第49回 上手な医療の受け方(1)
よい医療を受けるカギは情報収集力
まず、自宅の近くにあなたやあなたの家族が、いつも診てもらえるかかりつけ医をもつことです。
では、かかりつけ医にはどういう医師がよいのでしょうか。昔は子どもが多かったので、以前にかかってとてもよかったのでこの先生をとか、逆によくなかったから別の先生をというように自分の体験をもとに選ぶことができましたが、今はなかなかこのような体験的な情報を手にすることができません。どうしてもインターネットや雑誌等の情報をもとに探すことになります。
多量にあふれる情報からいかにうまく自分が求めているものを探し当てるかが、成功か失敗かを分けるカギになります。医療はまさに情報化のまっただ中にあるといえましょう。
「このときにはここへ」かかりつけ医を自分で選ぶ
では、どのようにして情報を探せば効果的な医療が受けられ、無駄な医療を受けないですむでしょうか。また、どうすれば急病の際などにあちこちの病院をたらい回しにされたりせずにすむでしょうか。
そのような場合には、みなさん自身がどの病院に行ったらいいかを決めなくてはいけません。ただ救急車を呼んでどこかの病院に運ばれていくに任せるのではなく、最初から「私がこうなったときはここへ行く」という関係をつけておけばいいのです。時に報道される「たらい回しの末に手遅れになった」というような不幸な事件は、病院側だけの問題ではなく、日頃からかかりつけ医を持っていなかったこと、あるいはそういう場合を想定していなかったことが問題なのです。
そして、かかりつけ医のレベルは誰が評価するか。公の評価はこれまでされたことはありません。ですから、みなさんやみなさんの家族が、自分たちで評価をすることです。
そのような場合には、みなさん自身がどの病院に行ったらいいかを決めなくてはいけません。ただ救急車を呼んでどこかの病院に運ばれていくに任せるのではなく、最初から「私がこうなったときはここへ行く」という関係をつけておけばいいのです。時に報道される「たらい回しの末に手遅れになった」というような不幸な事件は、病院側だけの問題ではなく、日頃からかかりつけ医を持っていなかったこと、あるいはそういう場合を想定していなかったことが問題なのです。
そして、かかりつけ医のレベルは誰が評価するか。公の評価はこれまでされたことはありません。ですから、みなさんやみなさんの家族が、自分たちで評価をすることです。
ふだんから自分の体調を把握しておく
私の体験したことですが、3月末に「血圧が高くて頭が痛い」といって受診した中年のご婦人がいましたが、よく話を聞いてみると、これまで医師国家試験に不合格だった息子の受験の結果が1週間後に発表されるので、心配のあまり血圧が上がっていたのだということがわかりました。このように本当の高血圧症ではないというようなことも多いのです。
外来で過去の病歴を聞くとき、このご婦人に「あなたには入学試験を受けるようなお子さんはいますか?」と聞いてみますと、「はい、います」と答えます。血圧を測ると上が180、下が100と確かに高いのです。でも、私は「すぐには薬を出しません。合格発表の2週間後にまた来てください」と言います。そのときには血圧が下がっていたりすることがあるからです。
血圧は時々刻々と変化するものです。日頃の生活などについてよく聞かないと、病気なのか一時的なものなのかわかりません。子どもの受験や夫の失業、夫婦げんかなどで血圧が20や30高くなるのは当たり前。走ると脈拍が上がるのと同じで、精神の緊張があると血圧も上がります。それは、高血圧症ではなく、ただの高血圧状態というものです。
ふだんから毎日自分の血圧を測っていれば、一時的に高くなったのだということがわかり、あわてずにすみます。
外来で過去の病歴を聞くとき、このご婦人に「あなたには入学試験を受けるようなお子さんはいますか?」と聞いてみますと、「はい、います」と答えます。血圧を測ると上が180、下が100と確かに高いのです。でも、私は「すぐには薬を出しません。合格発表の2週間後にまた来てください」と言います。そのときには血圧が下がっていたりすることがあるからです。
血圧は時々刻々と変化するものです。日頃の生活などについてよく聞かないと、病気なのか一時的なものなのかわかりません。子どもの受験や夫の失業、夫婦げんかなどで血圧が20や30高くなるのは当たり前。走ると脈拍が上がるのと同じで、精神の緊張があると血圧も上がります。それは、高血圧症ではなく、ただの高血圧状態というものです。
ふだんから毎日自分の血圧を測っていれば、一時的に高くなったのだということがわかり、あわてずにすみます。
自分の症状を自分で判断し、説明する力をもとう
同じ心臓病でも、狭心症と心筋梗塞では違います。狭心症は、発作が起こっても舌下にニトログリセリンを入れれば症状はおさまります。ところが、心筋梗塞は危険にさらされます。しかし症状は両方とも同じです。みなさんがその見分け方を知っていれば、または医師がふだんからその人の様子を心得ていれば出しい診断をつけることができます。
また、むかついたり吐いたりしたら胃腸の病気かといえば、必ずしもそうとは限りません。特に暴飲暴食していないのに、みぞおちが痛くて吐いた、冷や汗をかいている、というような場合は、心臓の病気である可能性が高いのです。
元気に会社に行ったのに急に倒れた、足の裏やわきの下にねっとりとした冷や汗をかく。これは、心筋梗塞や解離性大動脈瘤に多い症状です。私は電話でこのような症状を聞いたら、すぐに救急車で来院するように言います。電話のかけ方一つ、説明のしかた一つに、命が助かるかどうかがかかっているのです。
ただし、糖尿病や高齢の方は、痛みの感覚が鈍くなっていることがあります。心筋梗塞の場合でも胸の痛みがないこともありますが、それを医者が知らないために手遅れになることもよくあります。自分でそのような知識を持つことと同時に、日頃の体調をよく管理し、いつでも相談できるかかりつけ医をもつことが重要です。
自分の命を守るには、医者まかせにせず、自分で症状をみながら、どの医者にかかるか、自分で判断しなくてはならないのです。
また、むかついたり吐いたりしたら胃腸の病気かといえば、必ずしもそうとは限りません。特に暴飲暴食していないのに、みぞおちが痛くて吐いた、冷や汗をかいている、というような場合は、心臓の病気である可能性が高いのです。
元気に会社に行ったのに急に倒れた、足の裏やわきの下にねっとりとした冷や汗をかく。これは、心筋梗塞や解離性大動脈瘤に多い症状です。私は電話でこのような症状を聞いたら、すぐに救急車で来院するように言います。電話のかけ方一つ、説明のしかた一つに、命が助かるかどうかがかかっているのです。
ただし、糖尿病や高齢の方は、痛みの感覚が鈍くなっていることがあります。心筋梗塞の場合でも胸の痛みがないこともありますが、それを医者が知らないために手遅れになることもよくあります。自分でそのような知識を持つことと同時に、日頃の体調をよく管理し、いつでも相談できるかかりつけ医をもつことが重要です。
自分の命を守るには、医者まかせにせず、自分で症状をみながら、どの医者にかかるか、自分で判断しなくてはならないのです。
(2009年4月6日)
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