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露木先生の受験対策講座

露木 信介(つゆき しんすけ)

プロフィール露木 信介(つゆき しんすけ)

社会福祉士(認定社会福祉士・医療分野、認定医療社会福祉士)、社会福祉学修士。
 現在、東京学芸大学教育学部ソーシャルワークコースで教員をするとともに、他大学や他専門学校での非常勤講師、現場におけるスーパービジョンや職員研修などを行っている。大学教員になる前は、病院でチーフ・ソーシャルワーカーとして管理業務や相談業務を行っていた。
 受験関係では、社会福祉士、精神保健福祉士、介護福祉士等の養成講座の講師、受験テキストや模擬試験問題の作成、受験対策講座の講師などを行っている。

第7回 「現代社会と福祉」のポイント

 さて、今回は、「現代社会と福祉」の具体的な内容、ポイントについて解説していきたいと思います。今回も、公益財団法人社会福祉振興・試験センターが示す出題基準が示す出題基準に即した内容で、整理していきます。
 ジメジメとした梅雨もありますが、目標や課題を作って学習を進めるとよいと思います。でもわたし、外に出かけたり、旅に出たりも好きですが・・ 自宅で、コーヒーやワインを飲みながら、本を読んだり、音楽を聞いたりするの好きなんです。たまに、楽器を弾いたり、料理を作ったり・・・ マイペースに過ごす時間もいいですよね。梅雨時は、雨音で外界が静かなので、自分の体や心の声が聞こえてきそうで、自分を見つめ直すことができます。

本科目のねらい

 本科目の出題基準によると、大項目として、1.現代社会における福祉制度と福祉政策、2.福祉の原理をめぐる理論と哲学、3.福祉制度の発達過程、4.福祉政策におけるニーズと資源、5.福祉政策の課題、6.福祉政策の構成要素、7.福祉政策と関連政策、8.相談援助活動と福祉政策の関係の8つがあげられています。

 本科目も、前回の「社会理論と社会システム」と並んで、苦手意識をもっている人が多い科目です。上記の出題基準の8項目を見て、もうすでに不安を感じている人も多いのではないでしょうか。しかし、「社会理論と社会システム」も本科目も、まずは専門用語をきちんと理解したうえで、着実に整理しながら学習することが大切です。

 そうすることで、自然と力が身につき、得点力が上がっていく科目だと思います。また、本科目では、新しい制度や政策についてしっかりと学習することで、さらなる得点が見込めます。まずは、専門用語の整理からじっくりと始めていきましょう。

第32回試験をみてみると…

 まず、第32回試験を概観してみましょう。本科目の出題基準では「福祉制度の発達過程」、つまり歴史的な変遷や内容を問うことになっていますが、近年の傾向として、福祉政策の課題や現代における福祉制度や福祉政策に関する内容を問う問題が多く出題されています。現在、社会や政治に関するニュースでも、貧困・所得格差や景気・雇用対策、税と社会保障制度、社会福祉に関する議論が盛んに行われており、このあたりは社会福祉士にとって必須の知識と言えそうです。このほか、在留外国人や外国人材、性的マイノリティやSDGsに関する問題、女性の地位や権利の問題、虐待や暴力に関する問題なども、現代社会を理解するために必要な知識となります。

 第32回試験では、問題24で、我が国における1950年代から1970年代にかけての社会福祉の理論について問われ、問題24では、イギリスの「ベヴァリッッジ報告」、問題26は我が国の「福祉元年(1973年(昭和48年))」の福祉政策など、歴史的な福祉制度について問われています。

 一方、問題23では「ニッポン一億総活躍プラン」や、問題27は「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」、問題28「SDGs」、問題29では「社会福祉法改正」など、近年の福祉の動向や福祉制度に関する問題が問われています。

