露木先生の受験対策講座
毎週火曜日更新。人気講師による受験対策講座を、一年通してご提供。合格を目指して一緒にがんばりましょう。
- プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)
-
社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。
第18回 「相談援助の理論と方法」のポイント(2)
さて、今回は前回に引き続き、「相談援助の理論と方法」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。今回も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準に即した内容で整理していきます。
本科目のねらい
本科目の出題基準によると、大項目として、1.人と環境の交互作用、2.相談援助の対象、3.様々な実践モデルとアプローチ、4.相談援助の過程、5.相談援助における援助関係、6.相談援助のための面接技術、7.ケースマネジメントとケアマネジメント、8.アウトリーチ、9.相談援助における社会資源の活用・調整・開発、10.ネットワーキング(相談援助における多職種・多機関との連携を含む。)、11.集団を活用した相談援助、12.スーパービジョン、13.記録、14.相談援助と個人情報の保護の意義と留意点、15.相談援助における情報通信技術(IT)の活用、16.事例分析、17.相談援助の実際(権利擁護活動を含む。)の17項目があげられています。
前回の第17回講義の項目1から8に引き続き、今回は項目9から17について解説します。
各項目の詳細について
9.相談援助における社会資源の活用・調整・開発
本項目では、社会資源の活用・調整・開発の意義、目的、方法、留意点についての理解が重要です。
社会資源とは、社会的ニーズを充足するための物資や人材の総称で、具体的には、福祉施設や備品、資金、制度、情報、知識や技能(技術)、人材(専門家)、福祉サービスなどを指します。ソーシャルワークの役割・機能としては、利用者のニードとそれを充足するための社会資源を有効に結びつけることがあげられます。また、ソーシャルワーカーは、ニードと社会資源との調整や開発を行う役割を担っています。
第34回試験では、問題110で、社会資源について、フォーマルサービスやインフォーマルサポートなどに着目した問題が出題されました。基礎的な内容ですが、過去の問題をベースに整理しておきましょう。同様に、第30回試験の問題111では「インフォーマルな社会資源の特徴」について問われています。インフォーマルとは非公式であり、インフォーマルな社会資源とは、クライエントと近い関係にある家族や親族、近隣関係、ボランティアなどです。よって、利用者の個人的な状況に対する融通性が高い一方で、提供されるサービスの継続性や安定性が低いという特徴が挙げられます。これに対し、フォーマルな社会資源とは、フォーマル、すなわち公式な社会資源であり、社会福祉制度に基づくサービスや行政・社会福祉法人などの実施する事業などです。よって、インフォーマルな社会資源と比べて、利用者の個別的な状況に対する融通性が乏しいですが、提供されるサービスの継続性や安定性は高いといった特徴が挙げられます。つまり、ソーシャルワークで活用される社会資源は、利用者本人や家族の状況、地域などを個別に理解した上で、フォーマル、インフォーマルな社会資源を有効に結びつけることが重要であることがわかります。
また、第32回試験の問題118では、次期の地域福祉計画の策定に向けた社会福祉法改正(平成29年)の内容を踏まえた、策定の準備・取り組みについて問われました。設問文を借りて解説すると、平成29年の社会福祉法改正により、地域福祉計画の策定は、市町村の努力義務となりました。これに伴い、計画の策定にあたっては〈地域住民、福祉・保健・医療関係者、市役所内で計画に係る複数の部局区の職員等が参加する地域福祉計画策定委員会を組織化〉することや、計画には、〈地域住民の意見を反映させるために、各地区の公民館等を会場として地域住民が主体的に参加する懇談会を開催する〉などに努めることとなりました。さらに、第31回試験では、問題105で、ブラッドショウのニーズ類型について問われました。出題されたニードは、「規範的(ノーマティブ)ニード」と「比較(コンパラティブ)ニード」でした。このほか、「感得された(フェルト)ニード」と「表出された(ノーマティブ)ニード」があります。その詳細については各自で必ず整理しておいてください。また、問題107では、ソーシャルワーカーの役割について問われました。具体的には、「ブローカー(仲介者)」「エデュケーター(教育者)」「ネゴシエーター(交渉者)」「イネーブラー(力を添える/側面的援助者)」「メディエーター(媒介者)」の内容が問われていました。ここでは日本語訳を載せていますが、試験問題では、英語表記のまま(例えば、「ブローカー」)で出題されました。さらに、問題112では、社会資源に関する基本的な内容が問われました。具体的には、相談援助における社会資源の目的や調整、開発に関する基礎知識でした。
社会資源は、量的には点在しています。領域によっては、星のごとくその社会資源(福祉サービスや福祉施設、制度、政策)が点在しています。私がソーシャルワーク教育を受けていた頃は、この社会資源自体が不足していたため、本項目のように社会資源の開発がソーシャルワーカーの重要な役割・機能でした。しかし、前述したように、星のごとく点在する社会資源を個別化した利用者ニーズに有効に結びつけるソーシャルワーカーのマネジメント機能が重視されており、実際にソーシャルワーカーは、このマネジメントに多くの時間を費やされています。また、この有効な結びつけ、即ちマネジメントをするためには、利用者個人のアセスメント(ニーズアセスメント)と社会資源のアセスメント、社会資源内の連携や協働、ネットワーキングが重要となります。このことからも、本項が示す「社会資源の活用・調整・開発」とは、ソーシャルアクションやアウトリーチのみの知識技術だけでなく、アセスメント、アドボカシー、ネットワーキング、マネジメントなど、非常に幅広い知識技術の習得と、理解が必要となります。ソーシャルワークでは、個別ケースの権利擁護(ケースアドボカシー)を行いながら問題を解決し、社会福祉士が担当する複数のケースにおける相違点や、同様の問題を抱える人々などへのケースアドボカシーを通して、社会資源の開発や改良、社会変革や社会活動へと、いわゆるマクロレベルのソーシャルワーク支援へと広がりをもっていきます。
受験対策コンテンツによりアクセスしやすい! けあサポアプリ版
けあサポ ― 介護・福祉の応援アプリ ―
- ※ 上記リンクから閲覧端末のOSを自動的に判別し、App StoreもしくはGoogle playへと移動し、ダウンロードが可能です。
中央法規メルマガ会員 募集中!
「社会福祉士」業務に役立つ新刊情報やオンラインイベント情報等を、いち早くお届けします! この機会にぜひお申し込みください。