第37回 お金は生きているうち使ってこそ活きる
タンス預金は大きな潜在能力
去年の夏、ニューヨークに住む知人から、ジョン万次郎がホームステイした家が競売にかけられると聞きました。
1827(文政10)年生まれの万次郎は、14歳の時に海で漁をしていて遭難し、無人島へ流れついて、143日後に米国の捕鯨船に救助されました。利発な万次郎は船長に気に入られ、船長の故郷フェアヘーブンに伴われ、そこで初めて教育を受ける機会が与えられました。
万次郎は現地の小学生と一緒に小学校に通い、その後、バートレット・アカデミーで高等教育を受けました。しかし、望郷の思いにかられて10年後、彼が24歳のときに日本に帰国しましたが、日本で英語や造船の知識を生かし、通訳や教師として活躍しました。また、福沢諭吉や勝海舟とともに咸臨丸に乗り込み、遣米使節団の一員として渡米したり、坂本龍馬に影響を与えたりしたことから、幕末における影の重要人物といわれています。
日米の架け橋となった万次郎が住んだ家ですから、私はこの家をぜひ買い取って、日米友好の記念館として永久に保存しなければいけないと思いました。そこで、指揮者の小澤征爾さんや、ノーベル生理学・医学賞をとられた利根川進さん、作家の瀬戸内寂聴さん、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんなど30人に呼びかけて発起人会をつくり、募金を呼びかけました。
当初は1年間で8,000万円を集める予定だったのですが、わずか6か月で目標額を集めることができました。朝日新聞に連載している私のコラムにそのことを書いた反響が大きかったのです。
記事が載った4日後、札幌の80歳過ぎのご婦人と思われる方から、「些少ですがお役に立ちますように」といって小包が送られてきました。中にはなんと、100万円の束が5つ。本当にびっくりしました。
1827(文政10)年生まれの万次郎は、14歳の時に海で漁をしていて遭難し、無人島へ流れついて、143日後に米国の捕鯨船に救助されました。利発な万次郎は船長に気に入られ、船長の故郷フェアヘーブンに伴われ、そこで初めて教育を受ける機会が与えられました。
万次郎は現地の小学生と一緒に小学校に通い、その後、バートレット・アカデミーで高等教育を受けました。しかし、望郷の思いにかられて10年後、彼が24歳のときに日本に帰国しましたが、日本で英語や造船の知識を生かし、通訳や教師として活躍しました。また、福沢諭吉や勝海舟とともに咸臨丸に乗り込み、遣米使節団の一員として渡米したり、坂本龍馬に影響を与えたりしたことから、幕末における影の重要人物といわれています。
日米の架け橋となった万次郎が住んだ家ですから、私はこの家をぜひ買い取って、日米友好の記念館として永久に保存しなければいけないと思いました。そこで、指揮者の小澤征爾さんや、ノーベル生理学・医学賞をとられた利根川進さん、作家の瀬戸内寂聴さん、元国連難民高等弁務官の緒方貞子さんなど30人に呼びかけて発起人会をつくり、募金を呼びかけました。
当初は1年間で8,000万円を集める予定だったのですが、わずか6か月で目標額を集めることができました。朝日新聞に連載している私のコラムにそのことを書いた反響が大きかったのです。
記事が載った4日後、札幌の80歳過ぎのご婦人と思われる方から、「些少ですがお役に立ちますように」といって小包が送られてきました。中にはなんと、100万円の束が5つ。本当にびっくりしました。
日本のお金が死んでいる
アメリカ人は生活レベルは高いのですが、彼らは欲しいものはローンで買うのが当たり前のようです。ところが日本人は「貯金好き」という国民性のせいか、せっせと貯金に励みます。ところが今は銀行が危ないからというので、お年寄りはタンス預金をしているようです。そのお金がある調査では1千兆円以上に上るだろうというのです。日本人は大金を持っているのです。
私が首都移転の審議会に出たときのことです。首都を移転する費用として1,400兆円かかると聞きました。そこで私は、お年寄りの持っているお金を高率で貸してもらったらいいのではないかと提案したのですが、政治家はなかなかそういうことを承諾しません。
日本の潜在能力とでもいうべきお金が死蔵されています。それは自分のお金を上手に使ってもらおうというように考え方を転換させる指導を受けていないためです。
私が首都移転の審議会に出たときのことです。首都を移転する費用として1,400兆円かかると聞きました。そこで私は、お年寄りの持っているお金を高率で貸してもらったらいいのではないかと提案したのですが、政治家はなかなかそういうことを承諾しません。
日本の潜在能力とでもいうべきお金が死蔵されています。それは自分のお金を上手に使ってもらおうというように考え方を転換させる指導を受けていないためです。
財産は生きているうちに活用するべき
経済学とは生きた学問でなければなりません。私は、日本人は自分の持っているお金をいいことのために使うというように考えるべきだと思います。
生まれたときは裸のまま、勲章も土地も財産も持っていません。死ぬ時も何も持っては行けないのです。そうとわかっていても、人間は自分が稼いだものを手元から手放すことができません。手放すや否や、遺産相続をめぐって親子喧嘩、兄弟喧嘩が始まってしまいます。そのように自分の財産が不本意に扱われるのであれば、自分の生きているうちに有効に活用したいものです。
認知症にでもなると、タンス預金のありかさえもわからなくなったりします。ですから、早く使い方を考え、適切な使い方を指示しておくようにおすすめします。
生まれたときは裸のまま、勲章も土地も財産も持っていません。死ぬ時も何も持っては行けないのです。そうとわかっていても、人間は自分が稼いだものを手元から手放すことができません。手放すや否や、遺産相続をめぐって親子喧嘩、兄弟喧嘩が始まってしまいます。そのように自分の財産が不本意に扱われるのであれば、自分の生きているうちに有効に活用したいものです。
認知症にでもなると、タンス預金のありかさえもわからなくなったりします。ですから、早く使い方を考え、適切な使い方を指示しておくようにおすすめします。
(2008年10月6日)
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