第33回 よくある病気は開業医が知っている
「熱があるときにお風呂はダメ」は根拠なし
日本では昔から、熱があるときにお風呂に入るのはよくないといわれてきました。でも、私は入浴します。お風呂で汗を出してから湯冷めしないうちに寝ると、体がさっぱりして気持ちがいいし、翌朝は爽快な気分で目覚められることをこれまでの体験によって知っているからです。
西欧などでは、子どもが高熱を出すと解熱剤よりもまず水風呂に入れたりします。つまり、お風呂がよくないという根拠はないのです。
私は一昨年、アフリカのガボン共和国にあるシュバイツァー病院を訪れたのですが、訪問するにあたって黄熱病という感染症の予防注射を受けました。そのときにも、看護師から「今晩はお風呂に入らないでください」と言われましたが、それも意味のないことなので、いつも通りに入浴しました。
西欧などでは、子どもが高熱を出すと解熱剤よりもまず水風呂に入れたりします。つまり、お風呂がよくないという根拠はないのです。
私は一昨年、アフリカのガボン共和国にあるシュバイツァー病院を訪れたのですが、訪問するにあたって黄熱病という感染症の予防注射を受けました。そのときにも、看護師から「今晩はお風呂に入らないでください」と言われましたが、それも意味のないことなので、いつも通りに入浴しました。
医療の場では無意味な古い慣習がたくさん
人が亡くなった時に、遺体の肛門や鼻に綿を詰めるのは日本だけです。これも全く意味のないことです。だって、死んだら腸の動きも止まるのですから。
それなのに、明治時代に作られた看護の教科書には綿を詰めるよう書いてあり、それが今でもなおそう書き継がれているのです。そうすることに何か効果があるという実証はないのに、昔からしているからという理由だけで続いているのです。
そんな無駄なことに時間を費やすよりも、ご遺体にきれいにお化粧をしてさしあげたりするほうがよほどいいのではないかと思うのですが。
このように、昔から行われていることで、今の医学で正しいと証明されていないことは、他にもたくさんあります。
医療が進歩したといっても、まだまだ無駄なことをたくさんしていて、一方で大切なことをしていないというので問題になることがいくつもあります。
それなのに、明治時代に作られた看護の教科書には綿を詰めるよう書いてあり、それが今でもなおそう書き継がれているのです。そうすることに何か効果があるという実証はないのに、昔からしているからという理由だけで続いているのです。
そんな無駄なことに時間を費やすよりも、ご遺体にきれいにお化粧をしてさしあげたりするほうがよほどいいのではないかと思うのですが。
このように、昔から行われていることで、今の医学で正しいと証明されていないことは、他にもたくさんあります。
医療が進歩したといっても、まだまだ無駄なことをたくさんしていて、一方で大切なことをしていないというので問題になることがいくつもあります。
「よくある病気」がないがしろにされている
みなさんは、風邪をひいたら薬を飲みますね。でも、風邪を治す薬というのはないのです。
風邪で薬を飲むのは「風邪で熱があるけど仕事を休めないから、熱を下げるために」というような目的のためであって、それで風邪が治るわけではありません。
また、頭が痛いときに頭痛薬を飲むと痛みは治まりますが、頭痛を起こす原因となっている病気が治るわけではありません。
こんなに医学が進んでいても、人間が最も多くかかる、よくある病気の治療法は、いまだに見つかっていないのです。
医療の世界では、日常的によくある病気(Common Disease)については、実はあまり研究されていません。学会でも「まれな一例」というのが最も重要視されたりしています。めったにない病気、医者が一生お目にかからないような症例に関する研究報告を、多くの人がありがたがって聞きに来るのです。
「めったにないこと」を研究するのがえらい学者である、という風潮があるので、偉くなるためには「よくあること」は知らなくてもよい、ということになってしまっています。
こういった事態を招く原因となっている今までの医学教育は間違っていますから、私は医学教育の刷新をしたいと思っています。よくある病気をもっと研究するべきです。そうすればより多くの人を救うことができるはずですから。
風邪で薬を飲むのは「風邪で熱があるけど仕事を休めないから、熱を下げるために」というような目的のためであって、それで風邪が治るわけではありません。
また、頭が痛いときに頭痛薬を飲むと痛みは治まりますが、頭痛を起こす原因となっている病気が治るわけではありません。
こんなに医学が進んでいても、人間が最も多くかかる、よくある病気の治療法は、いまだに見つかっていないのです。
医療の世界では、日常的によくある病気(Common Disease)については、実はあまり研究されていません。学会でも「まれな一例」というのが最も重要視されたりしています。めったにない病気、医者が一生お目にかからないような症例に関する研究報告を、多くの人がありがたがって聞きに来るのです。
「めったにないこと」を研究するのがえらい学者である、という風潮があるので、偉くなるためには「よくあること」は知らなくてもよい、ということになってしまっています。
こういった事態を招く原因となっている今までの医学教育は間違っていますから、私は医学教育の刷新をしたいと思っています。よくある病気をもっと研究するべきです。そうすればより多くの人を救うことができるはずですから。
大学病院の医師が何でもできるわけではない
風邪や頭痛のようなよくある病気を扱うのは、主に開業医です。世間では、開業医よりも大学病院の教授がえらいと思われているようですが、私はそうは思いません。
開業医は病気の初期の患者さんを診察するので、症状を見てもレントゲンを撮っても、病名がまだわからないことも多いのです。
ところが、大学病院では、近所の開業医を経て、そこで完治しなかった患者さんが受診することが多いので、たいてい病気が進行してから診ます。その頃にはもう症状はすべて揃っているから、病名をズバリ診断できるのは当たり前なのです。
だから、大学教授が開業医のもとを訪れる患者をみても、何もできないこともあります。はしかの子どもをみても「これは、はしかだ」という診断さえできない。小児科のナースや、子どもを何人か育てたお母さんの方がよほどよくわかっているということも多いのです。
つまり、「大学病院だから、有名な医者に診てもらったから大丈夫」とは限らないのです。医者を信頼するのはけっこうなことですが、自分に対して行われている医療行為にはどんな意味があるのか、時には疑い、自分の頭で考えてみることも必要だと思います。
開業医は病気の初期の患者さんを診察するので、症状を見てもレントゲンを撮っても、病名がまだわからないことも多いのです。
ところが、大学病院では、近所の開業医を経て、そこで完治しなかった患者さんが受診することが多いので、たいてい病気が進行してから診ます。その頃にはもう症状はすべて揃っているから、病名をズバリ診断できるのは当たり前なのです。
だから、大学教授が開業医のもとを訪れる患者をみても、何もできないこともあります。はしかの子どもをみても「これは、はしかだ」という診断さえできない。小児科のナースや、子どもを何人か育てたお母さんの方がよほどよくわかっているということも多いのです。
つまり、「大学病院だから、有名な医者に診てもらったから大丈夫」とは限らないのです。医者を信頼するのはけっこうなことですが、自分に対して行われている医療行為にはどんな意味があるのか、時には疑い、自分の頭で考えてみることも必要だと思います。
(2008年8月4日)
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