第17回 老人の未知の能力を育む
戻ってくる自由な時間
ゼロ歳から20歳(はたち)までは人間の成長期です。この年代は、社会人として企業に就職したり、あるいは役所に入ったり、そしてまた家庭を持ったりして、社会的な人間として活動している時期です。家庭を預かる人は子育てや忙しい夫を支えて忙しい日々を送りますし、外に出て働く人は、会社や役所などのために精一杯頑張っています。
この年代の人たちは、決められたことや命じられたノルマをこなすのに精一杯で、毎日の時間を自分のためだけに使うことはできません。
ところが、子どもたちを巣立たせ、会社や役所でも定年を迎える60歳か65歳頃にもなると、それから先は、自分に与えられた時間を自分のためだけに自由に使うことが許されてきます。これまでは夫のためあるいは子どもたちのために、自由に自分の時間を使うことができなかったけれど、これからは「私はきょう講演会に行って来ますから、留守をよろしくお願いしますね」などということもできるようになります。
ご主人はご主人のしたいことをやればいいし、奥さんもまたご自分のやりたいことをすればいい。夫と妻がそれぞれ遠慮なくものが言えるようになるのが齢を重ねるということです。子どものときや学生時代には自分のことだけやればよかったし、成人してからは会社や家庭のことで時間をとられてなかなかほかのことをやる余裕をもつことができません。
しかし、60歳を過ぎる頃からは、また自分のために使える時間が戻ってきます。これを「第三の人生」と呼びましょう。それなのに、せっかくの自由な時間をただ何もせずにぼんやりと過ごすのでは頭がボケてしまうばかりか、何とももったいない人生の過ごし方といえるのではないでしょうか。
この年代の人たちは、決められたことや命じられたノルマをこなすのに精一杯で、毎日の時間を自分のためだけに使うことはできません。
ところが、子どもたちを巣立たせ、会社や役所でも定年を迎える60歳か65歳頃にもなると、それから先は、自分に与えられた時間を自分のためだけに自由に使うことが許されてきます。これまでは夫のためあるいは子どもたちのために、自由に自分の時間を使うことができなかったけれど、これからは「私はきょう講演会に行って来ますから、留守をよろしくお願いしますね」などということもできるようになります。
ご主人はご主人のしたいことをやればいいし、奥さんもまたご自分のやりたいことをすればいい。夫と妻がそれぞれ遠慮なくものが言えるようになるのが齢を重ねるということです。子どものときや学生時代には自分のことだけやればよかったし、成人してからは会社や家庭のことで時間をとられてなかなかほかのことをやる余裕をもつことができません。
しかし、60歳を過ぎる頃からは、また自分のために使える時間が戻ってきます。これを「第三の人生」と呼びましょう。それなのに、せっかくの自由な時間をただ何もせずにぼんやりと過ごすのでは頭がボケてしまうばかりか、何とももったいない人生の過ごし方といえるのではないでしょうか。
90歳から絵を描く
皆さんの中には眠っている遺伝子がたくさんあります。その遺伝子には、動脈硬化や認知症を引き起こすよくない遺伝子もあるかもしれませんが、絵が上手になるとか、歌を歌える、俳句を作るなどというように、これまで使ったことのない遺伝子がまだまだたくさんあります。
ただ、これまでの生活では、そのよい遺伝子を使って、その能力を生かす時間がなかったということです。
ですから、年をとってから、時間の余裕ができたときこそ、自分の未知な部分に挑戦してみる勇気を持つことです。きっと自分の中に新たな才能を発見して、至上の喜びを感じることができるでしょう。「第三の人生」というのは、ただ老いていくというのではなく、創造的でクリエイティブな新しい自分を開発する人生だということです。
私の診ている患者さんに、90歳で脳卒中で倒れて左手が麻痺した方がいます。それまでは、温泉に行ったりして生活を楽しんでおられたのですが、倒れた後は寝ていることが多くなりました。そこで、お嫁さんが「動くほうの右手を使って絵を描いてみたらどうかしら」と、花や果物、人形など、身近にあるものを絵に描くことをすすめてみました。
すると、それまで絵を描くことはおろか、展覧会に行くことにもあまり関心を示さなかったのに、毎日毎日絵を描いているうち、わずか1年で『月刊美術』という美術の専門誌に絵が載るほど上達したのです。その人が若くして画家を志していたならば、きっとすごい絵描きになったのではないでしょうか。
ただ、これまでの生活では、そのよい遺伝子を使って、その能力を生かす時間がなかったということです。
