再録・誌上ケース検討会
このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。
第61回 なぜ不全感を感じているのか ―ひとり暮らしの痴呆性高齢者への支援
(2004年2月号(2004年1月刊行)掲載)
スーパーバイザー
奥川 幸子
(プロフィールは下記)
事例提出者
Bさん(居宅介護支援事業所・看護師)
事例の内容
・クライアント
Aさん、78歳、女性
・既往症
平成3年 不安神経症、自律神経失調症、抑鬱症
平成4年 骨粗鬆症、変形性腰椎症
平成10年 老年期痴呆
・現在の状態
痴呆が進み、短期記憶の障害が特に著しい。室内は生活に必要なものがすべて床の上に置かれており、足の踏み場がない。足腰の痛みのため、掃除、洗濯、買い物をヘルパーに依頼している。最近は、特に腰痛の訴えが多く、移動が困難な状況にあり、四つん這いで移動していることもある。
・家族構成と家族関係
ひとり暮らし。結婚歴なし。隣市に住む妹がいるが、妹の夫と本人の折り合いが悪く、連絡を取っていない。遠方に義理の弟(腹違いの弟)がいる。義弟はヘルパー事業所との契約の時には同席してくれた。
・生活歴
現在住んでいる地域で生まれ、育つ。銀行関係の仕事を定年まで勤める。父(亡くなった時期は不明)と姉(平成5年に死亡)を在宅で介護していた経験がある。
・経済状況
厚生年金を受給。2カ月で約40万円。
・近隣の状況等
本人宅は静かな住宅街にあり、約40年前に建てられた。民生委員が近隣に住んでおり、徒歩圏内なのでよく顔を出してくれている。
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プロフィール
奥川 幸子(おくがわ さちこ)
対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。