 また、近年の動向としては、貧困に関する基礎知識は重要で、 OECDの相対的貧困率をはじめ、ジニ係数、子どもの貧困率などの理解が必要となります。このほか、日本における人口動向について、「厚生労働白書」は必ずチェックしておきましょう。同様に、世帯や婚姻、国民の生活の動向については、「男女共同参画白書」「少子化社会対策白書」「国民生活基礎調査」「世界幸福度報告書」から統計をチェックしておきましょう。さらに、労働と福祉についても、重要項目と言えます。第31回試験では、「介護・育児休業法」や「最低賃金制度」などが出題されていますので、過去の問題をベースに整理しておきましょう、過去の問題を見てみると、「ベーシックインカム」「アクティベーション」「ワークフェア」「ワーク・ライフ・バランス」「フレキシキュリティ」などの用語が出題されています。不確実な用語がある場合は、用語辞典ワークブックなどで必ずフォローしておきましょう。
 このように、現代社会を福祉学的に理解するために必要な理論や原理を始め、現代社会で起こるさまざまな社会問題を福祉学的に理解することが、本科目の目標と言えます。つまり、常に、社会問題を福祉学的にどのように理解し、解決していくのか考えておくことが重要です。まずは、ニュースや新聞で、現代社会のさまざまな問題を観察してみてください。今年度は、「COVID19(新型コロナウイルス)」関連の福祉政策などについて問われる可能性が高いです。

 個人を傷つけたり、貶めたり、誰かを一方的に批判したり、暴力的な強い言葉の報道ばかりに目や耳を傾けるのではなく、客観的で、冷静な判断にもとづき、福祉の制度や政策、国の取り組みなどを新聞やニュースなどからキャッチしておきましょう。福祉専門職である社会福祉士は、「口ばかりで、文句ばかり言う集団、専門職」ではなく、「実行できる集団、専門職」でなければいけません。どの社会にも、不平不満はあり、社会は常に不完全です。だからこそ、社会福祉士は行動することで、この不完全な社会を少しでも良くできるように、色々と創意工夫するのだと思います。それが、「社会」福祉士の存在価値だと思います。

 以上のことからわかるように、本科目は、まずは専門用語をしっかりと理解すること、そのうえで制度や福祉の概念や動向などを整理することが重要といえます。また、近年の統計資料についても一読しておく必要があることがわかります。では、出題基準で取り扱われる8つの項目をもとに整理していきます。

各項目の詳細について

1.現代社会における福祉制度と福祉政策

 本項目は、1)福祉制度の概念と理念、2)福祉政策の概念と理念、3)福祉制度と福祉政策の関係、4)福祉政策と政治の関係、5)福祉政策の主体と対象に分けられています。

 この5つの項目は、現代社会における福祉制度の意義や理念などについて理解するうえで非常に重要な項目です。したがって、どの項目もしっかりと学習しておく必要があります。本科目の基礎となる概念や理念、用語については、テキストを利用して再確認しておいてください。この項目を曖昧なままにして学習を進めていくと、後で関連項目の理解が困難になったり、混乱したりすることになります。

 本項目に直接的に関係する出題は近年ありませんが、本項目は、本科目の基本的な内容となり、本科目を攻略するためにも、福祉制度や福祉政策の概念と理論を整理しておきましょう。過去の問題をみておくと、第25回試験では「社会福祉制度と社会保障等の政策の関連」について問われました。この問題では、福祉制度の概要や理念及び歴史的な変遷など、非常に広範な知識が問われました。また、第24回試験では、福祉制度の分類が問われ、具体的には「社会保障制度審議会による社会保障の枠組み」に関する問題が出題されました。
 以上、本項目では、基礎的な内容であったり、基礎的な用語をきちんと整理、理解していることが重要です。また、本項目は、次項目以降にも関連する基礎知識であるため、特に夏休み前までに整理しておきましょう。

2.福祉の原理をめぐる理論と哲学

 本項目では、1)福祉の原理をめぐる理論、2)福祉の原理をめぐる哲学と倫理についての理解が必要とされます。

 1)福祉の原理をめぐる理論では、社会政策と社会福祉の関係性や社会福祉(社会事業)政策の成立、社会福祉の補充性、社会福祉の固有性、現代社会において社会福祉が果たすべき役割や機能などについて整理しておく必要があります。

 2)福祉の原理をめぐる哲学と倫理については、思想や哲学のもつ意味をはじめ、福祉の思想・哲学の前提となる人間観、福祉観、援助観や社会観、福祉の思想や哲学、福祉専門職の倫理などが重要なポイントとしてあげられます。

