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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第22回 「就労支援サービス」のポイント

 さて、今回は、「就労支援サービス」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。今回も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準に即した内容で整理していきます。

本科目のねらい

 本科目の出題基準によると、大項目として、1.雇用・就労の動向と労働施策の概要、2.就労支援制度の概要、3.就労支援に係る組織、団体の役割と実際、4.就労支援に係る専門職の役割と実際、5.就労支援分野との連携と実際の5項目があげられています。

第32回試験をみてみると…

 本科目は4問の出題で、障害者に対する就労支援を中心に、高齢者、生活保護受給者、生活困窮者に対する就労支援の基礎的知識が必要となります。ただし、分野や対象を超えて、広く就労そのものに対する支援に関する問題も出題されています。内容としては、「求職者支援法」や「ハローワーク」に関する基礎的な内容です。こちらは、過去の問題をベースに整理しておきましょう。このほか、障害者の就労支援に関する基礎や応用力を試す事例問題が問われています。「生活保護受給者への就労支援」や「障害者雇用率制度」などからの出題もありますので、確認しておきましょう。

 対策としては、過去の問題をベースに出題されている内容を整理することと同時に、働き方のバリエーションや生活と仕事の調和といった「ワーク・ライフ・バランス」についても必ず整理しておいてください。また、生活困窮者への就労支援についても必ず整理しておきましょう。

 第32回試験では、日本の労働法制について問われています。ここでは、制度の理解や基本的な内容について問われています。また、障害者雇用率制度や福祉事務所の就労支援委員、障害者就業・生活支援センターの支援担当者の支援に関する事例問題が出題されています。これらの用語や制度が不確実な方は、まずは用語の整理からはじめましょう。

各項目の詳細について

1.雇用・就労の動向と労働施策の概要

 本項目では、1)雇用・就労の動向、2)労働法規の概要について理解します。

 1)雇用・就労の動向では、労働市場の動向、ライフスタイルに応じた多様な働き方、障害者の雇用・就労を取り巻く情勢などについての理解が重要です。『厚生労働白書』などの資料を利用して、統計などをみておくとよいでしょう。

 2)労働法規の概要についてですが、労働に関する法律をいくつかあげてみると、(1)労働基準法、(2)労働組合法、(3)労働安全衛生法、(4)労働関係調整法、(5)職業能力開発促進法、(6)最低賃金法、(7)育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律、(8)雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)、(9)高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(高年齢者雇用安定法)、(10)職業安定法、(11)労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(労働者派遣法)などがあげられます。本項目では、これらの関連法規についての知識の習得が重要です。各法の詳細について確認しておいてください。

 以下、いくつかの法律について整理しておきます。

表 労働法規の一覧
名 称内 容
労働基準法「賃金、就業時間、休息などその他の勤労条件に関する基準は、法律でこれを定める」という日本国憲法第27条第2項の規定に基づいて、1947(昭和22)年に制定された法律。この法律では、「労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきでなければならない。労働基準法で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。労働条件は、労働者と使用者が、対等の立場において決定すべきものである」と規定している。
労働組合法「労働者が使用者との交渉において対等の立場に立つことを促進することにより労働者の地位を向上させること、労働者がその労働条件について交渉するために自ら代表者を選出することその他の団体行動を行うために自主的に労働組合を組織し、団結することを擁護すること並びに使用者と労働者との関係を規制する労働協約を締結するための団体交渉をすること及びその手続を助成すること」を目的に制定された法律。
雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(男女雇用機会均等法)従来、社員の募集、採用、配置、昇進を含む全面的な女性差別の禁止、セクハラ規定の整備などが行われていたが、この段階では「差別禁止」はあくまでも「女性」のみを対象としたものであった。しかし、1996(平成18)年の改正において、「男性に対する差別の禁止」も盛り込まれた。この他の本改正のポイントは、「配慮義務」から「措置義務」への変更や男性に対する差別・セクハラも禁止の対象とすること、妊娠等を理由とする不利益取り扱いの禁止などがあげられる。さらに、平成25年度改正では、2014(平成26)年7月からは「間接差別」の対象が拡大し、「すべての労働者の募集、採用、昇進、職種の変更をする際に合理的な理由がないにも関わらず転勤要件も設けることは、間接差別として禁止された。その他の改正のポイントとして、「性差別指針の改正」「セクハラ指針の改正」「コース等別雇用管理指針の制定」などがある。

