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露木先生の受験対策講座

毎週火曜日更新。人気講師による受験対策講座を、一年通してご提供。合格を目指して一緒にがんばりましょう。
露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第26回 クローズアップ~社会理論と社会システム

社会的役割と役割葛藤

 まず、社会的役割について整理します。社会的役割とは、社会的行為の形成や行為の関連を記述し分析する概念として、社会学では、「役割」に注目して研究を積み重ねてきました。「役割」とは、その人が占める社会的地位に付随して期待される行動様式であり、社会的役割とは、行為の社会性を強調する用語といえます。人は、その地位等に付随して役割を期待されますが(役割期待)、その役割期待を実際に演ずるようになる行為を役割行動と呼びます。しかし、役割は調和的に遂行される場合もありますが、異なる行動様式を同時に要求される場合もあり、その時は役割葛藤が生じます。また、役割喪失は、孤独感や孤立感を生じる要因となる場合もあります。

 次に、役割葛藤(社会的葛藤)について整理します。役割葛藤とは、個人のレベルでの合理性と、集団・社会レベルでの合理性とが必ずしも一致しないという現象をいいます。具体的には、社会において、個人が利己的判断で行動し始めると、一人ひとりが他者や集団に及ぼす影響は些細なものですが、それが社会全体からみると、その集積の結果が社会にとって望ましくないものであったりします。また、行為主体である個人にも、それが望ましくないものとしてかかわってくることがあります。

 また、この役割葛藤の解決策として、フリーライダー(非協力を選択して利益のみを享受する人)をいかになくすかという問題(フリーライダー問題)があります。オルソンは、非協力的行動に対して罰を与える、あるいは協力的行動に対して報酬を与えることにより、外的な要因から協力的行動を選択する方法を「選択的誘因」と説明しました。

表 役割に関する用語の整理

※役割とは、その人が占める社会的地位に付随して期待される行動様式のこと

種 類 内 容
役割葛藤 役割は調和的に遂行されることもあるが、異なる行動様式を同時に要求される場合には役割葛藤が生まれる。
※複数の役割間の矛盾や対立から心理的緊張状態を感じる
役割期待 他者もしくは社会システムから個人に期待される役割のこと。
役割取得 社会的相互行為の場面で、他者からの期待を認識し、それを取り入れることで自分の役割行為を形成すること。
役割分化 社会システムにおける複数の役割が相互に区分され、多様化し異質化していく過程。
役割距離 ゴッフマン(Goffman,E.)の独創的な概念。1つの役割に没頭するのではなく、その役割には収まりきらないもう1つの自分を、しかも当の役割を遂行しながら表現してみせること。役割距離により、他社の期待から相対的自由と自己の自立性が確保されるとされている。
役割距離 夫と妻など相互に相手の役割を演じ合うことによって、相手の立場や考え方を理解し合うこと。

ラベリング

 「ラベリング」とは、特定の行為者に対して、権力(優位・強)者などが否定的なレッテルを貼ることをいいます。このようにラベリングされた人々は、社会的に疎外され続けることで、さまざまな不利益を被ることになり、そのことが、さらなる犯罪や事件などを起こしやすい社会的状況におとしめるという結果を生むとされています。このラベリングという概念を支える「ラベリング理論」によって、逸脱行動や薬物使用などの被害者のない犯罪について説明がなされています。また、キッセは、このラベリング理論を展開し、社会問題や社会病理は、ある社会状態に「問題がある」とラベル、すなわちレッテルを貼る人びとが構築する像であると論じています。

マイノリティ

 「マイノリティ」という言葉をよく耳にします。しかし、この言葉をよく理解したうえで、正しく使用している人は少ないのではないでしょうか。マイノリティとは、社会の構成員(社会成員)であるにもかかわらず、身体的な特性や特徴、文化的な特性や特徴が一般的な傾向と比較して劣位であるとして差別を受ける社会集団のことで、自らもそのことを自覚し、集団的アイデンティティを有する集団のことをいいます。さらに、マイノリティは、業績主義社会のなかでは「弱者」ということになり、スティグマを付与されて逸脱者となるだけでなく、その属性をアイデンティティのよりどころとして異議や申し立てをする集団ともなりうるという特徴があります。


ハラスメント

 迷惑な行為を「ハラスメント」といいます。他者に対する発言や行動などが本人の意図に関係なく、相手を不快にさせたり、尊厳を傷つけたり、不利益を与えたり、脅威を与えることなどをさします。職務上上位にあたる者が、その地位および職務上の権限を背景に、人権を侵害したり、相手に苦痛を与えるような発言・行動をとることを「パワー・ハラスメント」といいます。また、相手が不快に思い、自身の尊厳を傷つけられたと感じるような性的発言や行動を「セクシュアル・ハラスメント」といいます。なお、雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)の改正により、1999(平成11)年4月より企業がセクシュアル・ハラスメントを防止する体制を整える義務が定められました。さらに、2017(平成29)年1月の改正により、妊婦・出産・育児休業・介護休業等を理由とする不利益な取り扱いや、ハラスメント対策について事業主が講ずることを義務化しました。現代で問題となっている「マタハラ=マタニティ・ハラスメント」ですね。

ドメスティック・バイオレンス(DV)