 内容を概観した段階では難しく思ってしまいがちですが、丁寧に読み進めると、福祉そのものの考え方や捉え方を理解することができます。テキストを活用して、しっかりと整理しておいてください。
 本項目では、第32回試験の問題24「社会福祉の理論」や、第31回試験の問題23「福祉社会づくり」に関する問題が出題されています。人名と用語(理論)を理解しておく必要がありますので、過去の問題をベースに整理しておきましょう。なお、第30回試験では、問題22でロールズの「正義」について問われました。過去の問題の選択肢を借りると、「社会で最も不遇な人の最大の便益となるように、資源再配分の是正が行われるべき」と、ロールズは「正義」について論じています。また、第29回試験では、問題22でセンが提唱した「潜在能力」について問われています。この他、第28回試験では、問題22「レジーム理論:エスピンーアンデルセン」や問題23「正義論:ロールズ」が該当します。
 まず、前述の「レジーム理論」について少し解説しておくと、「レジーム」とは、「体制」「制度」「政権」などの意で用いられ、さらには「政策と制度構造」と訳されています。つまり、「福祉レジーム」とは、「国家や、市場、家族という福祉を担うと考えられるセクター間における福祉の生産と分配のバランスおよびその結果をもたらす政策と制度構造のあり方」といえます。エスピン-アンデルセンは、福祉国家を、(1)自由主義レジーム、(2)社会民主主義レジーム、(3)保守主義レジームの3つに類型化しました。
 次に、後述の「正義論」ですが、「(社会)正義」とは、限りある資源を公平に分配する方法であり、ロールズの正義論は、「第一原理:全ての人は他者の自由を侵害しない限りにおいて、最大限の自由をもつという考え」と「第二原理:機会均等の原理及び格差の原理」の2つからなると言っています。詳細については、必ず過去の問題にあたってください。

 さらに過去の問題を見ておくと、第27回試験では、問題22「貧困及びニードの捉え方」や問題23の「社会的リスク」が該当します。この「社会的リスク」については、「ベヴァリッジ報告」との関連で出題されています。ベヴァリッジ報告は、イギリスの戦後社会保障制度を準備する設計図となったもので、1942年に発表されています。本報告の基本理念は、「国の責任を最低限度の生活とし、快適生活については私的責任」とするものです。ベヴァリッジについては、出題頻度も高く、過去の問題をベースに整理しておきましょう。このほか、「日本における相互扶助」に関してもその基本的な原理、理念について問われています。また、第26回試験では、問題22で、「社会的排除と社会的包摂」に関する問題が問われました。現代の福祉政策や課題としては、地域社会は、地域の閉塞性による「社会的排除(=ソーシャル・エクスクルージョン)」ではなく、外に開かれた地域を創造することで「社会的包摂(=ソーシャル・インクルージョン)」を実現する場にすることが求められています。そして、このような社会を「共生社会」といいます。この社会的包摂を進めるためには、社会の中にセーフティネットが整備される必要があります。このような、現代的な課題があります。
 本項目の、学習のポイントとしては、日本の研究者たちの福祉の原理をめぐる理論や哲学の整理をしておくことです。さらに、1990年代以降に出された数々の法律は、福祉ニーズの変化や拡大に対応するものであり、これらは社会福祉の拡大と変容といえます。これらの概念については、テキストワークブックなどで確認しておきましょう。

3.福祉制度の発達過程

 本項目は、1)前近代社会と福祉、2)産業社会と福祉、3)現代社会と福祉に分けられています。

 まず、1)前近代社会と福祉では、1600年代から続く第一次囲い込み運動やその後1800年代半ばから後半の社会変化や貧困などの社会問題を背景に福祉が対応していきます。例えば、救貧法、慈善事業、博愛事業、相互扶助などの民間および公的救済制度の整理が必要となります。