 さて、過去の問題を見てみると、第32回試験では、日本の労働法制について問われています。問題文を借りて少しだけ解説しておくと、例えば、日本国憲法第28条が保障する労働三権について、「団結権」「団体交渉権」「団体行動権」を問う問題が出題されています。誤りとなる「勤労権」とは、日本国憲法の第27条の「すべて国民は、勤労の権利を有し、義務を負う」とされる基本的人権となります。この他、労働者災害保障保険(労災)の保険料は、労使折半ではなく、「事業主」が負担することや、雇用保険法による「失業」とは、〈被保険者(労働者)が離職し、労働の意思及び能力を有するにもかかわらず、職業に就くことができない状態にあること〉などの基本的な知識を問う問題が出題されています。さらに、最低賃金法の地域別最低賃金は、厚生労働大臣または都道府県労働局長が定めることや、〈使用者が、労働者に1週間40時間を超えて労働させてはならないこと〉ことを規定する労働基準法などについても問われています。こちらは、過去の問題をベースに整理しておきましょう。また、第29回試験では、問題144で「求職者支援法」に基づく求職者支援制度の利用対象について問われました。本法は、雇用保険を受給できない求職者がハローワークの支援により職業訓練を受講し、訓練期間中に訓練受講給付金を受け取ることができる制度です。セーフティーネットで考えた場合、第一のネットは「社会保障・社会保険」ですが、この社会保険(雇用保険)を受給できない求職者が、第三(最後)のネットである生活保護に至ることを防ぐ第二のネットと言えるものです。余談ですが、この第二のネットには、「生活困窮者自立支援制度」も含まれます。さらに過去の問題を見ておくと、第28回試験では、「雇用・労働に関する用語説明」ついて問われています。出題された用語のみを列挙しておくと、「ディーセント・ワーク」「ニート」「ホワイトカラー・エグゼンプション」「ワーク・ライフ・バランス」「ワーキングプア」です。これらの用語については、各自で必ず調べておいてください。今後も、出題される可能性がありますし、本科目を理解するために基礎となる項目です。

 また、本項目では労働に関する統計問題が多く出題されています。例えば、第31回試験では、日本の労働に関する統計が出題され、出典は「労働力調査年報(総務省)」「厚生労働白書(厚生労働省)」「雇用均等基本調査(厚生労働省)」「労働組合基礎調査(厚生労働省)」からです。これらの資料は一読しておきましょう。この他、第27回試験では、最近の雇用・労働状況を知るため、「労働力調査(総務省)」や「雇用均等基本調査」から出題されました。また、第26回試験でも、「労働力調査」における労働力人口に関する内容が問われ、労働力人口とは、「15歳以上の人口に労働参加率をかけたもの」であり、設問肢で言えば、(1)非正規の職員、(2)休業者、(3)内職者、(4)完全失業者であって、15歳未満の者は含まれない。この他、労働法規における施策の対象者についても問われています。ここでは、雇用対策法、職業安定法、職業能力開発法、求職者支援法、障害者雇用促進法について問われました。

