露木先生の受験対策講座
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- プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)
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社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。
第11回 「障害者に対する支援と障害者自立支援制度」のポイント
各項目の詳細について
(1)障害者の生活実態
1.障害者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢、福祉・介護需要
本項目では、障害者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢について整理するとともに、障害者の福祉・介護需要について理解することが重要です。
障害者の生活実態とこれを取り巻く社会情勢については、「厚生労働白書」(厚生労働省)などを利用して、障害者の生活実態と社会の動向・情勢について整理しておくとよいでしょう。また、障害者の福祉・介護需要としては、これらの実態、障害者の地域移行や就労の実態などについて理解しておく必要があります。これらの知識は、障害者の置かれている状況や生活の実態、社会の動向や状況などを理解するために必要な知識となりますので、しっかりと学習しておいてください。
過去の問題を見ておくと、第34回試験、第33回試験、第32回試験、第31回試験の問題56で「生活のしづらさなどに関する調査(全国在宅障害児・者等実態調査)」における障害者の実態ついて問われています。このような統計に関する問題は、本科目以外に、「高齢者に対する支援と介護保険制度」や「児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度」などの科目でも出題される可能性が高いので、厚生労働省が実施している統計については必ず一読しておきましょう。
(2)障害者福祉概論
2.障害者福祉制度の発展過程、8.身体障害者福祉法、9.知的障害者福祉法、10.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)、11.児童福祉法(障害児支援関係)、12.発達障害者支援法、13.障害者基本法、15.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)
今まで(社会福祉六法以降)、障害者分野では、身体障害・知的障害・精神障害は、各障害が独自の法律のもとに、バラバラに支援が行われてきました。つまり、障害者自立(総合)支援法は、従来バラバラであった3障害への福祉サービスを一元化した法律といえます(障害者基本法においても、3障害を統合しています)。ここでは、「8.身体障害者福祉法」「9.知的障害者福祉法」「10.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」「12.発達障害者支援法」「13.障害者基本法」「15.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」について解説したいと思います。
まず、「2.障害者福祉制度の発展過程」については、第33回試験、第32回試験、第31回試験、第30回試験では、「障害者福祉制度の発展過程」が問われていました。第31回試験は、そのなかでも、障害者の権利に焦点が当たった内容でした。具体的には、「国際障害者年」「障害者虐待防止法」「障害者雇用促進法」「障害者差別解消法」「障害者の権利に関する条約」です。これらの法規等については必ずチェックしておきましょう。このように、障害者福祉制度の発展については、ほぼ毎年問われており、変革期にある障害福祉分野では、非常に重要な知識となります。学習方法としては、過去問をベースにワークブックなどで、内容と変遷(流れ)についても整理しておきましょう。
以下は、各法の内容となります。
「8.身体障害者福祉法」については、身体障害者福祉手帳、身体障害者福祉法に基づく措置などについて整理しておいてください。また、身体障害者の定義についても確認しておいてください。ちなみに、第31回試験では、「知的障害者福祉法」「精神保健福祉法」を横断した問題が問題62で出題されています。それぞれの法律をバラバラに理解するのではなく、関連づけて整理しておきましょう。
「9.知的障害者福祉法」については、療育手帳、知的障害者福祉法に基づく措置などについて整理しておいてください。知的障害者については、同法においては定義されていません。実務上は、2005(平成17)年の「知的障害児(者)基礎調査」の定義である「知的機能の障害が発達期(おおむね18歳まで)に現れ、日常生活に支障が生じているため、何らかの特別の援助を必要とする状態にあるもの」を利用することがあります。また、療育手帳制度で、障害の重さ(程度)をもとに区分したものを利用することもあります。第34回試験の問題60で、本法に関する基礎的な内容として、市町村や都道府県の役割や「療育手帳」について問われています。また、第30回試験では、問題62で「知的障害者更生相談所の業務」について問われています。設問文の言葉を借りると「知的障害者の医学的、心理的及び職能的判断を行う所」と言えます。
「10.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律(精神保健福祉法)」については、精神保健福祉手帳、精神保健福祉法に基づく措置入院などについて整理しておいてください。また、精神障害者とは、同法において、「統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害、精神病質その他の精神疾患を有する者」と定義されています。第33回試験と第29回試験では、「手帳」と「定義」が出題されています。こちらについては、過去の問題をベースに整理しておきましょう。
「11.児童福祉法(障害児支援関係)」については、児童福祉法に基づく障害児支援が問われるため、児童福祉法をはじめとする、児童福祉に関係する制度や政策については必ず押さえておいてください。
「12.発達障害者支援法」は、2004(平成16)年に制定された法律で、発達障害を早期に発見し、発達支援を行うことに関する国や地方公共団体の責務を明らかにしたものです。また、発達障害者への学校教育や就労面の支援、発達障害支援センターの指定などについても定めています。同法で発達障害とは、「自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常年齢において発現するものとして政令で定めるもの」と定義しています。そのほか、発達障害者支援センターの役割などについても確認しておいてください。第32回試験では、問題60で、本法の規定に関する詳細の内容が出題されています。まずは、こちらの過去問をベースに整理しておきましょう。
「13.障害者基本法」は、わが国の障害者政策の基本となる法律で、1970(昭和45)年に制定された心身障害者対策基本法が、1993(平成5)年に全面的に改正されたものです。この法律では、「障害」とは、身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害であることと、「障害者」とは、これらの障害および社会的障壁によって、継続的に日常生活または社会生活に相当な制限を受ける状態にあるものとしています。また、2004(平成16)年の障害者基本法の一部を改正する法律案に対する附帯決議では、「てんかん及び自閉症その他の発達障害を有する者、並びに難病に起因する身体又は精神上の障害を有する者であって、継続的に生活上の支障があるもの」も障害者の範囲に含まれるものと明記されました。同法については、必ず一読しておくことをおすすめします。第34回試験では、障害者の定義から始まり、都道府県・政府の役割、差別禁止について問われました。こちらの問題は、本法の基本と、改正点を抑えた問題となっているので、過去問をベースに整理しておきましょう。第32回試験では、問題61で、本法について問われています。やや詳細ですが、まずはこちらの過去問をベースに整理しておきましょう。
「15.心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律(医療観察法)」は、心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者に対して、その適切な処遇を決定するための手続き等を定め、継続的かつ適切な医療並びにその確保のために必要な観察及び指導を行うことによって、その病状の改善とこれに伴う同様の行為の再発の防止を図り、対象者の社会復帰を促進するものです。
本項目は、例年、社会福祉士の専門科目である「更生保護制度」でほぼ毎年出題される項目です。キーワードとしては、社会復帰調整官、生活環境の調査・調整、精神保健観察、ケア会議などでしょうか。これらの用語が不明な方は、専門科目の「更生保護制度」の過去の問題から「医療観察制度」に関する問題をチェックしておいてください。学習の取り掛かりとして、社会復帰調整官は、保護観察所に配置され、社会福祉士や精神保健福祉士などの有資格者で、一定の業務経験を有する者などで、ソーシャルワーカーが、この担い手となっているということです。第32回試験では、本科目の問題62で出題されているので、一読しておきましょう。
以上、各法律について列挙し、内容をまとめました。詳細については、テキストや福祉小六法などを活用して、再度確認しておいてください。
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