 次に、2)産業社会と福祉では、1800年代後半のいわゆる産業革命を代表とする資本主義社会の台頭、都市化や貧困の問題といった社会問題を背景に、福祉が対応していきます。具体的には、慈善救済事業、社会事業の発達などがあげられます。これらには、慈善組織協会(COS)やセツルメント運動などの活動が対応しています。さらに、社会調査で明らかになった貧困問題が、個人の問題ではなく社会全体の問題であるということが一般化され、その後、1950年頃までは、社会保険・社会保障の発達、福祉国家の成立などが福祉の大きな目的となりました。

 最後に、3)現代社会と福祉では、第二次世界大戦後の窮乏社会と福祉、経済成長と福祉、その後の新自由主義、ポスト産業社会、グローバル化、リスク社会、福祉多元主義、この他、地域福祉の推進などが重要です。

 第32回試験では、イギリスの「ベヴァリッジ報告」が問われ、第31回試験でもイギリスにおける福祉政策について問われています。用語だけ列挙しておきますので、必ず各自で整理しておきましょう。「エリザベス救貧法」「労役場テスト法」「ギルバート法」「新救貧法」「国民保険法」です。また、第30回試験では、問題24で「日本の社会福祉制度に関する歴史」について問われています。具体的な制度としては、恤救規則、行旅病人及行旅死亡人取扱法、感化法、救護法、児童虐待防止法です。こちらは、過去問ベースで、用語にあたっておきましょう。また、第29回試験では、問題25で「イギリスの貧困調査」について、ラウントリーの実施したヨーク調査について出題されています。また、「日本の福祉」について、社会福祉事業法制定時における社会福祉法人創設の趣旨について問われています(問題24)。こちらは、近年の社会福祉法人大改革を合わせて整理しておきましょう。現行法は、社会福祉士法が根拠法となります。少しだけ解説しておくと、社会福祉を基礎から支える法律に「社会福祉法」があります。この法律は、2000年に改正・改名されました。その前身となる法律が「社会福祉事業法(1951年)」です。では、なぜ2000年に改正・改名されたのか? それは「福祉のあり方」が2000年に大きく変わったからです。何が大きく変わったのか? それは、福祉が「措置」から「契約」へと変わりました。現代の福祉は、「契約制度」を基礎としています。ですから、「利用者」であり、「サービス」なのです。※措置制度の時は、「対象者」であり、「処遇」でした。ここで見ておきたい問題が、第32回試験の問題22「社会福祉法の内容」や問題29「社会福祉法の改正(地域における公益的な取組)」、問題26の「福祉元年」に実施した福祉政策などです。こちらは過去問題をベースに整理しておきましょう。

 さらに過去の問題を整理しておくと、第28回試験では、問題24で「イギリスにおける貧困対策の歴史」について問われました。こちらは、基礎的な問題です。1601年のエリザベス救貧法をはじめ、1934年新救貧法、その後、貧困に対する社会的なムーブメントとしてCOS(慈善組織協会)、セツルメント運動など、それを後押しする社会調査(ブースやラウントリー)、さらにヴェッブ夫妻の「ナショナル・ミニマム」などを関連づけて整理しておきましょう。この内容は、「地域福祉の理論と方法」や「相談援助の基盤と専門職」でも出てくる知識です。このほか、第27回試験では、日本の救貧制度の対象者に関する内容が問われています。その救貧制度とは、恤救規則(1874年)、軍事救護法(1917年)、救護法(1929年)、旧生活保護法(1946年)、現行生活保護法(1950年)です。これらの制度については、出題頻度も高く、重要な日本の救貧制度ですので、必ず整理しておいてください。また、第25回試験では、問題24で、スウェーデン、アメリカ、イギリス、ドイツ、日本などの福祉社会の歴史に関する問題が問われています。年代は、戦後の1960年代から1980年代までの内容となっています。このように、本項目では、福祉制度の発展過程(歴史)に関する内容が問われますが、比較的近年の1990年代以降の内容も整理しておくことが重要です。

 これらの問題は、一度しっかりと用語を押さえ、その時代背景とともに福祉の対象や福祉観などを押さえながら学習すると、効率よく学ぶことができます。また、戦後に出された福祉六法をはじめ、障害者福祉関連法、先ほどもお話ししましたが、1990年代および2000年代以降の法律に関しては、必ずチェックしておいてください。

