露木先生の受験対策講座
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- プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)
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社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。


第12回 「低所得者に対する支援と生活保護制度」のポイント
各項目の詳細について
(1)低所得階層の生活実態とこれを取り巻く生活情勢、福祉需要と実際
本項目では、1)低所得者層の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉需要、2)生活保護費と保護率の動向が重要となります。そのため、生活保護関連の調査や統計、『厚生労働白書』(厚生労働省)などを通じて、低所得者層の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉需要の実態などについて整理しておく必要があります。また、生活扶助、医療扶助、その他の扶助等の動向など、生活保護費と保護率の動向に関する知識も重要となります。
第33回試験の問題63では、2018(平成30)年における生活保護受給者の動向について問われました。または、第32回試験の問題63では、2000年度以降の生活保護の全国的な動向について問われました。単年度というより、ここ数年の大きな流れを理解しておくことが重要です。あと、第31回試験では「低所得者の状況」について問われています(複数の統計資料からの出典です)。
本項目に関しては、まず、過去問をベースに、統計資料と突合させる形で学習をするとよいと思います。
(2)生活保護制度
本項目では、生活保護制度の概要について整理しておくことが重要です。例えば、生活保護法の目的、基本原理、保護の原則、保護の種類と内容、保護の実施機関と実施体制、保護の財源、保護施設の種類、被保護者の権利及び義務、生活保護の最近の動向などです。本項目は、本科目の中枢となりますので、過去問ベースで整理をしておいてください。
生活保護法について少し解説すると、第1条には、生活保護法の目的が謳われています。それによると、「日本国憲法第25条 に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする」とあります。では、日本国憲法第25条とは何かというと、これは国民の生存権として、国がこれを保障することを謳ったもので、生存権保障を意味しています。
日本国憲法第25条第1項では、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する」とし、同条第2項では、「国は、すべての生活部面において、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない」としています。この条項を具体化するために誕生したのが、この現行の生活保護法です。
つまり、生活保護法の目的は、(1)国民の生存権保障、(2)自立の助長の2つの意味合いをもっていることになります。これは、「健康で文化的な最低限度の生活」を「国」が保障することであり、生活保護を受給する状態になった人々も、再び自立(自活)した生活が送れるように自立支援をすることです。
次に、生活保護法の原理・原則を列挙しておきます。
【生活保護の原理】
□国家責任の原理(法第1条)
□無差別平等の原理(法第2条)
□最低生活の原理(法第3条)
□保護の補足性の原理(法第4条)
【生活保護の原則】
□申請保護の原則(法第7条)
□基準及び程度の原則(法第8条)
□必要即応の原則(法第9条)
□世帯単位の原則(法第10条)
さらに、生活保護法における8つの扶助(保護)を列挙しておきます。
扶助種類 | 給付 | 内容 | 原則以外の給付方法の内容 | その他の事項 |
---|---|---|---|---|
生活扶助 | 金銭 |
日常生活費 ・第1類 個人単位の経費 ・第2類 世帯単位の経費 ・各種加算 妊産婦・母子 (父子家庭含む) 障害者・介護施設入所者 在宅患者・放射線障害者 児童養育・介護保険料 |
移送費 救護施設・更生施設入所等 入院患者日用品費 |
世帯単位の原則 |
教育扶助 | 金銭 | 義務教育にかかる費用 | 生活扶助と同時支給を原則 | |
住宅扶助 | 金銭 |
家賃などにかかる経費 ・住宅維持費 ・家賃・間代・敷金・礼金など |
宿所提供施設利用等 | 生活扶助と同時支給を原則 |
医療扶助 | 現物 | 医療にかかる費用 | 生活保護法による指定医療機関の利用が原則 | |
介護扶助 | 現物 | 介護にかかる費用 | 生活保護法による指定介護機関の利用が原則 | |
出産扶助 | 金銭 | 子どもを出産する費用 | ||
生業扶助 | 金銭 |
職業訓練など仕事にかかる費用 ・生業費 ・技能修得費 (技能修得費・高等学校等就学費) ・就職支度費 |
授産施設利用等 | 自立の助長(生活保護法第1条の目的) |
葬祭扶助 | 金銭 | 葬式にかかる費用 | 葬祭を行う者に支給 |
生活保護では、これらの8つの扶助を世帯や状況などに応じて、必要な扶助を単体、もしくは組み合わせて給付しています。1つの扶助だけを受ける場合を「単給」といい、複数の扶助を合わせて受ける場合を「併給」といいます。
また、給付方法として、現金で支給される場合などを「金銭給付」といい、サービスなどで支給される場合を「現物給付」といいます。医療扶助や介護扶助は、基本的に「現物給付」となっています。これ以外についても、生活保護制度についてはしっかりと学習しておいてください。
第34回試験では、問題63で本法が規定する基本原理と原則について問われ、問題65では、本法で規定されている被保護者の権利及び義務について問われました。この2問は、非常に基本的な問題であり、本制度を理解するために必須な知識となります。過去問をベースに整理しておきましょう(第33回、第34回試験問題64参照)。この他、問題66では、生活保護法第38条に規定される保護施設について出題されています。我が国の救貧対策(生活保護制度)は、居宅を原則としており、家賃などにかかる経費(例えば、住宅維持費、家賃・間代・敷金・礼金など)については「住宅扶助」で賄われますが、本法第38条では、居宅において生活を営むことが困難な者に対して「救護施設」「更生施設」「医療保護施設」「授産施設」「宿所提供施設」の5つの施設があります。その詳細については、ワークブックや合格テキストなどをベースに整理しておきましょう。さらに、問題68では、生活保護の実施機関及び専門職について問われており、都道府県(知事)、市区町村(長)をはじめ、社会福祉主事、民生委員などについて整理しておくことが重要です。また、第33回試験になりますが、本法の定める不服申し立てについて、基本的なことですが、具体的な内容が問われていますので、確認しておいてください。
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