2.就労支援制度の概要

 本項目では、1)生活保護制度における就労支援制度、2)障害者福祉施策における就労支援制度、3)障害者雇用施策の概要についての理解が重要です。

 1)生活保護制度における就労支援制度については、生活保護授産施設、社会適応訓練事業、自立支援プログラム、ハローワークの取組などについて整理しておいてください。

 2)障害者福祉施策における就労支援制度については、就労移行支援事業、就労継続支援事業A型、就労継続支援事業B型などについて整理しておいてください。

 就労継続支援A型とは、事業所と雇用契約を結び、作業を行い、給料を受け取る事業です。それまでと変わる部分は、社会保険・雇用保険に加入するということで、国民健康保険との切り替えが必要になります。また、就労継続支援B型とは、就労経験があり、年齢や体力面で雇用されることが困難になった者や就労移行支援を受けたものの雇用に結びつかなかった者に対し、就労の機会や生産活動の機会を提供し、能力が向上した場合は就労に向けた支援を行う事業です。

 3)障害者雇用施策の概要については、障害者雇用率制度、職業リハビリテーションの実施体制などについて理解しておいてください。障害者雇用率制度については、特に重要ですので、必ず確認しておくことをおすすめいたします。

 本項目については、第29回試験以降、1~3問程度出題されています。まず、第32回試験からみてみると、「障害者雇用率制度」について出題されています。次に、第31回試験では、問題144で「被保護者就労準備支援事業(一般事業分)」についてその内容を問う問題が出題されています。少し解説しておくと、本事業は、就労意欲が低い者や基本的な生活習慣に課題を有する者等の支援を充実させるために、生活困窮や自立支援法に基づく「就労準備支援事業」に相当する事業として2015(平成27)年から実施されています。よって、本事業は、日常生活の自立を始め、社会生活の自立、就労の自立を包括する幅広い自立支援の仕組みといえます。この他、第30回試験の問題143では「障害者雇用率制度」について問われています。こちらは、雇用率の変更があり、再度出題される可能性が高い項目です。改正・変更の内容は、(1)法定雇用率の算定基礎に精神障害者が加えられた、(2)民間企業:2.0から2.2%へ、国・地方公共団体等:2.3%から2.5%へ、都道府県等の教育委員会:2.2%から2.4%へと引き上げられたなどがあります。次に、問題144は、生活困窮者自立支援制度について問われています。内容としては、自立相談支援事業を行う責務を有する組織・機関を問うもので、答えは「市及び福祉事務所を設置する町村又は都道府県」です。

3.就労支援に係る組織、団体の役割と実際

 本項目では、1)国の役割、2)市町村(福祉事務所)の役割、3)都道府県の役割、4)ハローワークの役割と活動の実際、5)職業リハビリテーション機関の役割と活動の実際、6)障害福祉サービス事業所・障害者支援施設の役割などについての理解が重要です。

 特に、5)職業リハビリテーション機関の役割と活動の実際については、ハローワークにおける障害者の職業相談・職業紹介、地域障害者職業センターにおける職業リハビリテーション、障害者就業・生活支援センターの取組についてよく整理しておいてください。過去の問題を見てみると、第32回試験では、福祉事務所の就労支援員の業務について問われています(問題145)。この他、第31回試験では、就労支援を担う機関を問う問題を出題されています(問題145)。問題の答えとしては、「地域障害者職業センター」ですが、このほかの機関として「障害者就労・生活支援センター」「障害者職業能力開発校」「ハローワーク」などが出題されていますので、それぞれの機関の名称とその役割や機能について整理しておきましょう。第30回試験では、「障害者就労支援センター」の支援担当者が考える連絡先に関する事例問題が問われています。また、第29回試験でも、「ハローワーク」に関する基礎的な内容と、「障害者就業・生活支援センター」の就業支援担当職員(社会福祉士)の対応事例について問われています。また第28回試験でも、「障害者就業・生活支援センター」について問われました。こちらについては、過去の問題をベースに整理しておきましょう。また第26回試験でも、「ハローワークの行う業務」について問われました。詳細の内容については、各自確認しておいてください。これをきっかけに、「ハローワーク」の業務内容について整理しておきましょう。一言だけ解説を加えると、ハローワークは、特別な労働者や求職者が利用する施設ではなく、我々働く者すべてが利用する施設であるということです。