4.福祉政策におけるニーズと資源

 本項目は、1)需要とニーズの概念、2)資源の概念の2つに分けられています。

 「需要」と「ニーズ」の概念について考えてみますと、まず「需要」についてですが、「必要」と「需要」を比較する場合があります。ここでは詳細を解説することができませんが、『新・社会福祉士養成講座 第4巻 現代社会と福祉』では以下のように整理されています。

<<必要と需要の対比>>
 必要需要
根拠道徳・価値欲望・欲求
根拠の性質客観的・外在的主観的・内在的
判断基準善悪(正・不正)利害(快・苦)
出典:社会福祉士養成講座編集委員会編『新・社会福祉士養成講座 第4巻 現代社会と福祉<第4版>』中央法規出版、161頁、2014年

 次に、「ニーズ」についてですが、ニーズについてはさまざまな研究者によって整理されているので、テキストを活用しながら学習しておいてください。例えば、潜在的ニーズと顕在的ニーズ、貨幣的ニーズと非貨幣的ニーズ、規範的ニーズと比較的ニーズ、感知(感得)されているニーズと表明されたニーズなどです。

 資源の概念について整理してみると、社会政策の資源とは、「報酬」と「用具」に分類できます。「報酬」とは、必要の充足にとって直接役に立つ資源であり、雇用機会の提供や職業訓練といった「現物給付」として提供されます。また、「用具」については、「現金給付」といった必要の充足にとって間接的に役に立つ資源を言います。そのほか、社会資源とは、ニーズを充足するさまざまな物資や人材の総称で、具体的には、制度や政策、法律、施設、サービス、備品、資金、情報、知識、技術、人材などがあげられます。

 過去の問題をみてみると、第29回試験で、「個人の福祉ニード」について問われています。ここで押さえておきたいのは、ブラッドショーのニードの4分類です。それは、「フェルト・ニード(感得されたニーズ)」「ノーマティブ・ニーズ(規範的なニード)」「エクスプレスト・ニード(表出されたニード)」「コンパラティブ・ニード(比較ニード)」です。詳細については、各自で整理しておきましょう。このほか、第28回試験では、「福祉サービス利用者のニーズ」に関する内容が問われています。こちらは過去問をベースに整理しておいてください。また、第27回試験では、「福祉サービスのニーズを充足するための資源」と「受益と負担」について問われています。さらに、第26回試験でも、問題24で「ニーズ」そのものについて問われています。非常に基本的な内容ですので、問題ベースで振り返りをしておいてください。さらに第23回試験では、「ラショニング(配給・割当)」に関する問題が出題されました。

 ラショニングとは、イギリスで発展した概念で、「希少な資源を、市場メカニズムを用いずに、これを必要とする人々に供給するための方法」のことを言います。

 以上、ニードについては、基礎的な内容が中心ですが、しっかりと整理しておいてください。まずは、過去問ベースで、テキスト過去問解説集の解説などをもとに整理してみましょう。

5.福祉政策の課題

 本項目は、1)福祉政策と社会問題、2)福祉政策の現代的課題、3)福祉政策の課題と国際比較(国際動向を含む。)に分けられています。

 1)福祉政策と社会問題では、具体的には、貧困、孤独、失業、要援護(児童、老齢、障害、寡婦)、偏見と差別、社会的排除、ヴァルネラビリティ(他者からの攻撃や搾取などを招きやすい脆弱性や誘発性)、リスクなどがあげられます。そのほか、自殺、犯罪、非行、公害、ハラスメント、DV(ドメスティック・バイオレンス)、児童虐待や高齢者虐待、いじめ、環境破壊などもそうでしょう。これらについては、まず用語の正しい理解と、関連する法律や制度を整理しておくことが重要です。また、統計などの最新の情報や新聞などで取り上げられている話題についてもよく理解しておく必要があります。社会福祉士は、このような社会問題に敏感である必要があります。さらに、これらの社会問題と福祉政策を関連づけて理解しておく必要があります。つまり、2)福祉政策の現代的課題に関係してくるわけです。前述した社会問題のほかにも、ソーシャルインクルージョン(社会的包摂)、社会連帯、セーフティネットなどの知識が必要となります。そして、3)福祉政策の課題と国際比較(国際動向含む。)では、国際比較について整理しておく必要があります。この国際比較(国際動向)については、比較的近年のデータを見ておく必要があります。統計資料や「厚生労働白書」(厚生労働省)などを中心に確認しておきましょう。

