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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

特別編II 第33回社会福祉士国家試験 午後<専門科目>問題の講評

 先週と今週の2回に分けて、第33回社会福祉士国家試験の講評を行っています。今回は、午後<専門科目>問題についてです(解答速報)。

 国家試験から約10日がたちます。その後、何か新しい取り組みを始めましたか? そのための準備を始めていますか? 時間はどんどん前に進んでいきます。3月15日(月)の合格発表後から準備を始めていては遅いと思います。今から、次年度の準備、次年度の体制作りをしておくとよいと思いますよ。

 さて、午後<専門科目>の試験科目は以下の8科目で、試験時間は13時45分~15時30分までの105分(1時間45分)でした。

  • ■ 社会調査の基礎(7問)
  • ■ 相談援助の基盤と専門職(7問)
  • ■ 相談援助の理論と方法(21問)
  • ■ 福祉サービスの組織と経営(7問)
  • ■ 高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)
  • ■ 児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)
  • ■ 就労支援サービス(4問)
  • ■ 更生保護制度(4問)

 第33回試験の午後<専門科目>問題は、昨年度に比べてやや難しい問題が所々で出題されていましたが、基本的な項目をしっかり押さえておけば、きちんと得点できた問題が多かったと思います。ただし、各科目で、1問から2問は、やや難しい内容や聴き慣れない用語を含んだ内容が出題されていました。

 事例問題については、全体的に易しい問題が多く、内容としては、相談援助系の事例問題では、社会福祉士(ソーシャルワーカー)の対応事例が出題されました。その他の事例問題は、知識と実践を問う応答問題が出題されました。

 それでは、各科目について、講評していきたいと思います。

基礎的な知識から詳細の知識まで幅広く問われました

社会調査の基礎(7問)

 本科目は、昨年度に同様の難易度で、更に基礎的な知識や内容を問う問題が多く、全滅(0点)という方は少なかったのではないでしょうか。例えば、問題86「標本抽出の基礎」や、問題87「横断・縦断調査の基礎」、問題88「質問紙作成の留意点」、問題89「調査票の配布と回収」、問題90「調査手法」については、出題は予想されていましたので、得点できた方も多量的調査の難解な解析方法の出題もなく、また質的調査の分析法についても出題がありませんでした。

相談援助の基盤と専門職(7問)

 本科目は、「相談援助の理論と方法」とセットの科目といえます。本科目は、社会福祉士やソーシャルワーカーの倫理、価値に重きが置かれ、社会福祉士にとって重要な原理・原則についても取り扱われます。これに、ソーシャルワークの歴史的変遷(セツルメント活動)や国が規定する近年の相談事業といった内容も含まれます。出題が予想されていた問題91「社会福祉士及び介護福祉士法」、問題92「ソーシャルワークのグローバル定義」については、得点できた方が多かったのではないでしょうか。ただ、昨年(令和2年)に改定された社会福祉士倫理綱領が出題されませんでした。これから実践する皆さんは、新たな社会福祉士倫理綱領について、必ず一読しておいてください。

相談援助の理論と方法(21問)

 本科目の問題数は全21問と、全科目のなかで一番配分が大きい科目です。本科目でしっかりと得点できていることが合格の必須条件だと思います。今回は、全21問中9問(1/3)が事例問題でした。事例問題は増えましたが、内容的には、昨年度の試験と同様の傾向で、難易度も変わりませんでした。
 理論・アプローチ、モデルに関する問題や相談援助の過程に関する問題も例年同様に多く出題されましたが、やや踏み込んだ内容が問われていました。と言うより、基本的な知識をベースに、応用、即ち、それを実践で使えるのか?といった、具体的な内容を問う問題が多く出題されていました。よって、丸暗記の学習では、対応がやや困難な問題もありました。例えば、問題104は、在日外国人支援に関する実践事例、問題117は、社会福祉協議会のソーシャルワーカーのソーシャルアクション実践事例など、基礎的な知識をきちんと理解した上で、その応用が確かめられる問題となっていました。この他、毎年出題されている「スーパービジョン」や「記録」については、例年通りの内容・難易度でした。グループワークについては、人名と理論について問われているのみで、グループワークの実際について問われませんでした。現代のソーシャルワーカーにとって、グループやグループワークの実践はそれに伴う知識、技術は非常に重要ですので、各自で必ず整理しておきましょう。

福祉サービスの組織と経営(7問)

