第4回 人生後半は新しいことをしてみよう(4)
認知症の人が歌う
私が診察をしてみました。「僕が来たよ」と言ったら、高等学校の同窓生なので、僕の顔は知っているようでした。「君ね、学校の校歌を覚えている?」と聞いてみました。私は、高等学校時代は学生寮に入らなかったので校歌を歌わなかったから、あまりよく覚えていないのです。しかし、彼はずっと学生寮に入っていました。
自分の名前は言えない、字が書けないのにもかかわらず、私が「1、2、3、ハイ、おかのうえ〜」と歌いましたら、彼は手拍子を叩き始めました。4小節までいくと、彼は「つーきこーそかーかーれ、よーしだーやまー、フレー、三高、フレー、三高、フレー、フレー、フレー」と歌い始めたのです。そのフレーズとメロディは覚えていたのですよ。
私がきちんと覚えていない校歌を、自分の名前も分からない、奥さんにも「あなたは誰?」といっているのに、歌は歌えるのです。しかも、音痴ではないのです。
利根川進さんの脳の研究
歌を歌うということは、歌を記憶していることを意味しています。「海馬」という脳の内側の奥にある器官が記憶を司っています。記憶障害があるということは、その大脳の中枢が損傷されて、記憶できなくなっているということは判明しているのですが、なぜ記憶ができなくなっているかは、今、世界中がこぞって研究しているところです。
その研究者の一人が、利根川進さんというノーベル医学・生理学賞を受賞している免疫学者です。この方は京大理学部を卒業してから免疫の研究をした人です。医学部の出身ではないのですよ。京大医学部は110年間の歴史があるのですが、ここの出身者でノーベル医学・生理学賞を誰ももらっていないし、日本全体でも医学をおさめた人は誰もノーベル医学・生理学賞を受賞していません。
利根川さんは、医学部で自分の研究をしたいと申し出たけど、日本の大学の医学部はどこも受け入れてくれないというので、外国に行った。そこでの研究成果でノーベル賞を得たわけです。
ところが、利根川さんは、今は免疫の研究ではなく、別のテーマに取り組んでいるというのです。私が2007年の暮れにボストンの彼の研究所を訪れた際に、「今は何を研究しているのですが」と私が訊くと、「記憶はなぜできるかを調べているのです」という答えでした。「マウスを何万匹も養って、脳の遺伝子を組み替えたり、脳に穴を開けて電気刺激をするという研究で、そのためのマウスの予算だけで1億円かかる。もう4〜5年研究を続けるときっと解明できるようになる。それまでまだやりたいな」と言うのです。
その記憶の研究では、マウスに様々なことを記憶させたあと、ある部分を障害してしまうと、巣の場所やエサがある場所がわからなくなる。それを訓練して、場所を分かるようにする。またマウスが、どこを痛めたらどう反応するかという研究だということです。
その研究者の一人が、利根川進さんというノーベル医学・生理学賞を受賞している免疫学者です。この方は京大理学部を卒業してから免疫の研究をした人です。医学部の出身ではないのですよ。京大医学部は110年間の歴史があるのですが、ここの出身者でノーベル医学・生理学賞を誰ももらっていないし、日本全体でも医学をおさめた人は誰もノーベル医学・生理学賞を受賞していません。
利根川さんは、医学部で自分の研究をしたいと申し出たけど、日本の大学の医学部はどこも受け入れてくれないというので、外国に行った。そこでの研究成果でノーベル賞を得たわけです。
ところが、利根川さんは、今は免疫の研究ではなく、別のテーマに取り組んでいるというのです。私が2007年の暮れにボストンの彼の研究所を訪れた際に、「今は何を研究しているのですが」と私が訊くと、「記憶はなぜできるかを調べているのです」という答えでした。「マウスを何万匹も養って、脳の遺伝子を組み替えたり、脳に穴を開けて電気刺激をするという研究で、そのためのマウスの予算だけで1億円かかる。もう4〜5年研究を続けるときっと解明できるようになる。それまでまだやりたいな」と言うのです。
その記憶の研究では、マウスに様々なことを記憶させたあと、ある部分を障害してしまうと、巣の場所やエサがある場所がわからなくなる。それを訓練して、場所を分かるようにする。またマウスが、どこを痛めたらどう反応するかという研究だということです。
脳の訓練は大切
皆さんも、初めてのホテルへ行くと、エレベーターに行くときには大体、エレベーターのある反対方向へ行ってしまうものです(笑)。その点、犬はちゃんとエレベーターへ向かいます。人間はダメですね。だから私も齢を取ってからは、ホテルに行きますと、どちらの方向にエレベーターがあるということを一度確かめてから中に入るようにしています(笑)。
たとえば会議や集会などに年輩の人が来ますね。会議が終わると、出口からでなく、別のドアから間違って出ようとする人が多いのですよ。だから部屋に入って席に着いたら、まず、今度席を立つときには、どちらの出口から外へ出るということを頭に教えておきます。そして、すんなり出口に向かうと「あなたはしっかりしていますね」と誉められます(笑)。だから、脳の訓練は大切です。(続く)
たとえば会議や集会などに年輩の人が来ますね。会議が終わると、出口からでなく、別のドアから間違って出ようとする人が多いのですよ。だから部屋に入って席に着いたら、まず、今度席を立つときには、どちらの出口から外へ出るということを頭に教えておきます。そして、すんなり出口に向かうと「あなたはしっかりしていますね」と誉められます(笑)。だから、脳の訓練は大切です。(続く)
(2007年5月21日)
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