 本項目は、過去の問題でも、非常に現代的な福祉政策・制度の課題について問われています。例えば、第32回試験では、前出しておりますので、第31回試験では「ヘイトスピーチ解消法」「性同一性障害や性的指向・性自認」などです。また、第30回試験では「障害者差別解消法」、第29回試験では「自殺対策基本法」や「社会保障制度改革国民会議報告書~確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」、第28回試験では「生活困窮者自立支援制度における自立支援のあり方」、第27回試験では、社会保障制度改革国民会議報告書(2013年)における社会保障制度改革の考え方と方向性」に関する具体的内容を問う問題が出題されています。また、第26回試験では「我が国における虐待及び暴力に関する法律について」「在留外国人について」「社会的排除及び社会的包摂について」が、本項目に該当します。

 最後に、福祉政策の課題と国際比較(国際動向)については、近年の出題はありませんが、社会福祉士は、ミクロ・システム、メゾ・システムのへの介入かつ視点とともに、マクロ・システムへの介入も重視されています。つまり、社会福祉士にとって、国際福祉の知識は重要で、ソーシャルワークの定義 (IFSW)の用語を借りれば、「グローバル」「リージョナル」といった、地球規模の問題とともに、各地域・地区(北アメリカ、南アメリカ、アジア太平洋、ヨーロッパ、アフリカ)の福祉に関する関心や介入が重要となってきます。国際福祉の今後の課題としては、問題解決のシステムづくりがあげられます。このとき重要なのは、地球規模(グローバル)、各地域・地区(リージョナル)で問題を分析するマクロ的な視点と同時に、当事者を個別的に捉えるミクロ的な視点です。国際福祉で取り上げる問題が莫大で、漠然としているため、遠い異国の人々の問題であるとして、我われの生活と切り離して考えがちですが、この問題解決に重要なことは、我われ先進国に住む人々の生活のあり方が大きく関連していることを理解しておくことです。つまり、同時代に住む人間であるという視点に立ち返ることが重要なのです。

 このように、本項目は、非常に多くの現代的福祉政策の課題に関する問題が出題されています。社会福祉士として、現代の福祉問題や福祉政策の課題について的確に理解されていることが重要だと思います。

6.福祉政策の構成要素

 本項目は、1)福祉政策の論点、2)福祉政策における政府の役割、3)福祉政策における市場の役割、4)福祉政策における国民の役割、5)福祉政策の手法と政策決定過程と政策評価、6)福祉供給部門、7)福祉供給過程、8)福祉利用過程の8つに分けられています。

 まず、1)福祉政策の論点ですが、ここでは、効率性と公平性、必要と資源、普遍主義と選別主義、自立と依存、自己選択とパターナリズム、参加とエンパワメント、ジェンダー、福祉政策の視座などがあげられます。2)福祉政策における政府の役割、3)福祉政策における市場の役割、4)福祉政策における国民の役割、5)福祉政策の手法と政策決定過程と政策評価については、1)福祉政策の論点と関連する内容なので、連動させて整理しておいてください。

 また、6)福祉供給部門では、政府部門、民間(営利・非営利)部門、ボランタリー部門、インフォーマル部門について、7)福祉供給過程では、公私(民)関係、再分配、割当、行財政、計画について、8)福祉利用過程では、スティグマ、情報の非対称性、受給資格とシティズンシップについてのそれぞれ整理が必要となります。

