナースや医師が詳しく患者さんから状況を聞きます。それを問診といいます。その後に、なぜ発熱したかを調べるために、レントゲンを撮ったり血液検査をしたりします。
「熱が高い」ということは症状の一つです。その原因の3割から4割は感染によるもの、2割はがんの進行のためといえるでしょう。また、心筋梗塞でも熱が出ます。それが何によるものかを鑑別するのが医師です。
心臓が苦しいと訴えてくる患者はまずしっかり問診すれば大体6割は診断ができます。診察をしてみると7割はわかります。レントゲンやエコーで検査をすれば8割は診断結果を出すことができます。それでもわからなければ、入院してもらって調べて9割までは診断をつけることができます。あとの1割はそれでもわかりません。
医師は忙しい上に、健康保険で診察料が決められていますから、なかなかじっくりと患者の話に耳を傾けようとはしません。とりあえずレントゲンや血液検査に患者を回してしまいます。そして、その結果から診断をつけようとします。臨床検査技師が「がんマーカーの数値に異常が出ていますよ」と言うと、医師はがんを発見するたるいろいろの検査を行います。
真の意味での臨床医は、人間ドックのように次々と検査をするのではなく、まず患者からよく話を聞いたうえで、「それではレントゲンを撮ってみましょう」などというものです。
「熱が高い」ということは症状の一つです。その原因の3割から4割は感染によるもの、2割はがんの進行のためといえるでしょう。また、心筋梗塞でも熱が出ます。それが何によるものかを鑑別するのが医師です。
心臓が苦しいと訴えてくる患者はまずしっかり問診すれば大体6割は診断ができます。診察をしてみると7割はわかります。レントゲンやエコーで検査をすれば8割は診断結果を出すことができます。それでもわからなければ、入院してもらって調べて9割までは診断をつけることができます。あとの1割はそれでもわかりません。
医師は忙しい上に、健康保険で診察料が決められていますから、なかなかじっくりと患者の話に耳を傾けようとはしません。とりあえずレントゲンや血液検査に患者を回してしまいます。そして、その結果から診断をつけようとします。臨床検査技師が「がんマーカーの数値に異常が出ていますよ」と言うと、医師はがんを発見するたるいろいろの検査を行います。
真の意味での臨床医は、人間ドックのように次々と検査をするのではなく、まず患者からよく話を聞いたうえで、「それではレントゲンを撮ってみましょう」などというものです。
検査の前にまず予防
日本では年間約33万人ががんで亡くなります。そのうち半分以上が肺がんですが、これを減らすには、たばこをやめるのが一番効果的です。
カナダでは、公的な肺がん発見のための胸部X線による検診を廃止しました。その代わりにたばこをやめさせる啓蒙活動をしたのですが、それによって肺がん患者は3分の1以下に減りました。検査ではなく、教育にお金をかけたのです。その結果、肺がんの検査や治療の総額よりもはるかに安上がりにすんだのです。
がんの中でも、一番治りにくいといわれるのが肺がんです。初期に自覚症状がないので発見は遅れがちになり、その上、治療しても再発することが多いからです。
禁煙をすれば、それだけで肺がんの予防になります。予防がなにより効果的なのです。禁煙運動を国家のプロジェクトにしなくてはいけません。それによって無駄な医療費をずいぶん減らすことができるからです。
私は、日本禁煙学会で、「禁煙が健康にどう影響するか」という講演をしましたが、たばこがたばこを吸わない家族やまわりの人にも被害がおよぼすことをもっと知ってほしいのです。
アメリカでは、喫煙者は成人の2割以下になりましたが、日本では成人男性の喫煙率は39.5%(平成20年全国たばこ喫煙者率調査)です。ピーク時の83.7%(昭和41年)から比べると60ポイントも減少していますが、成人女性の喫煙率は12.9%。また20代、30代では増加傾向にあります。これらは教育によって減らせるはずです。
医療費を減らすために医師の数を減らす、というのは間違いで、健康に関する教育を行うことによって医療費は減らすことができるのです。
カナダでは、公的な肺がん発見のための胸部X線による検診を廃止しました。その代わりにたばこをやめさせる啓蒙活動をしたのですが、それによって肺がん患者は3分の1以下に減りました。検査ではなく、教育にお金をかけたのです。その結果、肺がんの検査や治療の総額よりもはるかに安上がりにすんだのです。
がんの中でも、一番治りにくいといわれるのが肺がんです。初期に自覚症状がないので発見は遅れがちになり、その上、治療しても再発することが多いからです。
禁煙をすれば、それだけで肺がんの予防になります。予防がなにより効果的なのです。禁煙運動を国家のプロジェクトにしなくてはいけません。それによって無駄な医療費をずいぶん減らすことができるからです。
私は、日本禁煙学会で、「禁煙が健康にどう影響するか」という講演をしましたが、たばこがたばこを吸わない家族やまわりの人にも被害がおよぼすことをもっと知ってほしいのです。
アメリカでは、喫煙者は成人の2割以下になりましたが、日本では成人男性の喫煙率は39.5%(平成20年全国たばこ喫煙者率調査)です。ピーク時の83.7%(昭和41年)から比べると60ポイントも減少していますが、成人女性の喫煙率は12.9%。また20代、30代では増加傾向にあります。これらは教育によって減らせるはずです。
医療費を減らすために医師の数を減らす、というのは間違いで、健康に関する教育を行うことによって医療費は減らすことができるのです。
検査データは使い回して有効活用
あなたが受診するときには、あなたが以前に受けた検査データを次に診察してもらう医師のところに持って行ってください。
あなたが「他のお医者さんにみてもらいたいので検査データを貸してほしい」と頼んでも貸さないという医者がいれば、そのような医師はもう相手にすることはありません。医師のほうから、「よそへ行くのなら、1日待ってもらえれば紹介状を書きますよ」と言ってくれるようであれば、その人をあなたの主治医にするべきです。
こういうことは医師にしてみればなかなか時間と手間がかかるのですが、アメリカでは非常に詳しい紹介状を書いてくれます。日本でもそのような医師が増えることを望みます。それにはみなさんから医師へ働きかけることが必要なのです。
あなたが「他のお医者さんにみてもらいたいので検査データを貸してほしい」と頼んでも貸さないという医者がいれば、そのような医師はもう相手にすることはありません。医師のほうから、「よそへ行くのなら、1日待ってもらえれば紹介状を書きますよ」と言ってくれるようであれば、その人をあなたの主治医にするべきです。
こういうことは医師にしてみればなかなか時間と手間がかかるのですが、アメリカでは非常に詳しい紹介状を書いてくれます。日本でもそのような医師が増えることを望みます。それにはみなさんから医師へ働きかけることが必要なのです。
(2009年4月20日)
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財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5 砂防会館5F
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