ですから、年をとってから、時間の余裕ができたときこそ、自分の未知な部分に挑戦してみる勇気を持つことです。きっと自分の中に新たな才能を発見して、至上の喜びを感じることができるでしょう。「第三の人生」というのは、ただ老いていくというのではなく、創造的でクリエイティブな新しい自分を開発する人生だということです。
私の診ている患者さんに、90歳で脳卒中で倒れて左手が麻痺した方がいます。それまでは、温泉に行ったりして生活を楽しんでおられたのですが、倒れた後は寝ていることが多くなりました。そこで、お嫁さんが「動くほうの右手を使って絵を描いてみたらどうかしら」と、花や果物、人形など、身近にあるものを絵に描くことをすすめてみました。
すると、それまで絵を描くことはおろか、展覧会に行くことにもあまり関心を示さなかったのに、毎日毎日絵を描いているうち、わずか1年で『月刊美術』という美術の専門誌に絵が載るほど上達したのです。その人が若くして画家を志していたならば、きっとすごい絵描きになったのではないでしょうか。
新しい仲間を作りましょう
そういうときに、一人で絵を描こうとしても億劫でなかなかやりにくいかもしれませんが、仲間と一緒にやるようにすると、楽しい上に上達もします。
私が会長をしている「新老人の会」でもフラダンスのサークルがありますが、これまでダンスやフラダンスなどをしたことがないという人でも、仲間と一緒にやると、だんだん上手になって、今ではビックリするほど上達ました。「新老人の会」のフラダンスサークルは今、とても華やかに活動しています。
「新老人の会」では、本部のサークルは「俳句の会」「朗読の会」「数学を愉しむ会」「さっそうクラブ」など、さまざまのサークルが28もあって、それぞれ活発に活動しています。
「初心者のためのパソコン」クラスを終えた人たちは、孫にコンピュータを教えるようになった人もいます。お孫さんからは、「おばあちゃんは、すごいな。僕ができないことを全部教えてくれる」と、老人を尊敬するようになります。そしてコンピュータを一緒に買いに行ったならば、「おじいちゃんは、値切るのがうまいなあ」と、また別の尊敬を勝ち取ることになるかもしれません。
私が会長をしている「新老人の会」でもフラダンスのサークルがありますが、これまでダンスやフラダンスなどをしたことがないという人でも、仲間と一緒にやると、だんだん上手になって、今ではビックリするほど上達ました。「新老人の会」のフラダンスサークルは今、とても華やかに活動しています。
「新老人の会」では、本部のサークルは「俳句の会」「朗読の会」「数学を愉しむ会」「さっそうクラブ」など、さまざまのサークルが28もあって、それぞれ活発に活動しています。
「初心者のためのパソコン」クラスを終えた人たちは、孫にコンピュータを教えるようになった人もいます。お孫さんからは、「おばあちゃんは、すごいな。僕ができないことを全部教えてくれる」と、老人を尊敬するようになります。そしてコンピュータを一緒に買いに行ったならば、「おじいちゃんは、値切るのがうまいなあ」と、また別の尊敬を勝ち取ることになるかもしれません。
能力をアピールすること
老人は子どもに尊敬される存在であってほしいと思います。老人はいつも子どもたちの目を意識して、背筋を伸ばして歩幅を広くとり颯爽と歩くように心がける、そしていつも生き生きと活動している姿を子どもに見せるのは非常にいいことです。
老人が若い人と親しく接するのと同時に、若い人も喜んで老人に教えを請うようにするためには、若い人たちに自分が齢をとったらこういう老人になりたいというモデルを老人自身が示すようにすることが大事なことではないかと思います。
日本人の平均寿命は世界一で、誰でも平均まで生きるとすれば80歳を超えることになります。自分たちにせっかく与えられた「第三の人生」を生きがいのある充実したものにしたいと思います。
老人が若い人と親しく接するのと同時に、若い人も喜んで老人に教えを請うようにするためには、若い人たちに自分が齢をとったらこういう老人になりたいというモデルを老人自身が示すようにすることが大事なことではないかと思います。
日本人の平均寿命は世界一で、誰でも平均まで生きるとすれば80歳を超えることになります。自分たちにせっかく与えられた「第三の人生」を生きがいのある充実したものにしたいと思います。
(2007年12月3日)
- 「新老人の会」に関するお問い合わせ先
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財団法人ライフ・プランニング・センター「新老人の会」事業部
〒102-0093 東京都千代田区平河町2-7-5砂防会館5F
TEL:03-3265-1907
FAX:03-3265-1909
ホームページ:http://www.lpc.or.jp/senior_soc/index.htm