 第30回試験では、問題25で「社会的企業」について問われ、選択肢の文章を借りると、社会的企業とは、「社会的な困難や課題に取り組む組織」と説明ができます。このほか、問題29では「福祉サービスのプログラム評価の方法」についても問われています。こちらも、問題にあたってみると「評価の次元は、投入、過程、産出、成果、効果性」と説明しています。さらに過去の問題を見ておくと、第29回では、OECDの「より良い暮らし指針(問題23)」や、「社会保障制度改革国民会議報告書における社会保障制度改革への提案(問題26)」が問われていますので、過去問をベースに整理しておきましょう。第28回試験では、問題29で「福祉サービスにおける準市場(擬似市場)について問われています。「準市場」とは、介護や福祉、医療、教育などの公的サービスにおいて、部分的に市場原理を導入している場合の総称で、現金給付の利点を活かして問題点を抑制する方策として、市場を規制し準市場を形成して、それを通した給付も行われています。次に、第27回試験では、福祉制度(法律)の「自立」について問われています。出題された法律を列挙しておくと、「配偶者からの暴力の帽子及び被害者の保護等に関する法律(2001年)」「子ども・若者育成支援推進法(2009年)」「社会保障制度改革推進法(2012年)」「子どもの貧困対策の推進に関する法律(2013年)」「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律(2013年)」です。これらの法律については、必ず一読しておいてください。今年度も、本科目以外で出題される可能性が高い法律ばかりです。また、第26回試験では、「女性の地位」に関する問題を本項目に関連するものですが、問題28の「福祉サービスの供給の仕組み」が問われています。また、問題29の「福祉施策に関する社会福祉法の規定」についても問われました。現代の社会問題を福祉的に理解し、福祉施策としてどのように取り扱うのか、さらにその福祉を取り決める社会福祉法では、どのように規定しているのか、この辺りを整理しておく必要がありそうです。

 本項目の勉強法は、過去問をベースとし、不明な用語等については、用語辞典過去問解説集の解説、テキストなどを幅広く活用し整理しましょう。

7.福祉政策と関連政策

 本項目は、1)福祉政策と教育政策、2)福祉政策と住宅施策、3)福祉政策と労働政策に分けられています。関連政策とはいえ、福祉と密接に関連している政策のため、各政策については法律を含めて理解しておく必要があります。近年の動向を加味すると、教育政策や労働政策と、福祉政策は密接に関わりのある政策といえます。

 第32回試験では、「福祉政策と教育政策」から、問題30の「不登校児童生徒への支援」について問われました。この他、第31回試験では、「福祉政策と労働政策」から「日本の最低賃金制度」について問われ、第30回試験では、「福祉政策と住宅施策」から「住宅セーフネット法」について問われています。本法は、高齢者や障害者などの住宅確保困難な人々に対する支援法ですが、住宅確保要配慮者には、「子育て世帯」も含まれます。また、第29回試験では、前述しましたが、「家族を介護するものの仕事と介護の両立の状況と課題」について問われました。第28回試験では、「高齢者の居住の安定確保」について、第27回試験では、福祉と就労の関連をめぐる政策について問われています。さらに第26回試験では、問題30で「福祉政策と住宅施策」として、「福祉に関する住まい」に関する問題が出題され、問題31で「福祉施策と労働施策」として、「我が国の雇用保険制度」について出題されました。この出題も、私個人的には非常に重要だと思っています。第25回試験では、問題30で「教育政策」について問われました。第24回試験は、「労働政策」に関する問題が出題されました。第23回試験は、「住宅政策」に関する問題でした。

 このことから、福祉政策と教育、住宅、労働は、非常に重要な関係にあることがわかります。今後も出題される可能性が非常に高いと思いますので、制度(法律)や政策を必ずチェックしておいてください。特に、本年度は教育施策との関連について確認しておいてください。

8.相談援助活動と福祉政策の関係

 本項目は、福祉供給の政策過程と実施過程についての理解を求めています。主に、福祉多元社会論の歴史や、福祉多元社会論を語らしめる社会、さらに、福祉多元社会論のとらえ方や、国家と政策の位置関係、今日における福祉政策と供給の実施過程についての整理が必要となります。福祉多元社会論については、とても重要な概念ですのでよく学習しておいてください。

 また、第32回試験では、問題31で社会保障審議会福祉部会に設置された福祉人材確保専門委員会の「ソーシャルワーク専門職である社会福祉士に求められる役割等について」から出題されています。こちらは過去問題を必ず見ておいて欲しいのですが、設問文を借りて説明すると〈社会福祉士には、地域課題の解決の拠点となる場づくり、ネットワーキングなどを通じて、地域住民の地域支援をこなうことが求められている〉ということです。

