第24回 患者中心の病気の予防と医療(2)
二次予防的機能の限界
ここでは、日本における人間ドック、今日いわれる総合健診の歩みを振り返ってみます。今から52年前、1954年に一週間ドックが聖路加国際病院と現在の国立国際医療センターで始められました。そしてその4年後にはそれが三日ドックとして行われるようになりました。
1964年、米国のカイザー財団によって、多項目の検査を自動的に行うことができるオートアナライザー(流路型自動化学分析装置)が開発されました。この装置は、検査結果がすぐにその場で出るという画期的なものでした。その日本版が1970年に、東京の東芝健診センターで最初に実施され、名古屋その他に広がっていきました。
そして1974年には一泊人間ドックが日本病院会と健保連合会の話し合いでできました。この間に随分大勢の方々が健診を受けて、2004年にはその数は294万人に達しました。実に日本の人口の400分の1の人たちが健診を受けているということです。
しかし、それを受けた人が400分の1ですから、まだ受けていない399人の人にもっとこれを広げるためには、そのようなモチベーションを感じさせるようなドックなのか、ただ受けているというだけの受動的なものなのかというのが非常に大きな問題であるということです。今の日本の経済状態では、受診者が多くなるということは望めないわけですから、その内容をもっと充実させたものにするように考え直さなくてはならないというわけです。
1964年、米国のカイザー財団によって、多項目の検査を自動的に行うことができるオートアナライザー(流路型自動化学分析装置)が開発されました。この装置は、検査結果がすぐにその場で出るという画期的なものでした。その日本版が1970年に、東京の東芝健診センターで最初に実施され、名古屋その他に広がっていきました。
そして1974年には一泊人間ドックが日本病院会と健保連合会の話し合いでできました。この間に随分大勢の方々が健診を受けて、2004年にはその数は294万人に達しました。実に日本の人口の400分の1の人たちが健診を受けているということです。
しかし、それを受けた人が400分の1ですから、まだ受けていない399人の人にもっとこれを広げるためには、そのようなモチベーションを感じさせるようなドックなのか、ただ受けているというだけの受動的なものなのかというのが非常に大きな問題であるということです。今の日本の経済状態では、受診者が多くなるということは望めないわけですから、その内容をもっと充実させたものにするように考え直さなくてはならないというわけです。
人間ドックの功罪
今までの健診をみますと、なるべく多項目の検査数にして、病気の早期発見をしようという二次予防がずっと現在まで続いています。つまり、病気の早期発見と、今もっている病気の悪化防止と、そのための生活指導に重点が置かれているのですが、これでは人間ドックとしては行き詰まりになるというのは明白です。
疾病の早期発見だけではなく、今のような生活習慣を続けると、何年か先には何らかの異常が生じるということをはっきりと学問的に実証する。リスクファクターを明確に同定して、それを警告し、そうならないように生活習慣を動機づけするという予知医学の方向を辿らなければなりません。
米国では1965年にすでに提起されておりますし、聖マリアンナ医科大学の吉田勝美先生などが最も早く関心を示され、ライフ・プランニング・センターでも20年前からこれに取り組んできています。
一次予防が何よりも必要であって、二次予防ももちろん大事なものとして考える。それと同時に、自身の健康のためにどのような行動を選択すべきかを当事者が主体的に選びとり、それに参加していくという動機づけを重視したものにしなくてはなりません。そして、一人ひとりが、ただ延命だけではない自分の命のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を考え、QOLの高い健康年齢を目標とするためにはどうしたらよいかという健康診断、あるいは早期治療にいかなくてはなりません。
私は「現在の日本の人間ドックには、メリットとデメリットが相半ばする」と言いたいのです。この表には総計20項目を提示してありますが、メリットは6つあって、デメリットは14ということになります。
疾病の早期発見だけではなく、今のような生活習慣を続けると、何年か先には何らかの異常が生じるということをはっきりと学問的に実証する。リスクファクターを明確に同定して、それを警告し、そうならないように生活習慣を動機づけするという予知医学の方向を辿らなければなりません。
米国では1965年にすでに提起されておりますし、聖マリアンナ医科大学の吉田勝美先生などが最も早く関心を示され、ライフ・プランニング・センターでも20年前からこれに取り組んできています。
一次予防が何よりも必要であって、二次予防ももちろん大事なものとして考える。それと同時に、自身の健康のためにどのような行動を選択すべきかを当事者が主体的に選びとり、それに参加していくという動機づけを重視したものにしなくてはなりません。そして、一人ひとりが、ただ延命だけではない自分の命のクオリティ・オブ・ライフ(QOL)を考え、QOLの高い健康年齢を目標とするためにはどうしたらよいかという健康診断、あるいは早期治療にいかなくてはなりません。
私は「現在の日本の人間ドックには、メリットとデメリットが相半ばする」と言いたいのです。この表には総計20項目を提示してありますが、メリットは6つあって、デメリットは14ということになります。
表 人間ドックの功罪
功(Merit) | 罪(Demerit) |
1.無自覚疾患発見 2.早期発見・早期治療 3.短時間での診断 4.多臓器の効果的スクリーニング 5.多数の受診者処理 6.収益性に富む自由診療 | 1.検査の軽い所見(データ)の過重視 2.自覚症や主訴の軽視 3.レディーメイドの基準値による判断 4.治療不要のデータの見せびらかし 5.心電図、エコーその他の画像診断の見落とし 6.心電図、エコーその他の画像所見の誤読 7.検査材料の採取・保存エラー 8.受診者の年齢を無視したデータ評価 9.断片的なデータによる診断(例・任意血圧) 10.検査室の精度管理不良 11.各専門学会の判定基準の変動 12.過剰な再検または要精検 13.病人の製造(不安神経症など) 14.医療費のむだな増加 |
人間ドックは、病気をつくり、医療費を増やすことに寄与しているなどといわれるものであってはなりません。人間ドックは、医療費を下げることに貢献しなければ意味がないのです。
検査結果から、平均値よりも高い数値だから治療を受けたほうがいいと指導する医師が少なくありませんが、20歳の人も、50歳の人も、80歳の人も、みな同一数値で測ろうとするのは、100mを走るのに20歳の人と80歳の人が同じスピードでなければならないというのと同じことで、このような間違った医学が、人間ドックの行き方も間違った方向にもってきたのではないかと思います。
検査結果から、平均値よりも高い数値だから治療を受けたほうがいいと指導する医師が少なくありませんが、20歳の人も、50歳の人も、80歳の人も、みな同一数値で測ろうとするのは、100mを走るのに20歳の人と80歳の人が同じスピードでなければならないというのと同じことで、このような間違った医学が、人間ドックの行き方も間違った方向にもってきたのではないかと思います。
(2008年3月17日)
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