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再録・誌上ケース検討会

このコーナーは、月刊誌「ケアマネジャー」(中央法規出版)の創刊号(1999年7月発刊)から第132号(2011年3月号)まで連載された「誌上ケース検討会」の記事を再録するものです。
同記事は、3人のスーパーバイザー(奥川幸子氏、野中猛氏、高橋学氏)が全国各地で行った公開事例検討会の内容を掲載したもので、対人援助職としてのさまざまな学びを得られる連載として好評を博しました。
記事の掲載から年月は経っていますが、今日の視点で読んでも現場実践者の参考になるところは多いと考え、公開することと致しました。


第59回 金銭管理のできない独居高齢者への支援を考える
(2003年12月号(2003年11月刊行)掲載)

スーパーバイザー

奥川 幸子
(プロフィールは下記)

事例提出者

Mさん(地域福祉権利擁護事業・専門員)

クライアント

S氏 男性・85歳

生活状況等

  • ・シルバーハウジング入居中
  • ・基本的には独居だが、知り合いの女性が転がりこんでいる。
  • ・収入:年金等(月約20万円)
  • ・家族の状況:死別した最初の妻との間には2人の子どもがいるが、現在交流はない。死別した2番目の妻の連れ子(海外居住)とは、手紙などの交流あり。

生活歴

 徴兵検査では、身長が低く徴兵は免れた。
 戦後、トロフィー彫刻師を行いながらライターの彫刻を始め、大成功を収めたらしい。2人の子ども(一男一女)は、いずれも一流大学を卒業。2人とも結婚し、県外に居住。長男が家を購入する際、本人が2000万円融資している。
 最初の妻は昭和53年死去。昭和55年にある女性に一目惚れし、プロポーズする。子どもたちの反対を押し切り、再婚。再婚相手には子どもが一人(娘)いたが、結婚後海外で生活。その後、妻の子ども夫婦と海外で同居するため、証券等をすべて売却して約4500万円をつくり、家を購入。ところが、この証券等は前妻と蓄えたものであるため、2人の子どもは猛反対し、親子の関係がますます悪くなる。本人は長男の態度に腹を立て、以前融資した2000万円返済のための裁判を起こす。判決では、原告の請求を却下された。しかし、和解ということで長男は500万円を父親の口座に振り込んだ。
 平成10年、妻が病気のため死亡。海外居住を断念した。
 2番目の妻が亡くなった後、シンガポールへ行き、結婚。しかし、その妻は日本に来て5日後に姿を消した。いろいろ探し回り、新宿のクラブで発見するが、ヤクザ風の男に追い返された。

プロフィール

奥川 幸子(おくがわ さちこ)

対人援助職トレーナー。1972年東京学芸大学聾教育科卒業。東京都養育院附属病院(現・東京都健康長寿医療センター)で24年間、医療ソーシャルワーカーとして勤務。また、金沢大学医療技術短期大学部、立教大学、日本社会事業大学専門職大学院などで教鞭もとる。1997年より、さまざまな対人援助職に対するスーパーヴィジョン(個人とグループ対象)と研修会の講師(講義と演習)を中心に活動した。主な著書(および共編著)に『未知との遭遇~癒しとしての面接』(三輪書店)、『ビデオ・面接への招待』『スーパービジョンへの招待』『身体知と言語』(以上、中央法規出版)などがある。 2018年9月逝去。