 以上が、「現代社会と福祉」のポイントです。聞きなれない専門用語や概念などが出てくる科目ですし、盛りだくさんの内容が含まれている科目でもあります。そのため、前回の「社会理論と社会システム」と同様に、暗記を要する科目となりますので、早い段階で一度、重要項目について整理し、そのうえで諸々の学習を始めてください。その後、過去問解説集模擬問題集を繰り返しながら学習していくと力がつきます。
 次回は、「地域福祉の理論と方法」の具体的な内容、ポイントについて解説していきます。

難しい人間関係

 我々、対人援助職は、常に「人」と関わり、支援を行っています。それは、「クライエント:利用者」であったり、その家族であったり、職場の仲間やチームを組むメンバーであったり、上司や部下、関係先の人々などです。そして、この「人」との関わり、関係性は非常に難しいところであり、また面白いところでもあります。

 しかし、みなさん、この人間関係に多かれ少なかれ苦労しているのではないでしょうか?

 対人援助者は、人が好きでなければできない仕事ですが、これは人間関係が上手ということとは少し違います。我々は、人と関係をもつ際、相手に完璧を望むため、相手に「欠陥」や「ミス」があると、ついイライラとしてしまいます。それは相手も同じで、相互作用的に関係は悪化していきます。

 そんな時、考え方を少し転換してみると、難しい人間関係をよくする方策が見つかるかもしれません。それは、「人間にはみんな、欠陥があるものだ」と考えられるかだと思います。「欠陥」というと、語弊があるかと思いますが、「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」と言い換えてもよいでしょう。そして、この「欠陥」、即ち「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」を「愛せるか/許せるか」ということが大事だと思います。

 つまり、最終的には、完璧でない欠陥や脆弱さをもつ人を「愛せるか」ということなのだと思います。これが人と関わることの「面白さ」です。そして「私」自身にも、そんな「脆弱さ」や「弱み」、「過ち/誤り」はあり、それを自ら受け入れられるか、自ら愛せるかが重要となってきます。そうすることで、相手を受け入れ、愛していけるのだと思います。

 しかし、今の日本は、この「脆弱さ」「弱さ」「過ち/誤り」を許容できない【世知辛い】世の中になってきてしまっている気がします。「脆弱や弱さ」「過ち/誤り」を許さない、評価・監視社会になっている気がします。我が国の目指す地域包括社会とは、人を評価し、監視し合う地域づくりではなく、緩やかな結びつきで繋がる弾力性のある地域づくりだと思うのですが… 皆さんはどう思いますか?

===新型コロナウイルスについて===
 最後に、本講座も、多くの方に受講していただいておりますので、
 皆様とともに、注意喚起を共有できればと思います。

 自身への感染を防ぐことはもとより、周囲の人々、大切な人々、愛する人々の
 ウイルスを拡散しないためにも、不要不急の外出は自粛しましょう。
 不要不急の外出の場合は、
 (1)喚起の悪い密閉空間
 (2)多数が集まる密集場所
 (3)近距離での会話や発声をする密接場面
 を避ける行動を意識しましょう。

 自宅にいましょう。外出を自粛、控えましょう。STAY HOME!!!   皆さんで、協力してこの難局をのりこえましょう。

 〈新型コロナウイルスの感染が疑われる場合の方は〉
 躊躇せず相談してください。 自己判断せず、必ず相談をしましょう。

 最後に、 この度の新型コロナウイルス(COVID19)で、大切な方が罹患され治療中である
方や、ご不幸にもお亡くなりになられた方もいらっしゃるかと思います。
お見舞い、そしてお悔やみ申し上げます。

■お知らせ■
 本講座とは直接関係性はありませんが、私のメールマガジン【社会福祉士をめざす「露木先生の合格受験対策講座」】があります。こちらの講座では、勉強方法やマル秘話、独学や勉強時間がない方を対象に開講しています。こちらもチェックしてみてください。
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