第46回 闘病生活で得た生涯の財産
97歳の現役医師―若いときは病弱でした
まさか、自分がこんなに長く医療に関わることができるとは思ってもみませんでした。若い時は「60歳くらいまで働ければいいな」と思っていたのですから。
というのは、私は若いときにかなり重篤な病気を体験しているからです。子どものときに急性腎炎で3か月間休学しましたが、それ以後も、医学部2年の上級のときに肺結核と結核性肋膜炎で1年間療養しました。当時は化学療法がなかったので、ただ安静のみで1年間大学を休学することになりました。
その後、聖路加国際病院に勤務中にも結核が再発したことがありました。そのときにはすでに結核の特効薬も開発され、結核はそれほど怖い病気ではなくなっていたのですが、アメリカ留学が決まっていたので困ったことになったと思ったのです。しかし、早速ストマイを自分で注射したり、アメリカに向かう船の中で自分でパスを内服して、「私は医師だから病気をきちんとコントロールすることができる」と主張して、なんとか上陸することができました。
つらい闘病生活から得た、かけがえのない宝物
ところで、若いときに病気をしたことは、私にとって決してマイナスになっていないことがわかりました。学生時代の1年間の療養生活では、8か月間はトイレにも行けないほどの重症でしたが、その経験から、病人やその家族の気持ちに共感し、心配や悩みなどがよく理解することができるようになりました。それが医師としての私に大いに役立っています。
また、10歳の時の急性腎炎のときの体験からは、お医者さんから大好きだった野球やサッカーがとめられ、つらく悲しい思いをしました。
でも、その病気をしたために、母から、スポーツをする代わりにピアノを習うことを勧められ、ピアノを弾いたり音楽を楽しむようになりました。それがあってこそ、私が今、日本音楽療法学会の会長として、患者さんの癒しのために医療の場に音楽を導入することに熱心に取り組むことになりました。医者にならなければ音楽家になっていたに違いないと思うほど、今でも音楽が好きです。
昨年、日本で最高のテナー歌手、佐野成宏(しげひろ)さんの音楽会を聴きに行きましたが、アンコールのときに、私が作詞作曲した「よき友をもちて」という曲をわざわざ歌ってくださり、私はとても感激しました。
この曲は、その4週間前にビクターから発売された私のCD(『日野原重明音楽作品集“さわやかに生きる”』)に収録されています。
また、10歳の時の急性腎炎のときの体験からは、お医者さんから大好きだった野球やサッカーがとめられ、つらく悲しい思いをしました。
でも、その病気をしたために、母から、スポーツをする代わりにピアノを習うことを勧められ、ピアノを弾いたり音楽を楽しむようになりました。それがあってこそ、私が今、日本音楽療法学会の会長として、患者さんの癒しのために医療の場に音楽を導入することに熱心に取り組むことになりました。医者にならなければ音楽家になっていたに違いないと思うほど、今でも音楽が好きです。
昨年、日本で最高のテナー歌手、佐野成宏(しげひろ)さんの音楽会を聴きに行きましたが、アンコールのときに、私が作詞作曲した「よき友をもちて」という曲をわざわざ歌ってくださり、私はとても感激しました。
この曲は、その4週間前にビクターから発売された私のCD(『日野原重明音楽作品集“さわやかに生きる”』)に収録されています。
逆境がプラスに転じて今がある
結核になったとき、「医者になるのはもうあきらめなければならないのか」と思ったりもしましたが、その後、健康を取り戻して医学部を卒業して医師への道を歩み始め、だんだんと医療の面白さがわかるようになってきました。そして、シュバイツァー博士のように医学をしながら音楽を楽しむことにしました。
第二次世界大戦のときは、結核の後遺症のために徴兵検査では丙種ということになり召集はされませんでしたが、その結果、私はずっと空襲下の東京にいて、聖路加国際病院で被災者の診療に従事することになったのです。
私は、自分の歩んできた経験から、どんな困難やつらい体験も無駄にはならないということ、それどころか、長い目で見ればそのような体験が大きな財産になると信じています。
第二次世界大戦のときは、結核の後遺症のために徴兵検査では丙種ということになり召集はされませんでしたが、その結果、私はずっと空襲下の東京にいて、聖路加国際病院で被災者の診療に従事することになったのです。
私は、自分の歩んできた経験から、どんな困難やつらい体験も無駄にはならないということ、それどころか、長い目で見ればそのような体験が大きな財産になると信じています。
(2009年2月17日)
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