 本科目の出題基準は、(1)福祉サービスにかかる組織や団体、(2)福祉サービスの組織と経営にかかる基礎理論、(3)福祉サービス提供組織の経営と実際、(4)福祉サービスの管理運営の方法と実際となっています。
 第33回試験を見てみると、これら4項目が万遍なく出題されていました。難易度としては、昨年度の試験と同様のものでした。内容を見てみると、「社会福祉法人」や「福祉サービスに関連する事業や活動を行うことのできる組織・段階」に関する基礎的な内容をはじめ、「経営の基礎理論」「リーダーシップ」からは、「動機づけ」や「経営戦略」など問われていました。また、問題124では、「社会福祉法人の会計財務等」について、用語の説明、理解を促す問題が出題されていました。また、基礎的な内容ですが、(2)の福祉サービスの組織と経営にかかる基礎理論についてしっかり問われていました。ただ、人材の確保や育成、働き方に関する項目の出題はありませんでした。やはり、福祉サービスは、ヒューマンサービスですので、援助者が尊重されていなければなりません。

高齢者に対する支援と介護保険制度(10問)

 本科目は、全10問中2問が事例問題でした。その内容は、在宅生活を支える介護支援専門員(社会福祉士)と福祉用具専門相談員(社会福祉士)が行う支援に関する対応事例(問題128、問題133)でした。こちらは、ややコンビニエンスな知識を問うような内容でしたので、高齢者領域等で実践をされている方には有利な内容でした。ケアプランに関する対応事例は重要なので、実践現場でも多くなる「障害者サービスを長く利用してきた障害者が、高齢となり、高齢者サービスを利用する」といったサービスの一貫性の担保、つまり「共生型サービス」の実施にまつわる内容などは、今後、社会福祉士として活躍される皆さんにとって有用な知識・技術となると思います。したがって、「共生型サービス」とは何かということを、各自で改めて、復習しておきましょう。この他、高齢化の動向と将来推計に関する内容や高齢者等に関する近年の政策動向、高齢者保健福祉制度の変遷からはじまり、介護保険制度では、「介護給付と介護報酬」や、「国民健康保険団体連合会の役割」について問われました。また、例年出題されてきた、介護技術についての具体的な記述はなくなり、要介護者の住環境整備(問題130)などが問われました。この他、出題されていませんが、「老人福祉法」「地域包括支援センター」などは、高齢者福祉を実践する上で重要な知識となりますので、整理しておきましょう。また、今年度は出題されませんでしたが、高齢者福祉に関する国際比較については、「高齢社会白書」が出典となります。本科目における「高齢社会白書」の出題頻度は高いので、今後もチェックが必要です。このほか、介護保険制度については、都道府県・市町村の役割の役割についても整理しておきましょう。

児童や家庭に対する支援と児童・家庭福祉制度(7問)

 本科目は、非常に基本的な項目が、出題基準から万遍なく出題されました。また、事例問題は、全7問中2問で、配偶者暴力相談支援センターの相談員(社会福祉士)の対応事例(問題138)と、児童手当の支給先に関する知識を問う応用事例(問題139)が出題されました。この他、「子どもの貧困」や「児童虐待」に関する内容をはじめ、「子育て支援」や「子どもに関わる専門職等」についても問われました。出題されなかった項目としては、「児童福祉法」「児童福祉施設」「里親」「児童の権利条約等」などに関する問題です。この辺りは、社会福祉士にとって重要な項目ですので、各自復習をしておきましょう。

就労支援サービス(4問)

 本科目は、基本から応用を問う問題形式でした。やや難しく感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。ここ数年、労働や働きに関する基本的知識や統計、障害者、生活保護受給者、高齢者、若者等の各就労支援サービスに関する知識が幅広く問われています。今年度の第33回試験でも、これらの内容が満遍なく問われていました。
 内容としては、問題143で、「労働と福祉」と題して、基本的な労働に関する用語について問われました。こちらは、新聞などを読んでいると自然と出てくる用語だったり、国家試験勉強の際にも重要項目として挙げられてきた内容ですので、間違えた方や用語が不明瞭な方は復習しておきましょう。このほか、障害者の雇用・就労に関する統計問題(問題144)や、障害者や若年層の雇用に関する内容が問われました。出題されなかった内容としては、出題頻度の高い「障害者就業・生活支援センター」や「求職者支援法」です。これらについては、各自で整理しておきましょう。この知識は、科目「社会保障」に関連するものですが、求職者支援法とは、雇用保険を受給できない者に対して、(1)無料の職業訓練を実施して、(2)給付金を支給するとともに、(3)ハローワークが就労支援を行う制度で、スキルアップをはかり、早期の就職を目指す目的があります。

更生保護制度(4問)