 配偶者および近親者、恋人などからの暴力を意味します。 暴力とは、身体的な暴力に限らず、被害者の思考や行動を萎縮させるような心理的な暴力も含まれます。要因としては、パートナーからの暴力を容認しやすい社会通念や意識、現代社会における共依存的な関係などの側面が指摘されています。また、2017(平成29)年の男女間における暴力に関する調査(内閣府)によると、身体的暴力、心理的脅迫、性的強要のいずれかをこれまでに一度でも受けたことのある女性は、約3人に1人いるとされています。また、そのうちの約7人に1人が「何度も受けている」とされています。ちなみに、男性の被害については、約5人に1人とされています。本調査を始め、「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」については、必ず一読しておいてください。また、暴力や虐待といった人権侵害に関連するものとして、児童虐待や障害者虐待、児童の権利条約や障害者の権利条約、障害者差別解消法などについては、整理しておいてください。

ワークライフバランス

 ワークワイフバランスは、「仕事と生活の調和」と訳されますが、男性、女性共に、仕事と家事、出産や育児、介護などとの両立を図って多様な働き方、多様な生き方を目指す考えです。わが国では、「仕事と生活の調和」については、憲章や行動指針などが示されています。この用語を理解するために、もう一つ整理しておきたいものがあります。それは、ILO(国際労働機関)がいう「ディーセントワーク」です。ディーセントワークは、「働きがいのある人間らしい仕事」と訳されますが、生計に足る収入が得られ、労働者の権利が認められ、仕事と家庭が両立することを意味しています。この二つの用語は、セットでぜひ覚えておいてください。また近年では、「働き方改革」が叫ばれ、「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律」が施行されており、(1)働き方改革の総合的かつ継続的な推進、(2)長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、(3)雇用形態にかかわらない公正な優遇の確保などが掲げられております。


完全失業率

 完全失業率とは、労働力人口に占める完全失業者の割合(%)ですが、「完全失業者」とは、「仕事がなく、仕事を探していた者で、仕事があればすぐに就ける者」をいいます。よって、国内の経済状況を示す一つの指標となっています。つまり、「完全失業率」が低い場合は、「失業者が少ない」ということなので、「仕事がたくさんある」ということを示しており、「景気が良い」と言えるのです。ちなみに、2018年の完全失業率の値は、労働力調査(総務省)によると、「2.4」です。この完全失業率は、毎月出されていますので、増減はありますが、2019年については、2%台前半で推移しています。これは、高水準と言えます。なぜならば、2017年の年平均は2.8%、2016年の年平均は3.1%、2015年の年平均は3.4%であったため、改善傾向にあり、高水準と言えます。しかし、若年齢層の必要率が高く、15歳から24歳までの完全失業率は「3.6%」で、25歳から34歳の完全失業率は「3.4%」と、依然として年齢計に比べて相対的に高水準で推移しています。なお、今年度については、新型コロナウイルスの影響で失業者数や失業率は高まっています。2021年8月時点で、完全失業率は「2.8%」で、完全失業者数は193万人となっています(前年と同率)。

ジニ係数

 社会における所得配分の不平等を計る指標の一つで、0から1の間の数値で示されます。その数値が「1」に近づくほど所得格差が大きく不平等であり、逆に「0」に近づくほど所得格差は小さくなり平等となります。また、0.5を超える場合は、政策による是正が必要になると言われています。ちなみに、日本のジニ係数は、当初所得で「0.5704」で、再分配後の数値は「0.3759」となっています。このほか、格差社会を示す指標として、「相対的貧困率」があります。


相対的貧困率

 相対的貧困率は、社会における所得の配分の不平等を示す指標の一つで、一人当たりの可処分所得(実収入から税金や社会保険料を除いた手取り収入で、「家計が自由に処分(使うことが)できる部分」)を低い順に並べたちょうど真ん中(中央値)の半分(貧困線)に満たない人の割合をいいます。日本の場合、この割合が「16.1%」から「15.7%」へ改善傾向にありますが、OECD加盟国の中でも相対的貧困率は高い位置にあります(国民生活基礎調査より)。ちなみに、17歳以下の子どもの貧困率は「16.3%」から「15.9%」へと、こちらも改善傾向にありますが、それでも国際的には高い貧困率と言えます。これに伴い、わが国では、「子ども貧困対策の推進に関する法律」が制定されています。

過疎化と限界集落

 過疎化とは、地域の人口が減少し、そのことで産業の衰退や生活環境の悪化がもたらされ、住民意識が低下し、最後には地域から人がいなくなることをいいます。過疎化・過疎問題とは、産業化や都市化などに伴う人口流出によって、それまでの生活水準または生活様式が維持できない状態になった地域の問題をいいます。また、このような過疎問題に高齢化の進行が重なるような集落のことを「限界集落」といいます。高齢化率は50%を超え、共同体機能の維持が困難となり、存在の限界に達している集落です。

 以上、「社会理論と社会システム」の解説でした。今回は、細かい理論の紹介や詳細にはふれず、用語の整理を行いました。日常、われわれが何気なく使っている用語も、改めてその意味を学習すると、若干の違い(ズレ)や完全に勘違いをして使用しているものがたくさんあります。

 試験対策としては、用語を感覚やニュアンスで捉えるのではなく、意味を正しく理解しておく必要があります。社会福祉用語辞典などを活用して、それぞれの用語についてもう一度正しく理解しておいてください。

 また、今回は整理することができませんでしたが、提唱者とその理論については、必ずチェックしておいてください。ワークブックにもまとめられています。

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