第16回 老人のための健康診査の検査値について考える(4)
採取条件と年齢によって異なる検査値
老人の腎機能検査の一つであるクレアチニン−クリアランス値(血液の血漿中のクレスチニンが尿中にどのくらい排泄されたかを表す指標)を調べたりするとき、老人が自分で努力して尿を排泄したとしても、排尿が困難であったり、残尿があったりする場合にはその尿量は正確とはいえません。
老人のクレアチニン−クリアランス値が、成人の正常値より低下しているという報告を医師が受けた場合には、医師はみずから、または看護師から、または当人に採取条件を聞いて確かめるなどして、できるだけ正しい条件で得られたデータについて評価すべきです。
また、呼吸機能試験においては、肺活量やり一秒量(最初の一秒間に吐き出された空気量)を調べるとき、老人がどの程度に要領よく、あるいは努力してそれがなされたかが、検査技師によりチェックされ、それが医師に報告されなければなりません。
特別な肺疾患がないにもかかわらず、毎年行っている肺機能テストで今回は低下したというリポートを受けたとします。医師は、老人がそのテストを受けた状況を確認した上で評価しなくてはなりません。得られた値をこれまでの経過を考慮に入れなかったり、またはそのまま成人の正常値と比べて評価したりすることは大きな誤りです。
このように被験者の受診の諸条件や年齢、あるいはデータの利用の目的によって、個人ごとに評価や生活指導への適用は異なってくるということを考えるべきです。
気持ちの上で健康で豊かな生活を
老人に必要なのは、老人が自立して社会的に生きていくのに支障のないといえる健康評価と指導です。これを医師は心得て、その人に役立つ評価と指導を行うべきであると思うのです。老人の健康評価には、いたずらに成人の正常値や正常パターンにとらわれてはならないということを私の意見としたいと思います。
老人は、認容値でもって健康度を評価し、からだに悪い影響を与えない限り、なるべく行動制限を少なくし、社会生活を十分に楽しみ、生きがいをもって生活するように指導すれば、老人の廃用症候群の出現も先送りにすることができますし、気持ちの上で健康で豊かな生活を送れるものと思います。
老人は、認容値でもって健康度を評価し、からだに悪い影響を与えない限り、なるべく行動制限を少なくし、社会生活を十分に楽しみ、生きがいをもって生活するように指導すれば、老人の廃用症候群の出現も先送りにすることができますし、気持ちの上で健康で豊かな生活を送れるものと思います。
(2007年11月19日)
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