4.就労支援に係る専門職の役割と実際

 本項目では、1)生活保護制度に係る専門職の役割、2)障害者福祉施策に係る専門職の役割、(3)職業リハビリテーションに係る専門職の役割についての理解が重要です。

 1)生活保護制度に係る専門職の役割では、現業員の役割についてよく理解しておいてください。また、2)障害者福祉施策に係る専門職の役割では、サービス管理責任者の役割、就労支援員の役割について整理しておいてください。さらに、3)職業リハビリテーションに係る専門職の役割については、職場適応援助者(ジョブコーチ)、障害者職業カウンセラーについてよく理解しておいてください。

 ここでは、職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業について、少し整理しておきます。ジョブコーチは、援助に出向いて障害者―事業主―従業員に対して障害者の職場適応に必要な助言を行い、職務や職場環境などの改善を提案するなど、必要な支援を継続しながら障害者の支援方法を事業所の担当者に伝達し、支援の主体をジョブコーチから事業所の担当者に徐々に移行していきます。

 第32回、第31回、第30回、第29回試験では、前述の障害者就業・生活支援センターの支援担当者の対応事例が本項目に該当します。また、第28回試験では、問題144の「福祉事務所の就労支援員の役割」について、問題146の「生活困窮者自立相談支援事業」などに関する相談支援員の対応に関する事例問題が出題されています。また、第27回試験では、問題145で、就労継続支援B型事業所で働く利用者の尊厳を守るために、工賃の高い仕事をどのように確保していくかを問う事例問題でした。この問題は、非常に現場の現状や状況を踏まえた事例問題となっています。

5.就労支援分野との連携と実際

 本項目では、1)ハローワークとの連携(生活保護制度関連)、2)障害者雇用施策との連携、3)障害者福祉施策との連携、4)教育施策との連携についての理解が重要です。

 1)ハローワークとの連携では、生活保護制度におけるハローワークとの連携の方法、連携の実際についての理解が重要です。

 2)障害者雇用施策との連携では、職業リハビリテーション機関との連携の方法、連携の実際についての理解が重要です。

 3)障害者福祉施策との連携では、障害福祉サービス事業所・障害者支援施設との連携の方法、連携の実際についての理解が重要です。

 4)教育施策との連携では、特別支援学校との連携の方法、連携の実際についての理解が重要です。

 これらの就労支援分野との連携についてはとても重要です。連携や協働の基本は、他職種である相手の役割や機能をこちら側がよく理解することです。そのためにも、ほかの就労支援分野の団体や組織がどのような役割と機能を有しているのかをしっかりと理解しておいてください。

 以上が、「就労支援サービス」のポイントです。

 次回は、「更生保護制度」の具体的な内容、ポイントについて解説していきます。

 いよいよ、最後の科目になります。本科目と共に、次回の「更生保護制度」は出題数としては150問中4問と、ほかの科目に比べて少ないですが、社会から社会福祉士に期待・要請されている分野です。社会福祉士は、社会からの期待や要請に応えるべく、日々新たな知識や技術を習得し、社会に貢献できるように研鑽を積んでいかなければなりません。

残暑厳しいですが

 残暑厳しいですが、夏も終わりに近づいていますね。暦の上ではもう秋ですし。夏が「国家試験の本番」と考えていた方も多いのではないでしょうか? しかし、「なかなか捗っていない」というのが本音ではないでしょうか? 進捗状況は人それぞれだと思いますが、現時点で基礎となる用語についてはマスターしておく必要があります。夏を9月までと延長して考えても、「9月末までには」基礎をしっかり整理していることが重要です。10月以降の秋からは過去の問題や模擬問題をどんどん解いていくことになります。その時、やはり基礎となる知識、用語の理解は不可欠です。

 夏を乗り越え、秋、そして冬の国家試験当日まで、一緒に頑張りましょうね。天候が不安定ですので、お体を大切にしてください。

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