第39回 「老」とは成熟すること
「長寿=危険」の解釈を改めよう
私も97歳になりますが、私の指導を受けたら危ないということでしょうか?(笑) そう思われたのでは困りますね。マスコミは、「長寿=危険」というように、言葉を間違って使っていると思います。
今、政府は「老人」を「高齢」と言い換えていますが、中国では「老」という漢字は「すぐれている」という意味をもっています。年齢にかかわらず、その人が円熟した技能や知識を持っているということを表しているのです。
老はただ老いることではありません。ですから、漢字の「老」を英語に訳すと、「オールド(古い、年老いた)」ではなく「エルダー(年長の、上位の)」となります。
65歳からは余生ではなく自分の時間
老人を65歳以上と決めたのは今から半世紀も前のことで、当時の平均寿命は68歳でした。65歳から先の3年間は残りの人生、つまり余生だったのです。ところが今の平均寿命は男性が79歳、女性が86歳というのですから、65歳から先にまだ20年もの人生がつづくのですからもはや余生とはいえません。つまり65歳からは自分の自由に使える時間となったのです。
65歳から与えられた時間は、現役として忙しい生活をしているときには気づきもしなかった才能、あるいはやりたいと思っていても時間の余裕がなくてできなかった能力を発揮する絶好のチャンスです。65歳をリタイアの時期とはとらえずに、それ以降は自分の能力を生かして活動していくのはいかがでしょうか。
年とともに身体が衰えていくのはいかんともしがたいことです。これを加齢による脆弱化といいます。しかし、足が痛くて歩くのがつらくなったら自動車に乗ればいいし、血圧が高いのであればそれを下げる薬を飲めばいい。近代医学の力を上手に活用するのです。75歳くらいまでは自由な生活を楽しむことができるでしょう。しかし、75歳といっても今の私の22年前ですよ(笑)。
65歳から与えられた時間は、現役として忙しい生活をしているときには気づきもしなかった才能、あるいはやりたいと思っていても時間の余裕がなくてできなかった能力を発揮する絶好のチャンスです。65歳をリタイアの時期とはとらえずに、それ以降は自分の能力を生かして活動していくのはいかがでしょうか。
年とともに身体が衰えていくのはいかんともしがたいことです。これを加齢による脆弱化といいます。しかし、足が痛くて歩くのがつらくなったら自動車に乗ればいいし、血圧が高いのであればそれを下げる薬を飲めばいい。近代医学の力を上手に活用するのです。75歳くらいまでは自由な生活を楽しむことができるでしょう。しかし、75歳といっても今の私の22年前ですよ(笑)。
80歳で病院長に就任
私は65歳で聖路加国際病院を辞めました。それまで医師には定年がなかったのですが、他の職員に合わせて定年制を設け、まず自分にそれを適用したのです。そして、看護大学の学長になりました。看護大学の学長として、日本で初めて看護学の修士や博士課程を作りました。
聖路加国際病院の新病院が完成したのは私が80歳のときでした。私は理事会から請われて、新病院の院長に就任しました。定年後に引き受けた仕事ですから、院長としての仕事をボランティアとしてやることにしたのです。
全室個室の病院というのは世界でここだけです。入院している患者さんがいよいよ亡くなるというときに、夫婦で抱き合って別れを惜しんだりする環境を提供するのには、大部屋ではよくありません。プライバシーの保てる個室にすべきだと私が提言したのです。今までにない発想です。
そうすると、それで経営的にうまくいくのかと問われることになりました。私は責任をとるためにも院長を務めた後に理事長になり、現在もそれをつづけています。私は大阪商人どころか近江商人になって、今も現役で病院経営に腕を振るっているところです。
聖路加国際病院の新病院が完成したのは私が80歳のときでした。私は理事会から請われて、新病院の院長に就任しました。定年後に引き受けた仕事ですから、院長としての仕事をボランティアとしてやることにしたのです。
全室個室の病院というのは世界でここだけです。入院している患者さんがいよいよ亡くなるというときに、夫婦で抱き合って別れを惜しんだりする環境を提供するのには、大部屋ではよくありません。プライバシーの保てる個室にすべきだと私が提言したのです。今までにない発想です。
そうすると、それで経営的にうまくいくのかと問われることになりました。私は責任をとるためにも院長を務めた後に理事長になり、現在もそれをつづけています。私は大阪商人どころか近江商人になって、今も現役で病院経営に腕を振るっているところです。
(2008年11月13日)
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