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山口晃弘の超幸齢社会の最幸介護術

山口 晃弘(やまぐち あきひろ)

超高齢社会を実り多き「幸齢社会」にするために、
介護職がすべきこととは?
元気がとりえの介護職・山口晃弘が紡ぐ最幸介護術。

プロフィール山口 晃弘 (やまぐち あきひろ)

介護福祉士、介護支援専門員。1971年、東京都生まれ。高校卒業後、設計士、身体障害者施設職員を経て、特別養護老人ホームに入職し、介護職・生活相談員を務め、その後グループホームの管理者となる。
現在、社会福祉法人敬心福祉会 千歳敬心苑の施設長。著書に『最強の介護職、最幸の介護術』(ワニブックス、2014年)、『介護リーダー必読! 元気な職場をつくる、みんなを笑顔にする リーダシップの極意』(中央法規出版、2021年)がある。

夏を待ちきれなくて

 5月に入り、25度を超える夏日が多くなってきました。
 世の中は海に山に、レジャーシーズンとなりますね。高齢者施設ではどうでしょうか。暑いからと外出を控えてはいませんか。

 人間は、太陽の光を浴びることによりセロトニンを生成します。神経伝達物質であるセロトニンには、脳の働きをよくしたり、心のバランスをよくする効果があるともいわれています。また、太陽の光を浴びることは、ビタミンDが生成され骨を強くする作用があります。
 もちろん、真夏の強い日差しを浴び続けることで皮膚がんなどのリスクがないとはいえませんが、これはあくまでも長時間浴びることによるものです。脱水等のリスクも含め、生活支援の専門職である介護職がそのような判断がつかないはずはないのです。

 夏は暑いから外出を控える。冬は寒いから外出を控える。

 そんな生活こそ、不健康そのものです。暑さを感じる。寒さを感じる。それが高齢者が長年慣れ親しんできた生活であり、健康であるための秘訣です。

 「食中毒の流行る時期だから……インフルエンザが……ノロウィルスが……」そんな無菌状態のような生活で、人間は幸せに暮らせるでしょうか。私たち介護職の役目は、生活支援。生命維持ではないのです。
 望まれているのは、生活の質です。暑ければ木陰で涼む。雨が降れば傘をさす。寒ければ厚着をする。みんなそうやって生きてきました。

 東京に雪が積もったときのこと。入居者の皆さんと外に出ると、声をあげて喜んでくれました。その場にしゃがむと、素手で雪を丸めて小さな雪だるまを作っていました。職員が雪を投げると、「こらー!」と言って雪合戦が始まりました。

 夏の江の島に入居者の皆さんと出かけた時のこと。ある男性入居者さんは、若い頃奥様と海でデートした想い出を懐かしそうに話してくれました。
 海岸沿いをドライブしながら、みんなで加山雄三さんの『海、その愛』を合唱しました。みんなサビしか覚えていなくて、「海よ~俺の海よ~」の繰り返しでしたが(笑)

 これから本格的な夏が始まります。
 まぶしい空と青い海。みんなが胸躍らせるシーズンです。エアコンのきいた部屋にいるだけでは、ハッピーとは言えませんよ。