 本科目で出題された項目は、「更生保護の担い手(保護観察官と保護司)」「医療観察制度」など、例年通りの内容と言えますが、内容的には、過去の問題の知識+α、芋づる式の学習ができていないとやや難しく感じたかもしれません。実際、問題148で、少年司法制度、問題150では保護観察の具体的な内容を問う事例問題が出題されました。こちらについては、保護観察でも、遵守事項(一般遵守と特別遵守)、補導援護などの理解が必要になってきます。出題頻度が高い医療観察制度については、その制度の仕組みとともに、社会復帰調整官の役割を理解しておく必要があります。具体的には、「生活環境の調査」「生活環境の調整」「精神保健観察」といった一連の流れを中心に、社会復帰調整官の役割を整理しておきましょう。本項目は、重要なので少し解説しておくと、本制度は、「心神喪失または心神耗弱等の状態で、殺人や放火などの重大な〈他害行為〉をおこなった者で、〈不起訴や無罪〉になった者に対して、その適切な処遇を決定するための手続きなどを定めることによって、〈継続的かつ適切な医療〉ならびに〈その確保〉のために必要な〈観察及び指導〉を行うことにより、その病状の改善及びこれに伴い同様の行為の再発の防止を図り、その〈社会復帰〉を促進すること目的」としています。本科目では、この他、少年法などについても、改めて整理しておくとよいでしょう。

まとめ

 以上、第33回社会福祉士国家試験の午後<専門科目>問題の講評でした。

 試験は、その日の体調や心の動き、さまざまな環境要因や状況などによって、合否に影響を受けます。しかし、結果は結果ですので、それを真摯に受け止めてほしいと思います。また、まだ結果、結論は3月の合格発表までわかりませんので、「果報」は寝て待ちましょう。

 ただ、寝てばかりいても、頭も身体も鈍るでしょうから、試験の見直しと、できなかったところの整理をしておくとよいでしょう。これは、合格圏内にいる方も、不合格が予想される方も一緒です。いや、合格圏内にいる方はなおさらです。なぜならば、合格した方は、これから専門家として重荷を背負って、責任を持ち、自立をしていかなければならないからです。

 私は専門家として、非常に大切に思うことがあります。それは、「無知で関わることほど罪なことはない」ということです。

感謝

 最後になりますが、本講座を1年間ご愛読いただきました皆さんをはじめ、私の教える大学や専門学校の学生の皆さん、スクーリングや講座などでご一緒した皆さん、メールマガジンで1年間ご一緒だった皆さん、社会福祉の実践者や研究者の仲間たち、中央法規出版の皆さん、そして家族や親戚などに、いろいろなかたちで支えられてきました。本当に1年間ありがとうございました。

 本講座は、14年を終え、次年度は15年目を迎えます。この間、いろいろな変化もありました。開設当初は、現場の医療ソーシャルワーカーとして臨床・実践に携わる中、大学や専門学校の非常勤講師、実践研究をしていました。現在は、大学の教員となり、臨床や現場と常につながりを持っています。すっかり白髪も増え、オンライン授業や会議で老眼も一気に進行し、ナイス・ミドル…「ナイス」かどうかわかりませんが、「中年」になりました。

 ここ数年、そして今年も、教育に研究、臨床活動など、休みなく続けてきました。身体的にも、精神的にも大変なこともありました。 ただ、このような経験は、自分の時間を削ってでも確保したい、とても貴重な経験です。このような場を設けていただきました中央法規出版並びに本出版社の編集担当の皆さん、(今年度はCOVID19の影響で中止となりましたが)各地で開催される受験対策講座のサポートをしてくださる営業担当の皆さんには重ね重ね感謝いたします。このように、さまざまな支えがあったおかげで最終回を迎えることができました。感謝です。

 本講座も、年を重ねるごとにどんどんブラッシュアップされ、データの蓄積もされ、問題の分析もより精密になり、パワーアップしています。

 また4月から、さらにリニューアルをして、新たな「社会福祉士になりたい~露木先生の受験対策講座」として戻ってきたいと思いますのでご期待ください。今回の試験で合格した方も、不合格になってしまった方も、社会福祉の発展のために集う場として、このサイトに帰ってきてくださいね。お待ちいたしております。

 最後に、1年間、「社会福祉士になりたい~露木先生の受験対策講座」をご愛読いただきました皆さんの健康と今後の活躍を祈願いたしまして、結びとさせていただきます。

 本当にありがとうございました。

 世界の平和と、皆様の合格を願って。合掌
 令和3年2月吉日
 社会福祉士 露木 信介